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偏愛図書館

今年ももう残り一週間ほど。日に日に寒さが増すので読書の相方であるホットコーヒーが手放せません。

積読を何冊も持ち寄って旅館に籠って、読書に没頭する日を3日間くらい設けたい。読書好き仲間と一緒に行って、夜は読み終わった本についてお酒を飲みながら議論したい。そんな妄想を一週間に一度はしています。実現できたら嬉しいな。

今年読んだ本は48冊。(12月22日現在)今年出会った本の中で特にお気に入りだった5冊を紹介する、いわば年間ベストみたいな回です。順位をつけるのは好きでは無いので箇条書きで失礼します。


わたしたちは銀のフォークと薬を手にして(島本理生著)

4月に読みました。出版されたのは2017年なので少し前ですが、これは本当に素晴らしかった。
さんかく(千早茜著)キッチン(吉本ばなな著)など、私は料理の表現が出てくる本を好んでいますが、素敵な恋の間には大体美味しくて温かいご飯があります。私調べですが。

主人公の知世は、仕事で出会った年上男性の椎名さんに惹かれていきます。しかし、椎名さんはある病気を抱えていて•••というのが大まかなあらすじで、椎名さんはそれを後ろめたく感じているのが文章中からよく伝わります。もし椎名さんが私の前にいて事情を知らなかったら、それを余裕があると受け取ってしまうかも、と思うほどずっと一歩後ろにいる。打ち明けて、共に生きていたいと願う知世とゆっくり進んでいく2人の恋路に、章が終わるたび思わず「はぁーーー」と尊いため息が漏れました。そしてご飯が全て美味しそう。

自然と想像できるくらいに幸福だと気づき、希望とは何か足りない時に抱くものなんだと悟った。(作中より)
散々本の中で、愛とは 恋とはと唱えた本を数多く読んできたが、心の深い部分で人を愛することを最近本の中で学ぶことが多い。この作品もその一つ。


犬のかたちをしているもの(高瀬隼子著)

10月に読みました。出版されたのは今年の8月です。小説というより哲学を知った気がします。
彼氏が他の女性を妊娠させてしまい、その女性は子供はいらないからあなたたち2人にあげるという。犬あげる的な感覚で赤ちゃんをもらって、それは果たしてなんなのか、という物語だが、浮気的な行為を許す 許さない以前に人間の思考の核の部分を容赦無く触ってくるような、ある種の暴力性を感じた(いい意味で)

主人公は昔飼っていた犬を心の底から愛していた。だからこそ、赤ちゃんを同等の愛情で愛せるのかと考えているが、私自身も祖母の家にいた犬を心の底から愛していたし、その感情を丸々赤ちゃんに向けようとは思わない。
好きにも様々な種類があるが、可愛いにも同じことが言えよう。まさに犬のかたちをしているもの。読み終わった後にこのタイトルを振り返ると深い。


炭酸水と犬(砂村かいり著)

これも10月に読みました。さっきのこともありとてもワンワンしてますね。これは昨年出版ということで比較的新しめ。読書アカウントさんたちの評判がかなり良くて気になっていたのですが、売り切れかつ注文もできず、Amazonかなぁと思っていた矢先、旅行先でフラッと立ち寄った小さな本屋さんで見つけたわけです。運命感じた。誰も盗らないのに抱きしめて隠すようにしてレジに行きました。私が盗ったように見えちゃう。

同棲9年目の彼氏がいる由麻は、ある日彼氏から「もう1人彼女ができた」と告げられる。まさに公認の浮気なわけで、そんな中迎えるラストに悶絶しました。
これは徹夜必須。なぜなら「ここまで読んだらキリがいいから寝よう」ができないので。どこで区切ってもキリが悪い。続きが気になってしまいます。母と叔母にも貸したのですが2人とも徹夜してました。今のところ徹夜率100%を誇る名作。

