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一人男の娘AC-11:非エロ系読み切りを語りたい

ティーカップ横綱 一人 Advent Calendar 2020 十一日目の記事です。

https://adventar.org/calendars/5488

今更になって言うが、男の娘漫画というのは非常にニッチなジャンルである。というのも、基本的に「男の娘」以上の細分化がされないからである。AND検索に対応しているウェブサイトなら「男の娘 スク水」とかで検索すればその中のさらに詳しく検索することが可能だが、それも作者が男の娘以外に別のタグを付けていることが前提であるのに加えて、その作品中の「男の娘」タグが指しているキャラクターと「スク水」タグが指しているキャラクターが違ったりすることもあったりするので油断も隙もないし手に負えない。

…そんな愚痴はさておき、男の娘を中心に取り上げているシリーズ物の漫画というのは非常に少ない。長ーいシリーズ物の脇役の一人として添えられていることは「こちら葛飾区亀有公園前派出所」とか結構ある。

逆に、二次元美少女のジャンルの一種として捉えられていたりすることもあり、単発の短い話で描かれていることは結構多い。薄い本とかでも結構盛んだし。一方こういったジャンルでは18禁になることが多い=つまりはページ数の半分くらいエロ描写に持っていかれがち、ということである。人によっては「こんなジャンルエロ描写がなかったら見てない」と本気で言ってる人もたまに見かけるのでなんとも言えないところだが…

一方、「わぁい!」を始めとする非18禁男の娘漫画雑誌ではそんなページの半分を占めるエロ描写が一切存在しない。そのため、「空いた部分をどう埋めるか?」によって作者の味が出るのが特徴だ、と考える。18禁に行かない程度にエロ描写を入れたり、言葉だけでメスになるようなチョロインとして主人公を設定したり、ほとんど言葉だけのネームでお茶を濁していたり…と千差万別である。ということでここからは僕が気に入った「非エロ系男の娘漫画」を三作品くらい紹介したいと思ったけどストックがなくて2作品で諦めました…(というか、高校時代に買ったアンソロの大半は実家に封印されているためかろうじて手元にあるものからのの紹介になるが…)。

ちなみに最初に言うと、ヘッダーの広告の作品は展開自体は個人的に好きなんですが「カイチュー!」で既視感があるのと読んだ友人が残した「ありきたりな話だな」という感想が記憶から抜けないためタイトルだけの紹介に留めさせていただきます。

1:デコレーション/はずみなりゆき

女装少年アンソロジーコミック リボン組(一迅社)収録。オト★コン はずみなりゆき女装少年アンソロジー作品集にも多分収録。

主人公の継貴はある朝友人の和一と通学路を歩いていると、祖母から突然洋菓子店の経営(店長)を任される。しかし通っている学校はバイト厳禁なので、教師などがよく利用するこの店で働くする時には女装をすることに…

導入が強引すぎるぞ。もう少しやり過ごすのにマシな手段あったろ。しかしその点については作中でも「ハッタリ」と断言されているので気にするほどではない。それよりも経営権が譲渡されているのならそれはバイトではなく本業なのではという気がしなくもないが、高校時代に企業を経営した経験がないのでよくわからない。

この物語の面白い部分は、洋菓子店に祖母が置いていったもうひとりの店長候補である年上のお姉さん一輪さんの存在である。主人公の継貴は彼女のことを「才能があるし輝いているしそもそも自分みたいに隠さなければならない後ろめたい事情もない」的な評価をしており、彼女のほうが店長にふさわしいと常々思っている。のだが、なぜだか一輪さんはやたらと継貴に献身的で、メイクなども積極的に教えてくる。真相としては「一輪さん=和一」だからなのであるが、作中誰にも全くバレている気配がない。継貴の方は担任にバレるかどうかでおどおどしているというのに、さっきまで隣りにいた同級生相手にシラを切り通す和一、才能輝きすぎだろ。何ならしょげた継貴に対して「女装は変わることなんです」と半ば自分のカミングアウトをしているような発言をしてもなお全くバレる気配がないどころか、継貴に恋心まで抱かれる始末。友人の男心を揺さぶった件について和一がどう思っているのかについては一切語られないが…

まあ一応、ラストに継貴が「どっちの道でも勝ってみせます!」と一輪さんに言うところで物語は終わるのだが、そのどっちがどこなのかが全く推察がつかない。いや片方は「菓子店の店長に向けて」というのはわかるんだけど、もう片方が「女装」だとしたら継貴が一輪さんの正体をどこかのタイミングで知ったということなのか、というか女装であること自体それ以前の作中で気づいた描写がないので。でもメイクとかにすると話の軸としてよくわからんしな…

ちなみに、この「女装バレに怯えながらバイトする主人公を見守る完パス女装男子」というのは業界内だと結構あるあるな作品で、例えば「すきスキっす/凪妖女(スーパー男の娘タイム、はじまるよっ☆(エンターブレイン)収録)」とかが該当している。

2:悪女/とめきち

オトコの娘コミックアンソロジー 魔性編(ミリオン出版)収録。おと☆こい~とめきち オトコの娘作品集~にも収録。

主人公の信也(面食い)は彼女の加奈子とデート中。そんな時信也は「まき」とぶつかってしまい、まきのグロスで服が汚れてしまう。信也的にはまきが可愛かったので服が汚れる程度どうでも良かったのだが、まきは彼女とデート中なら誤解させたくないとして信也とその彼女両方に謝りたいという。しかし加奈子はまきの姿を見た途端明らかに不機嫌になりだして…

注目すべき点はこういったアンソロジーでは描かれにくい「ガチで嫌われてる女装男子」の描写がある。…とは言え女装行為は理由として些細で、問題は別の方にありそうだが。顔が強いのを自覚的に運用した上で人の彼氏を寝取る(作中見る限りは取った後に寝ているが)!しかも作中の加奈子からして常習犯!しかも「まき」の嫌なところは、自分が男であることすら寝取りに躊躇なく利用している部分(女側のコンプレックスをかってに刺激させる)で、女を決定的現場に呼びつけて自ら手をくださず自動的にカップルを破局させるという孔明もびっくりの策士。

というかクラスメイトから彼氏を寝取るという胆力がすげえ。それ以前に嫌われてるけど知り合いになる程度の交友関係は一応クラスメイトの女子と築けているコミュ力がすげえ。立ち回りが寝取り全振りすぎる。女装男子に彼氏寝取られた人ってああいうメンタルになるものなんでしょうか。でも学校だけ女装していて私服は男装だと思ってた加奈子の発想も大概だと思う。そんな人おるのか?

最後に

読み切りともなるとアンソロジーコミックに収録されているのに人を選ぶ内容が多く、正直言ってほとんど琴線に触れない(だいたい触れるものは個別で連載を持ってたりするので)。でも、そんな中でもぶっ刺さる作品はいくつかあるので、気になったら一度好きなジャンルで探してみるのもいいのかもしれない。最近まで残ってるジャンルだと電子版からの検索も楽だしね。保証はどこにもないけど。


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