ゲーマー歴36年のダンジョン紀行#24後編『ゲームマーケット2023春の新作ダンジョンをチェック!』
▼ローディング。GWが遠い過去のように。
GWの翌週5/13,14にて開催された、2023春のゲームマーケット。コロナの規制制限も撤回され、マスク必須環境も街中から少しずつ減ってきました。とは言え、密集して人が顔を寄せ合うアナログゲーマーとしてはマスクや感染対策は常に気に掛けるようになりましたね。
こうして世の中は少しずつ変わっていく訳ですが、「ダンジョンゲーム」はどのように変わってきているでしょうか。ダンジョン紀行も二年目。2021秋ゲムマよりチェックを続けていますので、そろそろ変遷と言うのも感じられることでしょう。
『アナログゲームマガジン』は、アナログゲームに精通した執筆陣が集まり、一ジャンルを詳しく解説する記事や、ゲームの攻略記事、ルール記述の記事、はては第一線で制作している方々の最新記事まで、多角的にゲームを語っているマガジンです。
私の記事は『ダンジョン』を焦点にコラムを書かせてもらっております。マガジンの中でも異色のコラムとして、楽しんでもらえたら幸いです。
こちらの記事は『ダンジョン』について掘り下げていきますので、ゲームの評価をする記事とは異なるのが特徴です。これはひとえに、製作した皆様が『ダンジョン』をモチーフに選んでくれたおかげで当記事は産まれております。
ダンジョンゲームの紹介と言う意味を込め、登場するゲーム部分は無料で読めます。無料部分がかなり広い記事ですので、是非御覧頂ければと思います。
もちろん、ダンジョン紀行として『今年のダンジョンゲーム観』をまとめた段落は有料になります。他にも『ダンジョン』を焦点にした他に類を見ない記事を過去に多く書いてきましたので、ご登録されていない方はどうぞアナログゲームマガジンをよろしくお願いいたします。
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▼B80F: ダンジョンが登場する作品
【ざまぁウォーズ】
財宝(勝利点)のある場所として、ダンジョンが設定されています。複数のダンジョンがあり、プレイヤーはそれぞれ行くダンジョンを内心で決めて、それが被らなければ得点する。バッティングゲームです。ダンジョンそれぞれに勝利点や報酬は提示されていますが、数字的な表記のみで、フレーバー的な要素はありません。つまり、ダンジョンの中を探索したり、戦ったり、罠にかかったりと言ったドラマが産まれることは楽しみの焦点ではありません。
「ダンジョンから財宝を取ってくる」と言うことが当然とされている訳です。ここから、ダンジョンを取り巻く社会環境が透けて見える作品と言えるでしょう。と言うのも、
”『財宝発見』のスキルで一攫千金”
とある通り、経済活動に組み込まれており、なおかつ人々が夢見るギャンブルの舞台なのです。
現実に言い換えれば、
”宝くじや競馬などのギャンブルで当たり券を買うことができる力を持っていて、その当たり券を奪い合う”
そういった世界設定ですね。このように言い換えをすることで、一般的には白い目で見られるものの、特性を理解すれば目の色を変えて殺到する。そのような空気感を理解できます。
実際に『ざまぁウォーズ』の世界でダンジョンがそのようにみられているかは分かりません。しかしながら、「リスクを冒しつつもリターンを求める」と言う点において、私が提案してきたダンジョンの三大要素の一つが提示されています。
またここで考えるのは、「ダンジョン」と言う単語は単体で存在する訳ではありません。挑んで行く「冒険者」や、隠された「財宝」、主である「ボス」や、周辺に住む「一般人」たちなど、その関係性によってダンジョンの存在や意義は変化します。
これまで『普遍的なダンジョンの要素』を考えてきたからこそ、広い視野で『関係性から見るダンジョンの要素』と言う視点を考えさせられました。
【12シーカーズ】
宝石トークンをダンジョンに見立て、自身はシーカーと言う実行者を雇って富を得るボードゲームです。二人用と言うのが特徴的で、手番のルールや勝利点の計算方法などが複数用意されており、何度やっても楽しめる、そういうゲームデザインが込められているように思います。ダンジョンを財宝だけで表しているのは【ざまぁウォーズ】と共通と言って良いでしょう。
また、序文に深い世界設定が描かれており、勝利点は具体的に宝石であり、どういった存在かがよく練り込まれているます。これは二人用のゲーム、かつ短時間で繰り返し遊ぶゲーム。将棋や囲碁、あるいはトランプなどの気楽さを感じさせながら、プレイヤーに愛着を持ってもらおうと言う気概を感じます。
