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短歌とネットと著作権(短歌人 2022年11月 三角点)

 短歌・俳句などの短詩型文学の著作権の特徴は、その短さゆえ、一作品の全部を引用することが通例となっていることだ。従来は結社等で学びを重ねるうちに、引用の流儀についても徐々に身に付いていったのかもしれない。しかし、インターネットの時代には、私のような初学者でもツイッターのアカウントを開設しただけで「公衆送信権」という物騒な代物と関係することになる。
 「短歌人」誌の掲載歌の扱いについては、公式サイトのQ&Aに明確に示されている。一般的に、SNS上では引用に引用を重ねることも多いため、自作他作問わず、例えば「作品/作者氏名」のように作者名を並べて明記しておくのが良さそうだ。新聞歌壇等の掲載歌の場合、自作をSNSにアップすることは問題がないが、紙面自体にも新聞社等の編集著作権があるため、掲載紙面の自作部分だけ切り取ったり、自作以外にぼかしをかけてアップしたりする人が多い。
 ネットの普及に伴い、類想・類歌を見つけるのも容易になった。意図的な剽窃はもってのほかだが、微妙な問題になりやすいのは、意図せずに発想や表現が似てしまうケースだ。ただ、元の作品を知って依拠していたことが明らかな場合を除き、「偶然の暗合」については著作権侵害にあたらないという判例がある(ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件)。ツイッターでも、第三者が類想を指摘したが、当事者間で円満に解決している事例を見たことがある。
 また、著作権法自体も時代に合わせて改正される。2022年5月から、国立国会図書館の絶版等で入手困難な資料約153万件がネット経由で閲覧できるようになった。短歌の評論にも好影響を与えていると聞く。
 著作権法の目的は制限自体ではなく、利用と権利のバランスをとって「文化の発展に寄与する」ことだ。自分の歌を引いて評を書いていただくと、今まで気づかなかった魅力が見えることがあり、ありがたく思う。だから私も、他の方の歌を引いて語ることをおそれずに進めていきたい。短歌とネットと著作権の関係が、これからも実り多きものでありますように。

(「短歌人」2022年11月号 三角点 掲載)


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