一人男の娘AC-8:学園モノの男の娘作品を比較してみる

ティーカップ横綱 一人 Advent Calendar 2020 八日目の記事です。

https://adventar.org/calendars/5488

また遅刻しました。もう言い訳はせん。

アドベントカレンダーっていうのは本来こういう身になるエントリを書くべきだと思うんですが、努力も才能も不足しているので相変わらず文章だけのエントリになります。それよりも「筑波大には男の娘が多い」という幻想を共有している人間がklisにもまだいたということに驚いています。

今回の趣旨

今回比較したいのはおとこの娘ソフトさんの「おとラブ」「あにラブ」、脳内彼女さんの「女装学園(妊)」、の~すとらいくさんの「女装学園(孕)」の4作品です。

4作品まとめて紹介するのは、男の娘と学園という要素を絡めた作品であることと、それぞれ同系統のシリーズながら、前後作で世界観や物語の構造が全く違ったものになっている(のと全部ミドルプライス)という特徴があるからです。

作品概要

まず、それぞれの作品を極めてざっくり紹介します。

「おとラブ」は2011年11月25日発売でした。主人公の晶は通っている学園で美少女めぐると優羽の二人に出会い一目惚れするのですが、その二人は実は男同士でかつカップルでした。なので片方選んで寝取るか3Pかを迷っている間に、めぐるが実は自分の弟だということが発覚して…という作品です。

いや、ヘアスタイル以外どう見ても弟なんだし初見で気づけよ。

「あにラブ」は2014年4月11日の発売です。主人公の直希はある朝起きると兄の由希が女装してました。しかもその格好で学園に通い出しました(通ってる学園は兄弟で同じ)。兄は役員会という生徒会的なものの長をやってたのですが、他の委員にも一切相談とか事前のカミングアウトとかしてなかったらしく袋叩きに遭います(「おとラブ」では元から男の娘がいっぱいいる学園なので、終盤主人公が男の娘化しても誰にも気にされませんでした)。そんな中、一番女装男子を毛嫌いしてそうな学園一番の美少女芽衣だけは何故か由希の味方をしているようで…という作品です。

商品ページに書いてあるので言うと、芽衣も当然男の娘です。

「女装学園(妊)」は2014年9月26日の発売です。主人公の健人は或る日突然学園一の美少女葵に告白されます。本当に唐突に。その理由について同じ茶道部の伊月に女子同士心当たりはないか尋ねますがはぐらかされます。次の日全校放送で学園が実は男子校だったことが告げられます。そしてそのタイミングで暁(アキ)という先輩の不良っぽかった人(男の娘)が実は健人の幼馴染の「アキラ」であったことを明かします。情報量の多さと自分の性指向と性欲に健人はどう蹴りをつけるのか…という作品です。

別にアキラはそのままでも男の娘として通用する名前のような気もしますが…

「女装学園(孕)」は2016年8月26日発売でした。少子化が進んだ近未来、主人公勝人は教師の昌の手引で半ば強引にクラスメイトの玲か後輩の千晴、あるいは昌と子作りをしろと迫られる。しかし勝人も玲も千晴も当然乗り気ではない。それは子作りや好きでもない人間とのセックスに対する嫌悪感ではなく、招集された人員が全員男であるからで…という作品です。

昌先生が教師だけでなく校医もやってる設定のせいでハイスペ感がすごい。

ではまず、制作スタッフが同じ2作品ごとの共通点とについて、ほか2つとの比較において説明させていただきます。

「おとラブ」と「あにラブ」

「おとラブ」と「あにラブ」の2作品の共通点としてあげておきたいのは「主人公の身内がヒロイン」ということと「主人公も男の娘になるルートがある」、「リバ」という3点です。

1点目はそもそもタイトルにも含まれているように、「おとラブ」では弟、「あにラブ」では兄がヒロインになります。ちなみに良作ともに血縁関係はあります。同性かつ近親というインモラル×インモラルな感じのする展開になっているようで、「男同士のセックスでは妊娠しない」という医学的に当然の論理によって、実は若干背徳感は薄れているのではないかという気がしますが。特に「おとラブ」では弟と他の男の娘のカップルのうちどちらかを寝取るという展開なのもあり、意外とスリリングです。

