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無双ホームレス 第3話(プロット)

『未確認キミノ正体』
歌:YOU4

ボーカロイドもVtuberもいらない
私は生身のスーパーアイドル
だけどホントは誰も知らない
生身だけどバーチャルなソンザイ

そんな私も知らないナニか
君はいつも何かを見てるの
何してるの?何思うの?
どこへ帰ってどこから来るの?

いつも何か思いふけってる
そんな君は何者なの?
君と私 いっそ二人
秘密を交換しちゃいましょ❤

未確認、キミノ正体
また明日 学校で会•お•う•ねっ⭐️

社交場のメインステージの電光掲示板の前で
アイドルグループ『YOU4』の
ファンのアバターたちが
ペンライトダンスをしながら
盛り上がっている。

翔弥はそれを眺めながら
考え事をしている。

「黒田圭の名前での登録はない…
 やっぱり法人登録か…
 社交場にTPCの法人登録はないから
 どこの所属か…」

翔弥の居住ベースのドアがガタガタ鳴る。
「馬鹿か、お前は。
 考えてること、声に出すな」
アキモトが翔弥に顔を近づけて睨む。
《臭い!!!》
翔弥はアキモトのホームレス臭に顔を歪ませる。

アキモトは翔弥に小声で忠告する。
「常に、盗聴器とGPS!
 付けられているつもりで
 警戒せよと、教えたはずだ。
 そして、お前はァ、ホームレスだろ。
 無臭も致命傷になるぞ。
 変装だけで騙されるほど
 お前の敵は馬鹿じゃない」

翔弥は疲弊した様子で、
「はい、アキモト」
と小声で言う。

アキモトは1年前に翔弥が漁船に乗った後、
ずっと翔弥の教育係として面倒をみてきた。
父と別れ、音信不通になったあと、
父が雇ったアキモトが
翔弥の教育係となっている。

翔弥はアキモトに状況を報告。

「黒田圭との接触に成功した。
 黒田圭は、俺の社交場にもいる。
 見つけたら父親の寛治に会わせてくれる
 条件になっている」

アキモトは翔弥に警告する。
「そんな簡単に
 ラスボスに接触できるなんたァ…」

「罠」
翔弥がアキモトを遮る。
「罠だと思う…」

「それか、利用価値を見出したか…
 だなァ」
アキモトがモニターに映るYOU4のライブを
食いつくように観る。

「身分を偽っているのはァ
 お前だけじゃない。
 世の中、みぃーんな、
 隠しているのよ。
 特に大物であれば、あるほどな。
 お前のじいさんだって、
 冤罪かどうか、わからんぞ」

アキモトが翔弥にくぎを刺す。
翔弥はうつむきながら…

「わかってるさ。 
 もし、おじいちゃんが有罪なら
 俺はあの会社でその償いを払うつもりだ」

翔弥の悟ったような顔を見て
アキモトは心配する。

「お前がそこまで、
 背負う必要あんのか?」

翔弥は悲しそうな笑みで言う。

「母さんが…
 母さんがいなくなって…
 僕の道は決まったんだよ、そこで。
 母さんは、きっと全部知ってる。
 だから姿を消したんだ。
 きっと、じいちゃんの仇を打つつもりだ。
 だから父さんも僕を漁船に乗せたんだ。
 本当にじいちゃんが有罪なら、
 父さんは…」

翔弥はこの時、「石川竜仁」に戻っていた。


「父さんは…
 母さんと僕を隠したりしない!」

アキモトは、心ここにあらずな調子で言う。

「犯罪者の家族だからァ、
 隠したんだろ」

翔弥は悔しそうに声を荒らげる。
「じいちゃんはもう投獄されてるんだ!
 家族が隠れる必要ないだろ。
 人を殺したわけじゃない。
 じいちゃんは、命がけで育てた会社を奪われ
 残りの人生も奪われた。
 収賄の罰はとっくに受けてる」

アキモトは、怒り口調で
翔弥を叱責する。
「お前がこれからも
 この件に首突っ込むつもりならァ
 どんな時でも『僕』と言うな。
 そして、
 『祖父』『父』『母』!
 言葉遣いに気をつけろ。
 お前はもう、

 御崎翔弥なんだよォッ!」

みぅの歌声が響く。

♬「生身だけどバーチャルなソンザイ」

《俺のことか…》

社交場で繰り返し流れている
YOU4の歌にやっと耳を向ける翔弥。


「あれ?」

翔弥はパソコンのモニターに目を向け、
社交場の異変に気が付く。

YOU4のドームライブ生中継が、
1曲目の人気曲
『未確認キミノ正体』の中継のあと、
ずっと1曲目をリピートしている状態であること。
ペンライトで盛り上がっているファンたちが
延々と同じ動きをしていること。

翔弥は急いでバグを調べる。

アキモトはそっと立ち上がり、
「まだまだ、詰めが甘いなァ」
と言って去る。


翔弥が社交場のプログラムコードを調べていると
完璧なまでのハッキングコード。

「バグじゃない!」
「罠だ!!!」

翔弥は、急いでログアウトする。

(場面変わって)

「ちょ、ちょ、ちょ!
 スペードのキングを釣るつもりが
 オーナー来ちゃったよーー!!」

ドームライブを終えて
ホテルの一室で休む「みぅ」に
同年代の美少女がパソコンの前で騒ぐ。

シャワーを浴びた後のガウン姿のみぅは
目をキラキラさせて
「マジ??」
とPC画面にかじりつく。

「超!人気トップアイドルのあたしの
 ドームライブ、注目度もトップクラス、
 みぅのIDも最大手芸能事務所の公式アカウント、
 そのライブ中継でバグが起きたとなれば、
 社交場一の大ピンチ!
 ”スペードのキング”が見過ごすわけがないと!
 あたしの親友であり優秀な高校生マネージャー、
 菜々星ちゃんの超天才的けいかくぅ!
 まさかのオーナーしゅつげぇん!!!」

