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『夏アニメーション』制作手記

盛夏火 団地演劇Vol.2『夏アニメーション』
という、団地の自宅でやる演劇(全8回)をやりまして、例のごとく記憶の増大&拡散のため制作手記を思い出しつつ書きます。

しかしながら、これは事実を基にしていますがあくまで金内健樹主観のものとなるので必ずしもここに書かれている事全てが正しいとは限りません、という事をあらかじめお知らせしておきます。(最近読んでる、福満しげゆき『僕の小規模な生活』の影響)

文:金内健樹

【A:冬から夏まで】

2019年2月
2/9,10に前作『スパイダーランド』をやりまして、見た人は恐ろしく少なかったのですがそこそこ好評だったため再演をやろうかという話にもなりましたが、僕以外の各人が忙しすぎてそんな話は消え去りました。

2/23
(便宜上)盛夏火を作るきっかけとなった駒形クルミに「8月の盆前後にもう一度団地演劇をやるぞ」という旨をラインしましたが、団地では二度とやりたくないとの事で断られました。

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【B:Post Haruhi Syndrome】

上の画像にも書いてありますが、僕は『涼宮ハルヒの憂鬱』というライトノベルおよびアニメシリーズが高校生の時(2007年くらい)からずっと好きで、
2009年の夏季に、ほぼ同じ話を8週にわたり放送しアニメファンを中心に大炎上した、涼宮ハルヒ第二シリーズ内の「エンドレスエイト」という話群がとにかく大好きでした。

エンドレスエイトを簡単に説明すると(簡単に説明できないんだけど)、
8/17-31の二週間を”ハルヒが夏休み中にやり残した事がある”という理由で15,498回くらい、何回も記憶がリセットされ繰り返していた(ハルヒは本人含め人知れず世界に影響を与えるようなそういう能力があるのです)と知ったSOS団(ハルヒが作った部活みたいな5人からなる集団です)の面々が試行錯誤したりしなかったりした挙句またループしてしまう。最終的には”主人公キョンの宿題をみんなで片付ける事”によってめでたくループを抜けて9月を迎える事ができる。みたいな話です。

2005年に刊行されたライトノベル『涼宮ハルヒの暴走』に収録された原作版「エンドレスエイト」(初出は2003年)だと、”キョンの宿題をみんなで片付ける事によってめでたくループを抜けて9月を迎える事ができる”最終ループのみの視点で書かれた作品だったのに対して、
2009年にアニメ化された際には、6〜8月のうちの連続8週にわたって、

1週目:特にループには気づかない(恐らく本当に1周目)
2〜7週目:ループには気づくがループ脱出にはならず、またやり直しになる
8週目:ループに気づき、ループを脱出して9月を迎えられる

という、毎週ほぼ同じような夏休みに遊びまくる話が繰り返され、ハルヒという一大コンテンツの待ちわびた新シリーズのうちの貴重な話数を同じような話に費やした事や、「手抜きでは?」という諸々の不信感などが主な理由で視聴者は大変困惑し、アニメ史に残る炎上事件として長いこと叩かれ続けているのでした。

まあ、そんなエンドレスエイト(おもに放送版)を、世評に反してなぜ私がこんなに好きかを自分なりに辛うじて考察した連続ツイートがありますので以下をご参照ください。

ここでも挙げていますが、2018年に哲学者の三浦俊彦氏が書いた『エンドレスエイトの驚愕』という、このエンドレスエイト騒動を哲学・アート・人間原理…などの側面から徹底的に考証した哲学書があり、本書を2018年春頃に読んでいた事も『夏アニメーション』をこのタイミングで行う大きな要因となりました。
(この後も本書で書かれていた事の話は多々出てきますし、本劇では相当に参考としました)


【C:10th of 2009】

それと、エンドレスエイトが放送されていた2009年夏というのは自分にとって決して忘れる事のできない季節でもありました。

この年の6〜8月頃、よく二人で遊んでいた同じ大学の同じ部活のWちゃんという女の子がいまして、まあ僕はその子の事が好きでした。
前年12月くらいから、なんとなくかわいいなと思うようになり、冬→春⤴︎初夏…と何回か話したり一緒に居たりするにつれ、この感情は抑えがたいものになっていきました。
当時(今もですが)女性をデート的なものに誘う事などできるわけのない自分でしたが、何かと言い訳や予防線を張りまくった挙句、2009年初夏くらいには偶然を装い2人で出かけられるくらいの仲にはなんとかこぎつけていたのです。

2009年6月19日金曜日、
部活の撮影(映研でした)が終わり、翌日撮影もあるからとかそんな無理やりな理由で、Wちゃんと、もう1人男友達Tくんと3人で、大学から比較的近いうちの実家にお泊りをする事になりました。(当初Wちゃんだけがうちにくる予定でしたが、しきりに「Tくんも呼ぼう」と言われて呼んだので、きっと2人だけで泊まることを警戒され気持ち悪がられていたのでしょう)

そして、深夜零時を過ぎ、2009年6月20日 2:30
TOKYOMXにて、涼宮ハルヒの憂鬱第2期『エンドレスエイトI』の東京圏放送が始まりました。
僕もWちゃんも多少アニオタだった事もあり、確か「ハルヒ見よーぜ〜」くらいのノリで、僕の子供部屋のクソ小さいブラウン管TVで、Tくんも含めエンドレスエイト1週目を見たのでした。
3人で上手いこと縮こまり合ってシングルの狭いベッドでパズルのように寝て、翌朝ベッドの上で3人でダベってる時に足を滑らせた俺は、CDラックに飾ってあったインストのポストロックバンドSaxon Shoreの『Four Months Of Darkness』というデジパックのCDを膝で割ってしまったのです。(よくここまで覚えてるな)

