190526
夢のなかで会う犬は、いつも生きている。生きているのだけど、夢のなかのわたしは彼がもう死んでいることを知っている。
きょうは犬といっしょに舞台を観に行った。開演よりすこし早く着いたから、会場内をすこしうろうろしていた。おおきな劇場ではなく、すこし古びたちいさな劇場。
いつの間にかスタッフ用のロビーのようなところに迷いこんでしまい、業者らしきひとに受領のサインを求められた。わたしがサインをしていいのだろうかと思いつつ犬を抱きながらサインをした。
「何歳ですか」
犬の年齢を訊ねられた。五十代くらいの男性だった。
「実はこの子、一度死んでるんです。生きていたのはたぶん十四歳までだったと思います」
わたしは答えた。業者の男性はそれきりなにも言わなかった。
そうこうしているうちに、開演時間を過ぎていて、急いで受付へと向かう。都合上、開演から十分間は入場ができませんと案内されたので、待つことにした。犬はいつの間にかいなくなっていて、わたしは推しのひとへのお手紙を用意できていないことに気づいた。
最近、インスタグラムで犬とよく似た子を見つけてしまった。まだパピー犬で、女の子。他人だけど、すごく似ている。表情がそっくりだ。この子が病気をすることなく、健康にのびのびと、家族に愛されて育っていくことを願いながらいつも見ている。
夢のなかで会う犬は生きている。抱くとあたたかくて、ちゃんと動く。じぶんで歩く。
でも夢のなかのわたしは彼がもう死んでいることを知っている。
わたし、何度彼を殺しているのだろう。
何度彼を生き返らせているのだろう。
きっと眠っていたいだろうに。
でもね、彼が眠たいときにちょっかいを出すのがすきだったんだ(そして彼が遊びたいときにはぜんぜん構ってあげられなかった)。
いなくなってからのほうが、よく彼のことを考える。してあげられなかったことを考える。自分勝手だね。ゆるさなくていいから、わたしのことを忘れないでね。わたしも忘れない。とくべつな君のことを忘れない。
また夢で会おう。わたしのために生き返って。