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美容室の料金って、わかりにくくないですか?

操作イトウです。

※追記 この投稿をベースに、R3.6.13、文春オンラインに寄稿させていただきました。こちらもご参照ください

今回は、なんだかわかりにくい美容室の料金設定について。

伝票を見せられても、なんの料金として記入されているのかよくわからないまま支払っていたり、「自分の予想より掛かってしまった」なんて経験のある方もいるではないでしょうか?それは美容師の説明不足でもありますが、他にも理由があります。

お店に行って美容師さんと話してみないと料金はハッキリしない。これはお客様にとっては不安ですよね。ではなぜ、美容室はもっと明朗会計できないのか?

料金はどうやって決まる?

地域性やお店のコンセプトによって、お店の料金設定は様々です。例えば表参道のような都心と地方とでは大きく違うし、安さを売りにするか、高級感を売りにするかによって、大きく変化します。

ですが、HPやクーポンサイトの料金一覧を見ると、ほとんどのお店ではこう記されています。

[ヘアカラー ¥△000 〜 ]

「〜」って、じゃあいくらなの!?この追加料金を匂わせる感じはなに!?

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実際、料金について美容師さんに相談すると「その場合だとプラス料金になります」と言われる事があると思います。

美容室の料金は運営費用の他、「技術料」「材料費」「時間換算」の三要素によって決められています。これに美容師が提供する技術レベルや、ブランディングによる付加価値が上乗せされています。

メニューが複雑なのは、組み合わせる前提だから

美容室の料金が前後するのは、お客様の髪質と求めるヘアスタイルによってメニューを組み合わせると、「技術料」「材料費」「時間換算」が同じ配分ではいかなくなるからです。

時間や使う薬剤の選定、使う量が変わってしまうため、レストランのコース料理やアラカルトのように、同じ商品(ヘアスタイル)を同じ値段で提供することが中々できません。

例えば、絵のようなグラデーションカラー(ブルージュ)を完全再現しようとする場合↓

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カラーした事がない、まっさらな黒髪(「ヴァージン毛」と呼びます)から始めるとすると、1回のカラーリングでは形にする事ができません。

黒いキャンパス(髪の毛)の上に何色の絵の具を乗せても、それは黒にしか見えません。その為、キャンパスを明るくする「ブリーチカラー(脱色)」が必須となります。

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1回ブリーチをすると髪の毛は金髪(黄色)になるのですが、黄色にブルージュ(青が主体の色)を乗せるだけでは、くすんだ緑色になってしまいます。つまり1回のブリーチではブルージュの色が再現できず、2〜3回(髪質によって具合も変わります)のブリーチをして、よりキャンパスを明るくする必要があります。

数回ブリーチした髪の毛に、色を添付する。なので、

ブリーチカラー + ブリーチカラー (+ ブリーチカラー) + ヘアカラー ( + ロングヘア料金)

の料金が必要になります。

美容室は、料金を複雑にしてぼったくりたいわけではなく、お客様仕様に「あれ」と「これ」とを組み合わせてヘアスタイルを作っています。

では具体的に、「技術料」「材料費」「時間換算」はどうなっているのか?

「技術料」は

美容師が手掛ける「手間賃」としてかかる料金です。その技術がテクニカルであったり、できる人が少ない技術に付加価値を付けるような形です。基本的に美容室は『美容師が施術する』付加価値に対してのお金を戴いています。

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美容師でしか出来ないようなメッシュを入れるカラー(グラデーションカラーやバライヤージュカラーも)や、理想の髪色に仕上げるために薬を何種類も調合するなど、複雑な工程を必要とするカラーには、プラスして付加価値を設定していることも多いです。

また、ドレッドヘアのように特殊な技法をする場合、そもそもできる美容師が少ないため、付加価値が大きくなります。

ドレッドヘアについてはコチラを↓

トップスタイリスト、ディレクターなどの「指名料」もこれにあたります。料金一覧にも、

[ 〇〇ディレクター  + ¥●00 ]

などの表記があります。

これはその美容師のポジションを表していますが、その地位は『売上をあげている美容師』である証明で、『多くのお客様に支持を得ている』ということです。
それは「プラスで料金を出す分、満足度も保証しますよ」という、お店のヒット商品の証なのです。

「材料費」は

美容室用の薬剤を作るメーカーはたくさんあり、薬剤の質もピンキリであります。

・より安い薬を使って利益を上げる

・より質の良い薬を使って満足度を上げる

そのバランスを取ってそれぞれの美容室は選定しています。

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例えば美容室で行うトリートメント(「システムトリートメント」と呼びます)は、松竹梅にランク分けをして用意するお店が多いです。それぞれの髪質に合わせた効果を得るために、システムトリートメントは薬剤が何種類も用意されています。すると必要な工程、手順の多さが変わるため、「技術料」と「時間換算」も並行して変化します。

材料費はどこの美容室でも、戴く料金のうちの5〜15%ぐらいだと思います。高級な薬剤を使う場合に、別料金を戴くこともめずらしくありません。

またSNSの普及によって、今までは美容師しか知り得なかったカラー剤などの「商品名」が高級ラインとしてブランド化することも増えています。

「時間換算」は

上記した通り「技術」と「材料(薬剤)」にかかる時間のことです。

美容界では1時間に1000円が定石とされてきました。しかしクーポンサイト内の競争に勝つために「安売り」する美容室が増えたこともあり、対照的に付加価値、ブランディングを推す傾向も高まっています。

例えば、1000円カットは10分でカットが終わる前提の運営をしています。カット以外のメニューはやらない、髪の毛を洗い流さない等、通常の美容室の運営に必要とされる経費を、極限まで削ぎ落とすことで可能にしています。

詳しくはこちらを↓

美容師が薄利多売すればいい?

もちろん重要なのは、その料金が「またお店に来たい」「やってよかった」と思うボーダーにある事です。そのため、分かりやすいセットメニューにするお店や、お客様が選びやすいような工夫をするお店も多いです。

美容師さんはお客様に奉仕する気持ちの強い方も多く、「安売り」することを肯定してしまいがちです。ですが、美容師が真っ当な収入を得られる料金であることも最重要です。

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薄利多売すればする程、美容師個人は自身の価値を下げてしまいます。売上を上げるためには数をこなさなければならず、お客様一人一人に費やす時間は減っていきます。

『お客様は神様』のような思想は、接客業全般に根深く残っていますが、自己犠牲をする精神で自分が疲弊してしまっては、美容師を続ける事ができなくなってしまいます。

どちらも納得できるWin-Winの関係。前述した「時間換算」の設定を高める流れは、ここから来ていると言えます。

ライフスタイルと満足度に合うお店に出会って欲しい

美容室は料金が高いから最高峰、安いから低レベルとも言い難いのが現実です。皆様のお察しの通り、美容師個人の「技術」「接客」に関しても、残念ながら料金で担保されるものではありません。

クーポンサイトで探した近所の安いお店に行ったけど、オーダー通りに上手くいかなかった。うんと背伸びして都心の高級なお店に行っても、雰囲気に呑まれて疲れてしまった。美容室選びはとても難しいものです。

どんな選択であっても、ライフスタイルに無理なく、満足度に合う美容室や美容師さんに出会えればそれが一番いいと思います。


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ではまた。




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