そしてやはりここでも「ダンジョン」に「来歴」や「社会的な意義」と言ったものが追加され、他ではない独特なダンジョン設定を伺い知れます。ダンジョンに来歴を作ることで、来歴のないダンジョンと何が違うのか。こういった観点もダンジョンを考えるに有用な視点のようです。
【ダンジョン・インベーターズ】
ダンジョン側に立ち、次々と迫り来る冒険者たちを打ち倒す。ディフェンス型のゲームです。名前とイラストの雰囲気の通り、古のシューティングゲーム「インベーダー」を彷彿とさせます。言われてみれば、インベーダーゲームってディフェンス型ですね。
配下となる三種類のモンスターにダイスと言う名の指令を与え、相対する冒険者を倒していきます。ダイスは左から昇順に横に並べられ、指令として選んだダイスの右側が相対する冒険者に渡っていきます。この仕組みを利用しながら、こちらは最大値の攻撃を計り、相手からは攻撃を受けないように立ち回るゲームです。この感じ、姿は違えど不思議のダンジョンで一歩一歩慎重に行動を選んでいたことを思い出させますね。それでいて、戦いの進行はドラゴンクエストを思い出させるターン制バトルの様相も感じます。向かって手前に味方、奥に敵が横並びに現れる様や、攻撃の手段、倒す相手を選ぶのもとても連想させられます。
ダンジョンを運用する側のゲームと言えば『勇者のくせに生意気だ』から始まる系譜でもあり、様々な電源ゲームの遺伝子を感じる作品です。
私個人の感想ではありますが、システムやイラストの端々から、そういったここ30年前後のデジタルゲームからインスパイアされた「ダンジョン要素」を多く感じ、ダンジョンの「ゲーム的部分」「記号的要素」が詰め込まれているように見受けられます。
またこちらサークル様の前作【私は一人、ダンジョンで目が覚めた】は初期の頃のゲームブックを彷彿とさせる作品でもありましたし、回を追うごとに時代も進んでいるような気がします。次なるダンジョンがどのようなモチーフで登場させられるのか楽しみです。
【Last Dungeon Pocket(ラストダンジョン ポケット)】
少ないカード枚数ながら、ダンジョンの階層まで表現しています。それを下って財宝を狙う冒険者を、罠や協力者によって打ち倒して守り切るゲームです。
引き続きダンジョンを運用する側のゲームです。近年のダンジョンモチーフのゲームはディフェンス側に立つのが続々と登場するのですが、ボードゲームとしての相性が良いのでしょうか? 個性豊かな冒険者のカードが可愛く、カードの作り込み(素材含め)や説明書を完全にデータ化しているあたりに、アナログゲームとしての作り込みが非常に高い作品だと感じました。
ゲームでは上記のように、階層が示されており、そこを下っていく冒険者の体力を削ることで財宝を守ります。倒した冒険者はダンジョンの素材として、クリスタルと言うエネルギーに置換したり、そのまま使役する選択肢があります。それによって、どんどん強くなり、次々と現れる「冒険者」を倒して勇者までをも退けるのが目的です。勇者がこのゲームの設定にしっかりと据えられているのは特徴的ですね。
また、【ざまぁウォーズ】【12シーカーズ】【ダンジョン・インベーダーズ】とも背景に通じるところがあるように思います。
・冒険者がダンジョンに続々と挑むこと。
・ダンジョンの財宝は大事なものであること。
・ダンジョンを経営する側は大変だと言うこと。
同じ世界設定だと言われても違和感は少ないですし、2023年春アナログゲーム界隈の「ダンジョン観」に何か通じたものがあると言えそうです。この背景はどのような物が考えられるのか、とても興味深いですね。
【TESORO(テゾーロ)】
カードを並べて作った5×5の迷宮を舞台に、財宝を獲得して脱出するまでのゲームです。初めは裏返しになっているカードですが、自分の手番に必ず引く指示カードに則って、カードを移動させたり表にしたりして進んで行きます。裏になったカードの名称を当てることで獲得でき、それが得点になります。またカードの名称を外している場合、他のプレイヤーが事前に指摘していることで指摘したプレイヤーのものになります。真剣衰弱とダウトなどを混ぜ合わせたようなゲームで、それが暗闇に包まれた迷宮を表しているようです。
迷宮の中で切った張ったをするのではなく、知恵で乗り切っていく(名前を知っていれば障害であろうと攻略ができるため)タイプのダンジョンで、「財宝を手に入れて脱出する」と言うかなりオールドスタイルなダンジョンです。
これは、「アナログゲームでダンジョンと言えば【ダンジョンクエスト】」(※ダンジョン紀行#2より)を思い出しますね。また、カードで作られた5×5の姿は、2022秋ゲムマで発表された【崩壊迷宮】なども思い出します。(※ダンジョン紀行#18より)