みぅは、まくし立てる様に状況解説。
菜々星は、考え込む。

「でも即行ログアウトしたよ。
 気づかれたっぽい。
 ハッキングしたなんてオーナーに知られたら
 バン(追放)だよ…
 まだスペードのキングを釣れてないのに…」

菜々星が不安そうに画面をにらむ。

みぅは、テンション高いまま
菜々星の肩を抱いて不敵な笑みを浮かべる。

「だーいじょうぶ、大丈夫!
 あたしぃ、オーナーの正体、
 実は心当たりあるんだよねー!
 しかも、ちょっこし弱み握ってるというかぁ
 取引できちゃうと思う♡きゅぴン」

菜々星はみぅの顔をマジマジと見て、
「あんたが天才だわ」
とみぅの両肩に手を置いて感心する。

みぅはまじめな顔を菜々星に向ける。

「あんな大きなメタバースワールドの
 オーナーなんだから、
 菜々星が探してる子も
 見つけられるかもね」

そう、菜々星は竜仁の幼馴染の
山吹菜々星だ。
竜仁が御崎翔弥だということは
知らない。

菜々星は竜仁を探すために
かつて黒田寛治に接触をはかったが失敗。
寛治の息子の黒田圭に接触したくても
一度、父親との接触に失敗しているため
うかつに近づけずにいた。

菜々星は考えあぐねているうちに
かつて映画の子役仲間だった、
みぅの存在を思い出す。

みぅの両親は最大手の芸能事務所のオーナー社長。
バレエ教室が一緒だった、菜々星とみぅ。
みぅの母のスカウトで、菜々星は
子役として芸能界入りを果たすが
映画1本出演して、引退を希望。
バレエ教室もやめた菜々星は、
みぅとの関りも途切れる。

大学病院の院長の娘の菜々星のコネでも
見つけることができなかった竜仁。
菜々星は、芸能界のコネの広さ欲しさに
再び、みぅの事務所の扉を叩き、
みぅの専属マネージャーとなり
みぅの協力を得て今に至る。

芸能筋の情報で、
黒田圭が社交場のVIP会員であることが判明。
月額30万円で全てのサービスを自由に受け、
一般人が出入りできない、
VIP専用ラウンジを使用している、
SR(エスレア)ランクのアバター。

それが

「スペードのキング」。

一般ラウンジで大きなイベントがある時は、
たまにVIP会員が出現するため
菜々星はそれを狙っていた。

菜々星を励ます みぅに、
菜々星はせつない表情を向け、

「ハッキングをバグだと思って
 のこのこコードインしてしまう
 ドジな奴に りゅう(竜仁)を
 見つけられるとは思えない」

菜々星が鬱々として落ち込むと、
みぅは笑顔で菜々星を励ます。

「確かに、オーナーくんは
 ドジな奴。
 ゴミのにおい、くさかったぁ~w」

みぅの発言に頭を傾げる菜々星に
みぅは続ける。

「大丈夫!
 オーナーくんを利用しよう!
 また明日、学校であ・え・る・か・ら♡」

眼鏡をくぃっと上げるジェスチャーをする
みぅ。

みぅが菜々星に協力するのには
理由があった。

(みぅモノローグ)
「いつかTPCをうちの事務所が
 吸収合併する。
 その前に黒田の闇ビジネスを暴いて
 クリーニングするのよ。
 石川会長時代のTPCに戻し、
 アイドル脱落者の受け皿として
 TPCの人材サービスを活用する。
 石川会長と……陽子さんの願い。
 計画途中で白紙にされてしまった事業計画。
 

 もう…不幸なアイドルは
 出したくない」

みぅは半年前に起きた
無名アイドルが立て続けに自殺した事件の
新聞記事を回想する。

(場面かわって)

居住ベースの外の騒がしさに気づく翔弥。

高校生暴力団のうちの一つ、
『ワルキューレ』。

最強のホームレスがいると聞きつけ、
ホームレス狩りをしていた。

翔弥はワルキューレの連中を
ことごとく倒していく。

(翔弥モノローグ)
「父さんは犯罪者の孫を隠したんじゃない。
 じいちゃんの冤罪を証明し、復讐するために
 

 俺を
 サイェレット・マトカルに
 送り込んだんだ―—――」

サイェレット・マトカル。
イスラエルの特殊部隊。
元特殊部隊員だったアキモトが
翔弥をサイェレット・マトカルに案内した。
翔弥はそこで特別に軍事訓練を受け、
強靭な肉体と対テロ戦にも通用する
攻防戦術を身につけてきた。


翔弥にコテンパンにされた
ワルキューレの団員が苦し紛れに言う。
「団はワルキューレだけじゃねぇ…
 それと、幹部クラスの強さは
 比じゃねぇ…
 団長に報告…うぐっ」

ワルキューレの団員は
そのままぐったり気絶。

翔弥は、居住ベースに戻り、
スマホでAIチャットアプリを立ち上げ
「nagamaitri 調査 高校生暴力団」
と打つ。

「高校生暴力団は…」

AIチャットは打ち出す。


「黒田のビジネス」


(場面かわって)
黒田寛治。
社長室の窓から夜景をみている後ろ姿。

「早く、スペードのキングに気づけ。


 そしたら…


 全ての団をまとめる


 総長にしてあげるからね。

 りゅう。

 息子よ…」


第3話 完


 


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