2点目はそもそもブランド名が「おとこの娘ソフト」であり、他の作品でも「男の娘同士の恋愛」をブランドの魅力として掲げている以上ほとんどノルマみたいな感じです。でも堕ちていく過程とか恥じらいとか毎回ヒロインの中で一番可愛いんだよなぁ。一応他のヒロインをすべて攻略した後の隠し選択肢ででてくるんですが、パッケージにも載ってるし全く隠れていない。脳内彼女作品でもかつて「やみツキ!」という作品で主人公がメス堕ちするバッドエンドが一度だけ搭載され、ヒロインの人気投票でそのメス堕ち主人公がぶっちぎりで1位になるという出来事があったのですが、残念ながら女装シリーズでは頑なにそういう展開をやろうとしないため、学園モノでそういった展開をお望みの場合はこの2作がおすすめです。ただ、最初から男の娘化前提で主人公にも声優が当てられているので男子状態でも声がめっちゃ高いです。やってるうちになれるとは思いますが…

3点目は2点目とも繋がりますが、主人公が「受け」に回る展開がある以上さもありなん、といった感じです。そういう性癖の人には残念ですが、男子状態の主人公を男の娘が掘ることはありません。

「女装学園(妊)」と「女装学園(孕)」

「女装学園(妊)」と「女装学園(孕)」2作の共通点としてあげておきたいのは(といっても前項でだいたい話したような気もしますが)「男の娘が妊娠する」ということと「ヒロインより主人公のチンコの方に異常性がありそう」という2点です。

前者についてはそもそも脳内彼女/の~すとらいくの作品は絵師やタイトル関係なくこういった世界観で通底しています。女装シリーズ第1作「女装山脈」から続くプロデューサーの趣味です。曰くとある山奥にしか流れない女装神=媛神=非女神の霊験あらたかな水の影響らしいですが、その後の広がりを見るに仮面ライダーアマゾンズみたく誰かがその水をウォーターサーバーにでも売ってるんじゃないかと思われます。逆に言うとこの設定は「実の兄弟」を迂闊にヒロインにできないという致命的な弱点を抱えることになってしまっていますが、そこはそもそも男女間恋愛を描いたエロゲでも実の兄弟は避けられがちなので対して影響はなさそうです。…ところでヒロインの精液ってちゃんと受精できるんですかね、あれ。

後者はそのまんまです。どちらも一人女装に否定的なヒロインがいるのですが、主人公のチンコを見るなり入れるなり咥えるなりするうちにだんだん主人公の子供が欲しくなってきます。基本的に尺の都合もありそれ以外の主人公の魅力をあまり描けておらず、「単に主人公のチンコが男子をメスにさせるだけなのでは」という疑念がプレイ中よく浮かびます。妊娠まで描こうとするとどうしてもそうせざるをえないのかなぁとも思います。

「おとラブ」と「女装学園(妊)」

ここからは交差するように共通点を考察していきます。「おとラブ」と「(妊)」の共通点としては、ヒロイン以外にも学園内にモブとして男の娘が多く存在しているという点です。羨ましい世界ですね。

おとラブではめぐるが臆面もなくいちゃつくせいで、学園内の隠れ男の娘から反発を買ったり、逆に男の娘として目覚めた生徒も多くいた…と言ったことが序盤に語られます。隠れ男の娘ってなんだよ、女装男子じゃねえのかよという突っ込みはあるかと思われますが、作中でそう言っているので仕方がない。どのくらいいるのかというと、優に2桁はいます。多分筑波大学にいる女装男子の数より多いです。

一方で「(妊)」ではすでに生徒の約半数が男の娘でありながら、男子生徒側(妙な表現ですが)には男子校であることが伏せられていたというのが物語のフックです。一応物語開始以前から男の娘とカップルになっていた男子生徒は男の娘から告げられる形で知ってはいたようですが。カミングアウトもみんなですれば怖くないということなのでしょうか。それにしても校内放送ってとんでもないアウティングだな…こちらでは「女装シリーズ」の例に倣い、(主人公目線では)途中から男の娘に目覚める生徒を見かけることはありません。もともと入学試験とかが違うらしいです。でも入学案内が男女別の学校なんてみたことないですし、主人公も資料をちゃんと読んでいれば最初から気づいていた…あるいは男の娘として入学していた可能性もあったのでは…?と感じるのは私だけでしょうか。

