32.ニューヨーク語学学校事情
ニューヨーク市内には多くの語学学校がある。大学の付属語学学校から、民営の語学学校まで。私も全ての語学学校を知っているわけではないので知ったようなことは言えないが、少ない知識の中での話として聞いて欲しい。間違いがあったらゴメンナサイです。
多くの語学学校は午前中授業を基本にしている。午後は授業がない学校も多い。あるいは午前の部と、午後の部、夜の部と分けて授業を行う学校もある。それぞれに生徒を集め、一日の教室の回転数を上げるというマーケティングである。しかし、この回転数を上げるというのは、立地環境のいいところでないと難しい。日本で言ったら、東京・丸の内や、新宿や渋谷、池袋あたりの学校でないと成立しにくいのと同じである。マンハッタンの中心部から少し外れた立地では午前と午後の授業だけであったり、午前中だけであったりすることもある。
授業料は大よそ1日換算で1.2万円~1.8万円というところだろうか。だから週に平均で5~8万円。一ヶ月で20~30万円ほどかかる。半年通ったとすると軽~く100万円を超える。安くない。だから夏休みを利用しての1ヶ月やら、2ヶ月などの短期の語学留学が程良いのかもしれない。想像だが、語学学校に1年も通う人はさほど多くないのではないか。語学学校に1年も通うと200万円を超える。1年の語学学校期間を終えて大学に進むと、大学に5年間通うことと等しくなる。大学の授業料も最低でも同じほどかかるからだ。
授業料のこの差は一体何か?と考えてみたい。授業の質なのだろうか?
授業料のこの差のひとつは授業のコマ数である。ちょっと当たり前過ぎて落胆させてしまうが・・・。語学学校には午前中3時間の授業時間のところもあれば、午後2時まであるところもある。また週に月~金のところもあれば、月~木の学校もある。要するに、授業時間が長いところは高く、授業時間が短い学校は安いという当たり前の道理。だから授業時間数をよく見て比較しないといけない。要はコマ数が大事ということ。
でも容易には比較できないようにできているのもマーケティングの結果だろうか。例えば、午後2時までの授業と言ってもお昼休みを挟んでのこと。9時始まりで12時半で終わる授業と、10時始まりでお昼休みを挟んでの午後2時までの授業ではどちらが時間単価が安いかは頭の中でしばらく計算しないとわからない。
で、授業の質だが・・・。正直、何処の学校もさほど差がないように思える。高いから授業の質が高く、安いから授業内容が雑ということもない。授業の質を決定付ける教師の質は、実は変わらないように思う。
日本の大学を例に考えてみて欲しい。日本にも授業料の高額は大学はある。いわゆるお坊ちゃん・お嬢さん大学だ。これらの大学は授業の質が高いのだろうか?授業料が高額な大学だから教員の質が高く、教えるのも上手いということはないだろう。同時に、授業料の安い大学だから教員の質が劣り、授業の質も低いとも言い難い。ひとつの大学に永く居続ける教員もいれば、あちこちの大学を渡り歩く教員も多い。教員の質は常に流動的。授業の質に違いがあるとすれば、送り手側ではなく、受講する側の学生側にあるのではないか。
ここからは私の独断になる。二流の大学で教えていた教員が、一流大学に転職したからと言って、授業の質を急に上げるということはないだろう。恐らく殆どの教員はそれまでの授業内容と同じ内容の授業を新しい大学でもするはずだ。多少、スピードの違いはあるかもしれないが・・・。教員が学生のレベルに合わせて授業の質をコントロールするのはせいぜいスピード程度で、実は教える内容には差がないのが殆どだ。私の場合、宮城県の結構偏差値の高い公立大学で教えていたマーケティングの授業内容と同じ内容を、私学一の規模を誇る大学でも、そして本務校であったところでも教えていた。マーケティングで教えないといけないことは同じ。大学によって変えることはない。相手が一流大学生であろうと三流大学生であろうと、相手はマーケティングには素人。教えなければならないことに差はない。多少の例題の選び方やスピードには少し差があるかもしれないが、それとて大差はない。日本において大学の授業料の差は教師の質を決定付けない。
そう考えるとニューヨークの語学学校も考えやすい。授業料が高いところは授業の質とは無関係で、その他の要因、多くは立地環境に起因、それにせいぜい、施設環境だろう。高い授業料のところは好立地にあり、設備もキレイ。例えばニューヨークでは、日本の渋谷と私が勝手に呼んでいるタイムズスクエアや、コロンバスサーカスや、日本の東京駅と言われるグランドセントラル駅に近い語学学校は総じて授業料は高い。一方、ダウンタウンなどにある語学学校は比較的安い。しかし、日本から見るとニューヨークの立地環境と授業料との関係はわかりにくい。ニューヨークのどこが好立地で、どこがそうでないかはニューヨークに詳しい人でないとわからない。マンハッタンならどこも同じに思えるからだ。
では授業内容はどうか。
想像で語るのだが・・・。誰かが最初に語学用テキストを開発し、後発の語学学校はその先発の語学学校のテキストを見ながら改良を加え、そのまた競合相手は、ライバル学校のテキストをベースに修正を加えていく。そんな繰り返しが行われてきて、実は多くの授業用テキストができてきているのではないだろうか。つまり授業のテキストは元を正せば1冊に帰結するのではないか。そう言いたくなるほど基本要素は似ている。もちろん、生活していく上で必要となる事柄は誰が考えても同じだということもあるだろうが・・・。
テキストの最初は挨拶の仕方から始まり、自己紹介の仕方、出身地、買い物の仕方、電話の取り方、地図を使っての道案内・・・。それらの流れの中で、I,my ,me。you, your, you 。Do,does,did。更には三人称単数・複数、冠詞などの文法を教えていく。そして仮定法や時制の一致や関係代名詞へと進んでいく。そして最後は時事英語。長文を読んで読解力を付けていくという進みだ。
乱暴に言わせてもらうと、語学学校間に授業内容に大差はないというのが私の感想だ。教える教員側に質の差もない。あるのは立地環境と設備の差と生徒の質。ただここで言う生徒の質は学力レベルという質の違いではない。生活環境の質の違いのこと。もっと言うと育った環境の差。高額語学学校にはリッチな家庭で育った生徒が多く、そうでない語学学校よりも少し服装もオシャレで派手な生徒が多いように思う。有名人の子供が通うのもこのような学校だと思う。
ただ留学生の中には、アメリカでバイトをしたいがゆえに学生VISAを求め、そのために語学学校に形だけ席を置く学生もいる。そしてそのことを学校側も充分承知している。そして学生VISAを簡単に発行する裏返しに、ぞんざいな授業を行う学校もあるらしい。しかし、私は又聞きの噂だけで、実際にはそのような学校の存在を知らないが・・・。もし、そのような噂が本当にあるのなら、少し注意したほうがいいだろう。
授業料が高いか安いかの違いが、授業の質の違いと無関係なら、後は本人のやる気の問題といえる。立地環境は悪いがそのような語学学校で頑張れるのなら、何も高額な授業料の学校にこだわる必要はない。少々の不便と設備の古さを我慢すればいいだけのこと。やっぱり最後は本人のやる気の問題と言える。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?