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【TIFF日記】「フォックストロット・シックス」

 2019年の東京国際映画祭(TIFF)、4本目は『フォックストロット・シックス』。インドネシア製だけど全編英語音声の、近未来SFアクション映画。

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製作総指揮: マリオ・カサール!

 なんといっても心躍るのが、映画の一番最初にドドーンと登場する「MARIO KASSAR PRESENTS」の文字。

 マリオ・カサールと言えば、カロルコ・ピクチャーズを設立して『ランボー』『ターミネーター2』『氷の微笑』など、日本の東宝東和とガッツリ組んで、ド派手な映画を次々に送り出してきた人物。1980~90年代のボンクラ映画を観続けてきたオレのような人間にとっては、この名前を聞くだけで、カロルコ・ピクチャーズのロゴとテーマ曲が頭に浮かんでくるほど。本作は、そんな大物がインドネシアの新人監督と組んで、世界に送り出してきたSFアクション映画というわけ。

 さらに驚いたのは、エンドクレジットを見るとマリオ・カサールのつながりなのか、編集コンサルタントとしてマーク・ゴールドブラットまでクレジットされていた点で。彼は『ターミネーター1・2』や『コマンドー』『アルマゲドン』など、数々の大作アクション映画で編集を手がけており、自身も監督として『ゾンビ・コップ』やドルフ・ラングレン の『パニッシャー』を演出しているという、ボンクラ映画界の巨匠の1人。まぁ、肩書きからして名誉職みたいなものなのかもしれないけど、懐かしい名前を見られて嬉しかったです。

 映画は近未来、2030年代のインドネシアが舞台。同国の政治・軍事・経済・メディアを牛耳る政党によって、国民は食糧危機にあえいでいた。議員の主人公は政党内で成り上がるため陰謀を進めようとするが、かつての恋人が反政府組織のリーダーで、しかも自分との間に娘までいることを知って、少しずつ正義に目覚めていく……。

 といった具合に、主人公の設定が妙に複雑なせいか、アクション映画としてのエンジンがかかるのがやや遅い。元海兵隊の主人公がかつての戦友を集めて政党に反旗を翻し、敵の本拠地に殴り込みをかける後半は間違いなく面白いだけに、前半であまりアクションの出し惜しみをせずにドライブをかけてくれていれば……と、ちょっともったいない。

 ただこの映画って、IMDbとかでザックリ調べたところ、マーシャルアーツ系の俳優がぜんぜん出てないんだよね。主人公役のオカ・アンタラは『ザ・レイド GOKUDO』に出てるけど、Q&Aで本人曰く「マーシャルアーツの経験はない」とのこと。そんな顔ぶれのわりには、格闘も銃撃戦も見応えがあるので、じつはスゴイのかも。個人的には、登場した瞬間から大物感を醸し出して、期待通りの活躍を見せてくれる、チッコ・ジェリコ演じるスナイパーがイチオシ。

 これがデビュー作のランディ・コロンピス監督は、Q&Aで「80~90年代のアクション映画をたくさん見ていた」と語る、僕らのボンクラ仲間(笑)。「アニメやゲームも好き」と語るだけあって、透明マントとしか言いようのないクローキングデバイスや、ミニガンを抱えてのそのそ歩く重装歩兵など、近未来設定の『コール・オブ・デューティ』で見かけるようなガジェットもバッチリ完備。ただ、透明化ってゲームだと強いけど、映画だと姿が見えないのは盛り上がりに欠けるよね……。

 とにかく本作は、『ザ・デプス』『ユニバーサル・ソルジャー』『カットスロート・アイランド』といった、マリオ・カサール印の系譜を受け継ぐ最新作。大味でツッコミどころは満載だけど、そういうところも含めて楽しい作品だと思う。ランディ・コロンピス監督は今後、ジェームズ・キャメロンやデヴィッド・フィンチャーみたいに大化けするのか、それともローランド・エメリッヒやレニー・ハーリンみたいになるんだろうか。

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