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歯科医院

 外に出て数秒で、汗まみれになった。
 自宅マンションの自転車置き場に行った。ぎゅうぎゅうに詰まって、動いた形跡がない。「酷暑注意」がネットのニュースに掲載されている。みんな、家にいるのだな、と彼は思った。
 歯科医院に予約が入っている。定期健診である。彼は仕方がなく、出かけた。
 医院の入口に入り、わきの台に置いてある、アルコール消毒液で手洗いをすませた。待合室には誰もいなかった。患者が一人きた。
 歯科医が待合室にやってきて、直々に彼を検温した。
 名前を呼ばれたので、立ち上がった。
 検診を受けながら、いま、一時間に何人、診察をしているのだろうか、と彼は思った。
 この一時間、来院したのは、一人だけだった、ような気がする。
 その日が日曜日だったからだろうか。それとも、いつも診察する人数をこんなにも抑えているのだろうか。
 彼は気になったが、検診を受け持った女性に、聞けなかった。
 受付で次回の検診の日時を念を押された。解放された気分で、彼は歯科医院を出た。

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