「あにラブ」と「女装学園(孕)」

「あにラブ」と「(孕)」では逆に、メインヒロイン周り以外に男の娘は存在していません。現実的な比率ですね。とは言っても両者でその意味合いはだいぶ違うのですが…

「あにラブ」ではそもそも女装、とくにそれをしたまま通学することははっきりと「異常」であるものとして描かれています。ですので由希は役員会の攻撃の対象になりますし、芽衣も自分が男の娘であることをひた隠しにしています。それでも一定の人間から由希の行動が擁護を受けるのは顔が強いから…ではなく、直希の純粋な兄に向ける兄弟愛や、多様な価値観を認める姿勢である、とされています。まあ主人公の男の娘堕ちする展開は殆ど顔の強さだけで話が進行していくのですが…

「(孕)」では「(妊)」のような奨学金で釣ってまで男を男の娘にするような狂気の男子校が舞台ではなく、ありふれた学園の出来事として描かれています。つまり(妊娠計画はともかく)あの比率で全国の学園に男の娘がいるという設定であるわけであり、恐らく日本の男の娘数だけでいうと今回取り上げた4作のうちダントツで多いはずなのですが、予算の都合もありあんまりそんな感じはしません。ただ、十数年前まではそれこそ「あにラブ」同様の「異常」とされる雰囲気があったことが話されていて、そんな中男と男の娘のカップルの間から生まれた「昌」は当時出生したという事実すら認められず、無戸籍児であったことが語られます。そんな境遇で教員免許だけでなく医師免許更には科研費まで取ってきた蓬田先生にはホント頭が上がらない…

「おとラブ」と「女装学園(孕)」

「おとラブ」と「(孕)」では男の娘の存在が社会的に”は”認められています。ですのでそういった外縁はさらっと流されます。身体的に同性である(?)男の娘に対して恋愛感情を抱きつつもそれを認められない主人公の葛藤が物語の中心になります。まあ快楽負けしますが。

「おとラブ」だと通学中優羽が男子生徒から痴漢にあったりするシーンがあるのですが、特に男の娘であることについてのコメントは多くはなく、普通に痴漢をします。学園内で見慣れてしまったということでしょうか。慣れって怖いですね。

「(孕)」は男・女に続く第3の性別として「男の娘」が認められつつあるようになっている社会、という設定です。なんで?なのでプレイヤーとしてはともかく社会認識的には男と男の娘は「異性」という扱いです。主人公がプレイヤーに合わせて前時代的な思考をしている…とも言えなくもないですが。でも玲は2~3年前まで普通に男として生きていたらしいので、越境にどのくらいの努力あるいは才能が必要なのかについてはよくわかりません。

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お前は下半身で勝負できるのか…?

「あにラブ」と「女装学園(妊)」

残り2作、「あにラブ」と「(妊)」では男の娘の存在は社会的におおっぴらに認められているわけではないことが作中語られており、主人公は一般常識と乖離している眼の前の状況に対して順応していいのかを苦悩していきます。

「あにラブ」はそもそもサブタイトルの「女装美少年革命!」の名の通り、女装美少年が女装美少年として学園に後ろめたさなしに通えるようになる革命を起こすまでの話です。つまりは史実の性的少数者の人権運動みたいな流れがストーリーとしてあるわけで、「スクール革命」みたいななまっちょろい覚悟でそのタイトルが使われているわけではありません。…分かるか。グッドエンドの演説は必聴です。卒業式にレイプハメ撮りがスクリーンで上映されるバッドエンドとの落差がひどいですが。

「(妊)」は先述した男子校フックで心理的動揺が起きるための前提みたいなところがあります。実際にはその男子校で話が完結するので「あにラブ」ほど陰鬱な感じはしませんが。奨学金につられて男を捨てちゃった暁の件も含めて主人公だけがひたすら悩む要素として取り上げられています。

まとめ

以上4作品を取り上げました。「女装学園」が男の娘妊娠というファンタジーなテーマを描いているとしたら残り2作品は真面目系?と思わせといて実はそうでもなく、どれにもそれなりにファンタジーとリアルが入り組んでいる、というお話でした。男の娘自体がファンタジーなので全部ファンタジーと言われてしまうと特に反論の余地がないですが…

最後に、あなたの通っていた母校、もしかしたら男子校だったりするかもしれませんよ…?

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