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『ローグライクとローグライト』ダンジョン紀行#34.5

 ダンジョン好きの皆様なら「ローグライク」と言う言葉はご存知でしょう。当ダンジョン紀行においても、#30 『ダンジョン用語:四方山集』にて、その用語の意味を簡単に解説させて頂きました。
 本日はこの「ローグライク」と言う単語と共に「ローグライト」を改めて詳細に解説いたします。そして最後に、「ローグライク/ローグライト」と言うジャンルについて、ダンジョン紀行としての見解もお話したいと思います。

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 まず「ローグライク」と言う単語は、1980年代初頭のゲーム「Rogue」から始まったジャンルで、
・ランダム生成ダンジョン
・パーマデス
 この二つを大きな特徴として、似たような特徴のある作品を「ローグのようなゲーム=”Rogue like”」と言う名称が産まれました。

 しかし”大きな”特徴と言った通り、要素は多岐に挙げられます。例えば、フィールドがマス目で区切られた「グリッドマップ」だとか、繰り返し突入することで別の成長を感じられる「ハック&スラッシュ」だとか、他にも様々な要素があります。

 それらローグを発祥とした要素が長い年月を経て、個別に要素を切り取って扱う作品が表れ、「ローグのようだけどローグ要素がさらに薄い作品」などと呼ばれ始めます。
 そこから、「ローグライク-ライク」や「ローグ要素の軽いライトな作品」など、様々な意味を込められて「ローグライト」と言う呼び名が産まれたのです。
 決して、「ローグライク」をうろ覚えで、「ローグライト」と間違って使い、引っ込みが付かなくなってしまったから……と言う訳ではありません。……多分。


 そして今回、ダンジョン紀行”零れ話”として取り上げた理由は、2023年度はローグライク/ローグライトの作品の中でも、大きなタイトルが動きを見せた年度であったと振り返れそうです。

 1つ目は、日本のローグライクゲームシーンで外せない作品「不思議のダンジョン 風来のシレン」シリーズ。こちらが、2024年1月25日発売されました。前作から実に、14年ぶりのナンバリング新作。私も遊ばせてもらいましたが、過去の良さを踏襲してプレイし応えのある作品でした。これが初めてローグライクなると、少し難易度が高い面もありましたが、繰り返し遊ぶことによって抜け道を見つける快感は健在でした。

 2つ目は、2017年よりアーリーアクセスが行われ、2019年には正式発売されたデジタルゲーム「Slay the Spire」と言う作品。こちらも繰り返し挑戦しパーマデスすることから、ローグライトな作品として人気なシリーズです。こちらが、日本語版ボードゲームが2023年1月〆にクラウドファンディングされ、2024年に順次発送されました。

 また、3つ目として挙げるのは「Splatoon3」の追加ダウンロードコンテンツ「Side Order」です。「Splatoon」は2015年に発売され、数々のビッグタイトルを持つゲーム会社任天堂の中に新しく産まれたPvP型のTPSゲームです。チーム対チームでのPvPがメインで、ポップなシューティング要素が人気のゲームですが、最新の追加コンテンツは「ローグライト」であると言う触れ込みで話題となり、大変興味深いコンテンツになっています。大手メーカーが「ローグ」要素を上手に取り入れているのは、「ローグライク」界隈にとって見逃せない作品の一つと言えるでしょう。


 このように、2023年度は見逃せない作品が多くあります。さらに視野を広げてインディーゲーム市場を覗けば、「ローグライク/ローグライト」な作品が星の数ほどヒットするようになりました。
 発展著しい分野、いまだ留まることの知らない「ローグライク/ローグライト」の状況を、それとなく感じ取って頂ければ幸いです。

 その上で、今一度「ローグライク」と言う言葉の定義を考えてから、今後の未来に関する私見で本記事を締めたいと思います。


 まず、「ローグライク」の定義が深く議論されたのは、「International Roguelike Development Conference 2008」に行われた「ベルリン解釈」と言う物のようです。

 伝え聞く範囲の文献から、翻訳に起こしてみました。(ChatGPT3.5併用の独自翻訳です)

①==== ランダムな環境生成 ====
ゲームの世界がランダムに生成され、再プレイ性が向上したもの。アイテムの見た目や配置はランダム。モンスターの見た目は固定されていますが、配置はランダム。限定されたコンテンツのみランダム性を除去します。

②==== パーマデス ====
ファーストアタックでゲームに勝利することは期待されていないうえ、死んだら最初のレベルからやり直す。(セーブは可能だが、読み込むと残らない。)その環境は、つまらないものではなく、楽しいものである。

③==== ターンベース ====
各コマンドはシンプルな行動/移動に対応します。ゲームはリアルタイムベースではなく、行動を選択するのに時間をかけることができます。

④==== グリッドベース ====
世界は一様なタイルのグリッドで表されます。モンスター(およびプレイヤー)はサイズに関係なく1つのタイルを占有します。

⑤==== ノンモーダル ====
移動、戦闘、およびその他のアクションは同じモードで行われます。すべてのアクションは、ゲームのどのポイントでも利用可能でなければなりません。

⑥==== 複雑さ ====
一般的な目標に対して、複数の解決策を取ることができる複雑さがあります。これは、豊富なアイテム/モンスターとアイテム/アイテムの相互作用が互いに作用することで達成されます。

⑦==== リソース管理 ====
限られたリソース(食料、回復ポーションなど)を管理し、利用する必要があります。

⑧==== ハックアンドスラッシュ ====
多くのモンスターを倒すことがローグライクの非常に重要な部分です。ゲームはプレイヤー対世界です:モンスター同士の関係(敵意や外交の判断)はありません。

⑨==== 探検と発見 ====
ダンジョンの注意深い探索と、未識別のアイテムの使用の発見が必要です。これは、プレイヤーが新しく挑戦するたびに行う必要があります。

※⑩==== 単一のプレイヤーキャラクター ====
プレイヤーは単一のキャラクターを操作します。ゲームはプレイヤー中心であり、世界はその1人のキャラクターを通して見られ、そのキャラクターの死によって1ゲームが終わります。

※⑪==== モンスターはプレイヤーと類似している ====
プレイヤーに適用される規則は、モンスターにも適用されます。彼らはインベントリ、装備、アイテムの使用、呪文のキャストなどを行います。

※⑫==== 戦術的な挑戦 ====
重要な決断を下すにあたり、ゲームの仕組みや攻略について学ぶ必要があります。このプロセスは繰り返されます。翻って言えば、始めたての知識では最後までクリアすることはまずありません。ローグライクの焦点は、戦術的な挑戦を常に行うことにあります。

※⑬==== ASCII 表示 ====
ローグライクの伝統的な表示は、タイル化された世界をASCII文字で表します。

※⑭==== ダンジョン ====
ローグライクには、部屋と廊下から構成された階層型のダンジョンが必ず含まれます。

※⑮==== 数字 ====
キャラクターを記述するために使用される数字(ヒットポイント、属性など)は意図的に表示されます。


==== 最後に ====
これらの要素は、ゲームがローグライクである程度を示す上で、低い価値の場合もあります。すなわち、これらの要素がなくても、ゲームがローグライクである可能性がありますが、これらの要素があっても、それがローグライクであることを保証するものではありません。


 このように、2008年当時の「ローグライク」定義も些事に踏み込み、妥当と言える定義にはいたっていないことが分かります。そして2024年現在から見れば、蛇足であったり適切ではない部分も多そうです。何より、本議論の『==== 最後に ====』において、かなり弱気な内容になっていることからも、議論が困難であったことが伺えます。

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