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冬 朝 、終末

冬の冷たい空気で目が覚める。
いつものようにカーテンを開ける。
窓から見えたのは赤黒い空。

「世界が終わってしまった!!」

びっくりして飛び上がり、勢いよくベランダに出る。
目の前には変わらず真っ赤で真っ黒な景色が。
時計を見るとAM6:00。
いつもだったら見えるのは朝焼け。どこまでも広い綺麗な白色。

、だったはず。

気持ちが良いはずの朝に最初に目にしたのは終末色の空。まるで何が落ちてきてしまったような空の色。


なんてこった。
いよいよ世界が終わってしまった。


昨日鯖を買ってきたのに。明日の朝ごはんにしようと思って鯖を買ったのに。
昨日スーパーで安い鯖を見つけて喜んでた私はどうなってしまう。
今の私の楽しみはお家でご飯を作ることだけだったのに。
私の朝ごはんはどうなってしまう?


......馬鹿か!それどころじゃない!!
私が寝ている間に何が起きたんだ!
テレビをつける。何も起きていない。
SNSを開く。何も起きていない。

「何も起きていない!?」

空が真っ赤で真っ黒なんだぞ!何も起きてない訳がないだろう!みんな寝てんのか!?早く起きろ馬鹿か!?

昨日は22時に寝た。
そんで25時くらいに友達から電話が来て一度起きた。真夜中ににアホかこいつと思いながら電話を無視してもう一回寝た。


もしかして、
その時にはもう世界は赤黒かった?
私だけ置いてかれた?
友達からの電話は助けだった?
私以外誰もいない?
終末?

パニック。布団を被る。パニック。
世界が終わったこの空の色が気持ち悪すぎる。
何この赤黒い色。何色を混ぜたらこんな色が生まれるんだ。

漫画の世界?
世界が終わっても私だけ生きている。
誰も外にはいない。
なんだこれ恐怖。ただ、恐怖。
何が起きているのか私の頭じゃ処理できない。
誰かに教えてほしいけど誰も何も言わない。
いつ終わるんだこれって思うけどそれも誰も何も言わない。


と、急に。眩しい光が部屋に刺す。


終わりだ。

と、思って数十秒。何も起きない。


ゆっくり、ゆっくりと布団から顔を出す。
目の前には青くて白い空。
それはいつもの朝焼け。

少し経つと鳥の声が聞こえた。
また少し経つと犬の鳴き声とおばあさんの声が聞こえた。
ちゃんといつもの朝だった。
 

そのあと空はどんどん青くなっていって、AM7:00には見慣れた空に。
安心したので昨日買った鯖を焼いた。

そして現在AM10:00。
空は澄んだ青色。
冬らしく風は冷たい。それがとても気持ち良い。
いつもより綺麗に見える。

よかった。本当によかった。
世界まだ終わってなかった。


朝に見た赤黒い空はなんだったんだろう。
普通の朝焼けだったのかな。
冬の朝焼けはあんなにも気持ち悪いものなのかだろうか。とてもじゃないけど綺麗なんて言えるものではなかったぞ。

私の感受性が豊かだったということにしておこう。世界がまだ続くなら何でもいいや。

せっかく最高の青空なんだし久しぶりに散歩にでも行こうかな。
元々今日は必要必急の用事があるしね。

帰りに動物園にでも行こう。
動物園に来てる家族をみると嬉しくなるから。
私がいつも一人で行くからかな?
でも一人動物園も結構楽しいもの。30分フラミンゴと対話してても止める人はいないからね。
動物園にいる家族連れは幸せの形だと思うの。
幸せがすぐ隣にある最高の世界。

でも、それを最後に見たのはいつだっけ?

と思いながら家を出た。
もちろん外には誰もいない。

“公園の看板

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