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そういう日々があったのだ 「ジェフ・ミルズがいた」

 昔の話である。二十年以上になるだろうか。記憶がはっきりしないが、1990年代後半から2000年代前半のことだと思う。
 ある夜、電話がかかってきた。
 Hくんだった。
「体調悪くて、寝込んでいる。明日、渋谷に行けないんだ。で、僕のかわりに、レコードを買ってきてよ。YO*C系とポップに書いてあったら、とりあえず買ってきて。お金は後で払う」
 当時は、レコードの視聴などはなかった。私たちは、ポップの文面を信じて買っていたのである。
 新譜棚には、「激ヤバ」「MUST BUY!」「MUST!」などのポップが踊っていたものである。
 Hくんは、ハッピー系テクノ、その後、ワープハウスと名称が変わったが、それ系のレコードを買い集めていた。
 YO*C系とは、ワープハウス系のことだ。
 私は、一週間に2回程度、渋谷のWAVE(当時はロフトの上階にあった)、ディスクユニオン、シスコテクノ店、テクニーク、レコファンなどのレコード屋を回って、レコードを買っていた。ミニマル、ハードテクノ、デトロイトテクノ、ワープハウスなどである。
 新譜のレコードは、毎日のように出る。
 Hくんは、買い逃したくなかったのだ。
 私はOKした。

 私は渋谷に行き、YO*C系のレコードを買い、待ち合わせをして、後日、渡した。

 その後、Hくんは、人に呼ばれてDJをするようになったが、それはまた別の話である。

 そういう私の日々の記憶の積み重ねが、「テイラー・スウィフトがいなかった」収録の小説「ジェフ・ミルズがいた」に詰まっている。

 そういう日々があったのだ。

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