2023秋のダンジョンゲームを見渡すと、あまり見なくなったダンジョンの様式ではありますが、その目的や手段、表しているものは「古のダンジョン」の様式に則っているようです。
【素潜りダンジョン】
カードに記載されたステータスを元に、プレイヤーは四人の冒険者を導いていきます。行動の結果はサイコロの目に翻弄されながらも、電源ゲーム的に攻撃力や防御力、装備や魔法を計算してモンスターを倒し、ダンジョンを制覇していく、数字の処理で戦闘を行うゲームです。ダンジョンは空間で表されず、出現するモンスターで階層を表現されます。これなどは2021秋発表の【メイドインダンジョン】(※ダンジョン紀行#7より)でもありました。
「どんな環境か」あるいは「罠があるか」「どのような財宝が待っているか」などと言った所は伺えず、戦闘に特化したダンジョンの表し方が特徴的です。これはJRPGの金字塔である「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」においてダンジョンに潜っている時、苦しさの一つである「戦闘」にフューチャーされたのだなと思われます。私自身、両タイトルはほぼすべてのナンバリングを遊んでいますが、「戦闘」はやはりダンジョン探索の花形の一つだと思います。
「装備」「ボス」「アイテム」そして討伐による「リザルトスコア」など、昨今の電源ゲームで培われた計算的な楽しみが詰まっており、「攻略」に主眼を置いた観点もまた「ダンジョン」が楽しまれる要素の一つだと感じます。
【チョコボの不思議なダンジョン ボードゲーム(先行体験)】
当作品は1997.12.23に発売され、以下シリーズの続いている電源ゲーム作品「チョコボの不思議なダンジョン」をモチーフに作られたアナログゲームです。序文の通り、今回2023春にて先行体験会が催されたので早速体験してきたものです。
私達の追っている「ダンジョン」と言う概念は、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」とアナログな遊びの中で始まりましたが、間もなく登場したコンピューターによって電源ゲーム化され、相互に影響を与えながらもRPGと言う枠で育てられたと言って過言ではないでしょう。特に日本に住む多くの人は、電源ゲームから「ダンジョン」に触れた人の方が多いように思われます。(※アナログゲームと電源ゲームの普及率、プレイ人口の差の所感)
そういう意味では、電源ゲームからアナログゲームへの逆輸入をしている本作品。ダンジョンの構造は大きなタイル三枚で表され、階段を降りることで次々とタイルを入れ替えます。人気キャラクター「チョコボ」を共有のコマとして、プレイヤー達は「行動と力」両方の意味を持つカードを上手く出し合って、チョコボの行動に影響を与えていきます。ここが非常にもどかしくできており、強く出たい行動に強く出れなかったり、やって欲しくないことを強くやられたりと、”チョコボを見守るプレイヤーたち”と言う距離感が強調されます。盤面にのめり込むのではなく、確立されたキャラクターを動かす妙を感じました。
ダンジョンの表し方はタイルに書かれたマスで、すごろくの様相を呈しています。HPや死神ゲージと言ったチョコボの不思議なダンジョン恒例のステータスは存在しつつも、装備品や複雑なアイテムは存在せず、不思議のダンジョンにおける「もどかしさ」や「焦燥感」を感じさせるゲームにしあがっていると感じます。
日本でも屈指のRPG製作会社スクエア・エニックスが「ダンジョン」をこのようにアナログゲームに落とし込むのはとても興味深く勉強になりました。
【はらわたの路地へ】
3×3を舞台に、作り込まれたコンポーネントを使って階層をクリアしていく。おおまかに言えば、引き連れた部隊員(コマ)を配置し、昼と夜のフェイズをクリアしていく。序文にある通り、パズル的に厳しい場面が多い為、説明書とにらめっこしながら何度も繰り返し遊ぶタイプの作品です。
ダンジョンの階層はシンプルながら、そのイラストや世界観を説明するテキストは初期のゲームブックの翻訳を想起させる重厚さがあります。要素も詰め込まれていて、空間、敵、冒険者、探索、脱出、クエスト、蘇りとダンジョンに盛り込める単語がこれでもかと登場します。
本のような装丁の箱を開くと、そのままボードとなる演出は他にない世界観の作り込みは、全て必然で、盛り込んだ要素を余すところなく表現するためのこだわりが詰め込まれた結果でした。
※【RUN ROGUE RUN】は売り切れにより考察できず。
※※【らくらく冒険者の幸せ異世界ライフ】【マッドネスレリクス】はダンジョンは登場しませんでした。
▼B81F: 2023春の『ダンジョン』からの学び。
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