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イギリス旅行記

 驚くほど静かな場所だった。13時間のフライトを終え、やっとの思いで辿り着いた空港。しかし私がイメージしていた華やかな雰囲気はそこにはなく、入国審査も無人、移動も無人電車。せいぜいインド系の空港職員を数人見かけただけだった。本当にたどり着いたのかという疑念を抱きながらも地下鉄に乗り、中心街へ向かう。進む電車。相乗りは、白人の若者たち。英語ではない言語だが、何やら楽しそうだ。地上に出て、開けた景色。目の前のそれは私の疑念を確信に変えるのに十分なものだった。
 どこまでも続く曇り空。そして、一面に広がるレンガ造りの住宅街。そのレンガの壁には、見たこともないほどハイクオリティのストリートアートが描かれている。英国、ロンドン。ここは古き良き伝統と、新しい文化が共存する街。時代の変化に揺れ動く世界有数の大都市。入り混じるのは大きな期待と少しの不安。一体、どんな10日間が待っているのだろうか。雲で覆われた空には、一筋の晴れ間がさしていた。


 ロンドン、というとどんな印象を受けるだろうか? 紅茶?食べ物?兵隊さん? 我々が遠い極東で描いていた英国は半分正解で半分幻想だった。
 まずは紅茶。結論から言うと英国人はエスプレッソが大好きだ。街を歩けば、駅、公園、観光地、いたるところにコーヒー屋がある。特にエスプレッソを牛乳と合わせたフラットホワイトはぜひ飲んでいただきたい。これは日本でも確実に流行ると思う。

もちろん、美味しいアフタヌーンティーも楽しめる。

 次に食べ物。これは半分正解だろう。フィッシュアンドチップスは一皿で大量に出てくるくせに油っぽくて完食は難しい。しかしそれ以外、具体的にはイギリス料理以外の食べ物、はとてもおいしくいただけた。思えば、イギリスはかつて世界帝国をなした国家である。つまりは世界中の文化が交わり、極められている場所なのである。スペイン、インド、中国、日本。イギリス料理以外の世界中の料理がおいしく食べられる。イギリス料理以外。世界に、イギリス料理がおいしく食べられる場所は存在しない。

フィッシュアンドチップスは、まさかの丸揚げ。

 続いて兵隊さん。これは存在する。バッキンガム宮殿や国会議事堂などの観光地には赤い服と黒い帽子のお馴染みの兵隊さんがいる。しかし彼らは観光向けの見世物である。バッキンガム宮殿では一人で行進したり、国会議事堂の前の兵隊さんなどは馬に乗ったまま立ちっぱなしである。今の日本で国会議事堂前に侍が馬に乗ってじっとしている職業があれば炎上案件だと思うが、ここは英国である。
 ほかにも隙間時間で調べたことがある。旅の必需品。そう、ビールである。英国のビールはエールビールで、基本的にぬるい。味がしっかりしていて、ビール独特の苦みやうまみを感じやすくなっている。おススメは赤い「ロンドンプライド」。どうも苦手なら、イタリアのビールなどの飲みやすいものをおススメする。ちなみに日本のビールは「アサヒスーパードライ」と「サッポロ」を発見した。日本のビールの人気もそれなりのようで、スーパーでの買い物中に酒コーナーで出会った黒人男性にドヤ顔でかごの中からスーパードライを出されて二人で盛り上がったことがある。彼は元気なのだろうか。
 いろいろなことがあったロンドン旅だが、自分の中でのイギリスの印象ががらりと変わった。料理はおいしいし、コーヒーはあるし、地下鉄は時間通りにこない。同時に、イギリスとの距離がぐっと近くなった気がした。グローバルな時代。自分と世界の距離は、物理的な距離じゃない。その距離を縮めるのは、あなた自身の行動だ。
 さぁ、パスポートを取って、飛行機に乗り込もう。新しい扉が、あなたを待っている。

※EU離脱前に行きました。
※学校に提出したレポートをリメイクして投稿しています。

いとーとは

 はじめまして。私は、愛媛県松山市に生息する大学生でございます。飯テロリストとしてInstagramで「飯テロ×文章」をコンセプトに、独自の飯テロ活動をしております。少しでもこの文章を面白いと思ってくださった方は、ぜひこちらものぞいていってくださいな!
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