これを好むかは人それぞれですが、私個人はハラハラする展開と由麻に感情移入が止まらず、浮気する彼氏の和佐に対して怒りが止まらなかった。口癖である「由麻ごめん」を言ってる時の顔想像できるもん。眉毛下げて自分が被害者みたいな顔で、量産されつくしたごめんを吐いてるのが簡単に想像できた。かと思えば衝撃のラストにひたすらページをめくる手が止まらない。本当に素晴らしかった。

作者である砂村かいりさんのTwitterから見つけたのですが、Web版でこの続編が読めます。いろんな登場人物の視点で描かれる物語は、電車で読むと危険です。何回か尊いため息出たので。


汝、星の如く(凪良ゆう著)

今年出版された凪良ゆうさんの新刊。母と私は凪良さんのファンでして、今作も欠かさずチェックしました。
瀬戸内で育った櫂と暁海の半生の物語。様々な障害が立ち塞がる中で、2人がどのような場所でどのように生きたかが存分に描かれています。

ページをめくるたび主人公2人の人生を背負ってしまったような、共感性に深く語りかけてくる、温かくもあり時には残酷な言葉の数々に次第に虜になっていきました。
2人とも親によって人生の選択肢が狭まっている。そんな心の穴を埋め合うようにして瀬戸内で出会った2人だが、今度は価値観によってすれ違いが生じる。高校生から大人になって、仕事や自分のやりたいことを考えた際、どんなに離れていても頭の片隅にお互いがいるのが痛いほど伝わり、同時に苦しくなりました。

愛は尊い、愛は地球を救うという世界の中で、私の愛はなにひとつ救ってはくれない。私は愛する男のために人生を誤りたい。(作中より)
人生を誤るほどっていうのが頭をいつか過ったらいいなとすら思う。私は本を通してひたすら「愛とは」「人生とは」という終わりのない問いと答えを探している気がします。


太陽の塔(森見登美彦著)

11月に読みました。2006年出版なのでかなり古め。もともと森見さんの本は「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話体系」などメジャーなものばかり読んでましたが、たまたま本屋さんで目に留まったので購入しました。

まっじで面白い。なんで今まで読んでなかったのかと後悔するほど面白かった。森見さんの本に出会ったのは19歳の頃でしたが、学生時代に出会わなくてよかったとすら思います。今でも十分偏屈な人間ですが、学生の思春期真っ只中のタイミングで出会ってしまったら手のつけようのない人間になってたに違いない。私の中で本はそのくらい思想や価値観が左右されやすいものですが、森見さんの本は特にそう思います。

しばしば「愛情が歪んだ」という表現が使われるが、恋愛というものは始めからどこか歪んでいる。にもかかわらず、なぜ彼らはああも嬉しそうに、幸福そうに、ほくほくと満足しているのか。(作中より)
思わず「ひゃーー」と頷いてしまったのがこちら。なんでこんな文章が思い浮かぶんだろうと嫉妬すらする。私自身が偏屈で頓知気な性格なせいで、人間とコミュニケーションを取るのも一苦労。そんな時にこの言葉はもう、この本を好きになる以外の選択肢なくない?本当に好きな本です。いつか大阪に太陽の塔を見に行きたい。


こんな感じの年間ベストでした。書き起こしてみると私の好みが丸わかりで恥ずかしい。
少し前までは人に本を貸すのが苦手でした。先程書いたように本とは思想や価値観を左右しやすい。(個人的に)あと、映画と違って作品による拘束期間が長いので、人の時間を奪うという気持ちになってしまうからです。
私が好きな本を貸して、その人が「小松はこんな本が好きなのか」と思うことはすなわち、頭の中を覗かれている気分になります。頭の中身見られるくらいなら裸見られた方がマシとすら思っていました。

でも最近、家族や友人に本の感想を話して、それ気になるから貸してと言われるのが嬉しい。感想聞けるともっと嬉しい。
最近の私は母おすすめの本を読んでいます。とても重たい内容で、本を開く前に一度「ふーっ」と息を吐いてページをめくっています。中学生が人を殺めてしまうという内容でして、後にも先にも暗い。これを読み終わったら笑えるエッセイでも読もうかと。

来年も本をたくさん読んで、思考回路を振り回されたいです。

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