240204:ローヒールの背伸びで
きのう、ひとりで暮らす家に初めてだいすきな親友を招いた。この家にひとを招くのは、家族と業者以外だと彼女がはじめてだった。古い記憶だと、小学生のころ、実家に友だちや幼馴染たちを招いて誕生日パーティをした写真が残っているのでうっすら憶えている程度。それくらいに、ひとを家に招くという経験が薄い。
招くにあたって、なにをすればいいのかまずわからなかった。掃除や片づけはもちろんのこと、ほかになにをすればいい? おもてなしとは? インターネットで調べてもおもてなし料理の話しか出てこない。今回は家でお菓子を食べてしゃべるだけの会だからおもてなし料理もなにもないというのに。
これから家に招くひとは、わたしのずっと憧れのひとであり、だいすきなひとであり、親友と呼べるひとである。通常、親友といえばなにを曝してもだいじょうぶな関係性だとおもうのだけれど、彼女の場合は憧れのひとでもあるので、かなりむずかしい。がっかりされたくない、というじぶんの気持ちがつよくあるからだ。普段どこかへ出かけるときだって、いつもどこかすこしだけ背伸びをしている感覚がある。並んで劣らないように、だとか。もちろん彼女はきっと、そんなこと気にしなくていいのに、と言ってくれそうなひとであることも理解はしているけれど。これはわたしなりのプライドだ。だって彼女のまわりにいる友人たちはとてもすてきなひとが多いから。わたしはその友人たちに負けたくないのだ(もちろん勝ち負けなんてないのだけども)。たぶんだけど、親友がわたしに見出してくれている魅力はそんなところではないのだろうとおもっている。不器用で頑固で失敗が多くて雨女で……完璧でないところを好いてくれている、はずだ。そしてわたしも親友の、完璧ではないところを好いている。柔らかでおおらかで、じぶんのこだわりを持っていて、ひとへの感謝を欠かさないところを尊敬している。
そんな相手を家に招くわけだ。いったいなにをどうすればいいんだ先生。
とにかく家をできる限りいつもよりも細やかに掃除をして、くつろいでもらえる雰囲気を作ろうとおもった。じぶんの家というのは、じぶんのテリトリーであり、相手から言えばアウェイなわけで。せっかく招くなら、相手にもホームだとおもってもらいたかった。クッションを用意したり、寒くないようにひざ掛けの用意や暖房の温度を調整したり。カフェがすきなひとだから、おしゃれなJazzやbossa novaのBGMをYoutubeで流してみたり。とにかく、とにかく、がっかりされないように必死だったわけだ。それは単純に友人を家に招くというよりも、恋人やすきなひとを初めて家に招くことに近いなにか。
結果として、親友にはゆっくり過ごしてもらえたようでほっとしている。もちろん足りない部分もあっただろうけれど、ふたりでのびのび過ごせて、すこし先のたのしみな予定を立てたり、なんでもない話をしたり、いつもどおりのわたしたちだった。なぁんだ。そんなに気を張らなくてもよかったのかもしれない。だって相手とはもう15年ほどの付き合いになるのだから、わたしのだめな部分だってたくさんもう知っているはずだ。さすがに家がゴミ屋敷だったら関係を改められるかもしれなかったけれど。いつも通りのわたしでよかったのかもしれない。
この一大行事を乗り越えてほっとしている。それと同時に、きのうがあまりにたのしかったので、きょうはすこしだけ、さみしい。家にひとがいるっていいことだったな。毎日だったり、一日中だとたいへんだけれど。
この日を迎えるにあたって家のなかをいろいろ整えたり家のことに向き合う時間を得て、わたしはわたしの家がすきだな、と改めておもった。じぶんしかいない、じぶんで作り上げていくこの生活を、できる限り守っていきたい。