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ゲーマー歴35年のダンジョン紀行#14 『VRでTRPG? "Xpraize"のダンジョンに潜る』

▼ローディング。梅雨を越え、熱暑に備えエアコンを付ける。

 祝日の無い6月が終わり、夏がやってきたようです。この記事の出た6月末では、30度後半の気温が観測され、熱中症に備える話題が多く出ています。
 こんな時こそ、お休みの日はエアコンの効かせた部屋で、アナログゲームへ傾倒したいものです。涼しい部屋の中で、知的に遊ぶ時間に没頭しようではありませんか。

 当記事はアナログゲーム界隈の皆様と共に発展していきたい『アナログゲームマガジン』です。アナログゲームに精通した執筆陣が集まり、ジャンルを詳しく解説する記事から、ゲームの攻略記事、ルール記述の記事、はては第一線でアナログゲームを制作している方々の最新記事まで、多角的にゲームを語っております。
 私の記事は『ダンジョン』を焦点にコラムを書かせてもらっております。マガジンの中でも異色のコラムとして、楽しんでもらえたら幸いです。

 本日は前回のTRPGから少し発展し、かつ第11回の"ダンジョン制作回"で少し触れたVRのダンジョンについて触って参りましたので、その感触をダンジョン紀行らしくまとめたいと思います。アナログとデジタルが日々融合しておりますが、アナログの良さ・デジタルの良さをそれぞれ確認し、ダンジョンとしての違いを見て行きたいと思います。

※#11はこちらから。

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▼B47F:Xpraize Betaのダンジョンに潜る。

 2022年5月31日に公開された、VRでTRPGを行う為のソフト。
 GM版とPL版でそれぞれ配信されており、GM版は無料、PL版が有料で配信されています。
 オリジナルのルール(Dragon Descendants)とシナリオが用意されており、インストールさえすれば手軽にVRでTRPGを行う準備が整います。
 開発は京都にあるインディーズゲーム会社であり初作品です。

開発元:RedefineArts.Inc

 数年前より、VR-CHATなど様々なVR空間を作成・利用できるツールが増え、有志の方がVR空間をTRPGの装置として利用し始めていました。そこに、ついに専用のソフトが出ました。

 付属のルールを見ると、D&Dを彷彿とさせるようなファンタジーです。
 王が国を治め、ならず者の冒険者が仕事として魔物を倒し、魔法が存在する世界。付属のシナリオでは、魔法を使う竜が姫をさらい、それを助けると言った展開。ドラゴンクエストを想起させるような王道のシナリオでした。

 ※本記事ではGM版からダンジョンステージについて細かく観察・考察をしております。シナリオのネタバレはしていませんが、事前に何も知りたくない方は遊んだ後に御覧いただけたら幸いです。

 さて、実際に起動をしてみると、非常に簡単な操作でVR空間を共有することができます。GM版を起動すると、メイン画面の他、ステージを切り替えるプルダウン欄、ダイスを振る欄・チャット欄がまとめられ、右側にはキャラクターに関わる項目がまとめられています。

 ソフトのUIはそここそに、注目していくのはやはりステージです。ステージには初めからプリセットが用意されており、城1,城2,城3、城4,森1,森2,森3、ダンジョン1,ダンジョン2、ダンジョン3,ダンジョン4,ダンジョン5,ダンジョン6A,ダンジョン6B,ダンジョン6C,ダンジョン7,ダンジョン8,森4と最初から18ものステージが用意されています。備え付けのシナリオの想定とは言え、十分な数に思います。
 ダンジョン6を一つとして考えても、『ダンジョン』と冠するステージが7ステージ分も用意されています。他のステージ、物語の起点となる『城』で3つ、道中となる『森』で4つとなるので、それらを足したほどの数があります。
 つまりシナリオの半分がダンジョンステージであり、それだけダンジョンが物語において重要なステージとして扱われていることがうかがい知れます。ダンジョン紀行としては嬉しい所です。改めて”ダンジョン”のステージに注目して見て行きたいと思います。

 ダンジョン全体を通してみると、打ち捨てられた廃墟のような聖堂のようなタイプの建物でした。ゴブリンやオーガが道中の敵として現れるものの、魔術師や竜がいることで文化的な背景を感じる舞台のようです。

 ダンジョン1は入り口です。人間の身長の3倍ほどもあるようなアーチ状の両開きの扉が待ち受けます。入り口にはゴブリンとオーガがいて、戦闘或いは交渉を行うと言った展開があったり、他に橋が崩れ落ちるギミックなどが待っています。ダンジョンの導入として柔軟な展開が用意されています。
 また、城や森では青空や地平線が見える”外”でした。しかしダンジョンのステージに入ると暗闇が周囲を覆っています。そこだけでも不穏さ、緊張感を増す良い違いを出しています。

 ダンジョン2は狭い通路になっています。左手に部屋が通じており、ダンジョン内でオーガが店をやっていました。ゴブリンやオーガたちがこの世界で生活をしていることを感じます。
 人間とは別の価値観で、文化を営んでいる雰囲気が独特ですね。ダンジョンの中で店があるタイプの物は比較的存在し、ゲームブックの中では頻繁に現れますし、不思議のダンジョンシリーズなどでも定番です。そういった、襲い掛かってくるだけの存在ではない相手がいることで、この建物風のダンジョンにより深みが出てくるようです。
 販売しているオーガも手練れのオーガです。敵対行動をしなければ襲ってこないことで、他種族を含めた世界観の広がりが感じられます。そこで売られているポーションを飲むかどうかも含め……。

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