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僕のいた部活や、このTくん含めた3人がSOS団ぽい訳ではまるで無かったのですが、
TVの中で(放送上という意味では)リアルタイムで繰り広げられているSOS団の活動と、好きな子も含めた友達らとそれこそハルヒを一緒に見るような初夏を過ごせている自分が(おもに夏という季節の母集合において)ミョーにリンクしたような気持ちになり、いい気分でした。

そして、いつ終わるかわからない涼宮ハルヒ第2期のエンドレスエイトの放送は続き、それと同時にWちゃんとの夏の日々も過ぎて行きました。

(確か)7月19日(日)
また別のTくんと3人で『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破』を見に行ったり、

7月27日(月)
無理矢理な理由をつけて、部活の納会が行われる前の時間に品川〜浜松町あたりを2人で散歩したりしました。(夕方に夕立ちの後、海に虹が出て綺麗だった)

8月1日(土)
2人で神奈川の某花火大会に行って、昼間から一日中一緒に歩いたりしてました。(今思えばこの時に告白してりゃ良かった)そう、んで確かこの日はうちに(実家ですけど)2人で泊まったんですよ!!別に何をしたってわけではないけど!!
この日は人生でも「こんないい瞬間あるのか!?」な日でして、細かな事から何まで、記憶が妄想に変わってしまったもの、妄想が記憶に置き換えられてしまったもの込みで、この後の私の人生をずっと彩り、呪い続けている日でもあります。
1つ挙げると、昼間に通りを渡る時に彼女のシャツ(小学生の時にワンピースとして着ていたものを普通のシャツの丈で着ているらしい)の胸元から、スカイ・ブルー色のブラジャーが見えて、いわゆる純粋な好意と性的衝動のあいのこみたいなワケわからない最高な気持ちになったとかあります。
いま口に出しても、人生でこんなナンバーガールの歌詞みたいな瞬間あるのかよ!?と思いますよ本当。
この日の花火を見ていた思い出は、1月くらい前に確かディスクユニオン御茶ノ水駅前店で買ったAnimal Collectiveの『Strawberry Jam』収録の『Fireworks』と共に、それこそこの演劇で使うに到るまでに私と共に在り続けます。

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8月2日(日)
夜に、”また別のTくん”と3人で神宮球場まで野球を見に行きました。
信濃町で電車を降りて、創価学会の看板すらこの時の俺にはステキに見えたことをよく覚えています。

8/16(日)
昼間っから船に乗ったり観覧車乗ったり、ディズニーランドの近く行ったりして、、、これってもうどう考えてもデートじゃねーか。
船がコミケやってるビッグサイトの横のとこに一旦停泊して、遠目からコスプレイヤーの後ろ姿が見えた画をよく覚えています。
この日の、延々と夏の夕暮れのなか2人で歩いた感じは、フィッシュマンズの『BABY BLUE』と共に記憶されています。(我ながら気持ちわりー!!)

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8/26(水)深夜
焦りから雑に告白した後フラれました。(詳細は伏す)


と、そうこうやってる間に8月序盤に放送版したエンドレスエイトも無事8回のループ放送を終え、次の「涼宮ハルヒの溜息」という話群へと放送は進んでいました。
(ここらへん、実生活とハルヒの放送の前後が正直曖昧です)

チープすぎて自分でも嫌な考えですが、
「畜生、なんで俺の夏はエンドレスエイト初放送をうちのベッドで3人で見ていた日くらいからまたループしないんだ!?」と本当に気が狂いそうになりました。
素晴らしかった6〜8月中盤までの日々。でも最終的にフラれて終わる。
真夏のマジックを信じて、なんならその中に確かに居たはずの自分なのに、こんなつまらない感じで好きな子にフラれるのか…。

結局Wちゃんとは秋が来てもそれなりに2人で遊んだりはしますが(school food punishmentのライブに2人でいこうとしていたが、2人分預けていたチケットを紛失した彼女の提案で江ノ島まで寿司を食いに行くデートをしたりなんかして、フラれてもわりかしいい関係じゃねーか、と思ったりしました)、年明けくらいから疎遠になり、そのまま現在に至るまで全く顔も見ないし連絡も取らなくなってしまい、今どうしているかは本当に少しも知りません。

私はこの後の自分の人生の2010〜2015年くらいの6,7年間は比喩でなくこの2009年夏の事を思い出す事に費やされ、それだけが原因ではないにせよ殆ど何もせず無駄な時間(自分的に)を過ごすことになりました。人生のうちの貴重な20代前半をですよ!!!

まぁとにかく、このWちゃんとの何日間があった事と、エンドレスエイトがリアルタイム放送で擬似的にエンドレスサマーを放送上に体現していたこの2009年の夏は、自分的に決して忘れる事のできない季節なのです。


そんで!前段階の思い出話がめちゃくちゃ長くなったけど!とにかく!俺は!
この自分自信が体験した夏の想い出(まあ、この2009年以降にもまた別にあったりもする)と、単に視聴者として見ながらも「こんな夏を送れたなら」と、いわゆる00年代萌えアニメに触れた時から狂ったように羨望していた夏のアニメーション作品:涼宮ハルヒ:エンドレスエイト、を自らを媒介としてリンクさせ、最終的にその成果物を自分の人生の記憶とさせる作品を絶対に作らなくては、でもいつ、一体何で作ろう?と、10年来考えていました。

そして2019年春前、
・2018年末から偶然始めたこの盛夏火という演劇団体(団体ではないかも)と、
・三浦俊彦『エンドレスエイトの驚愕』というまさかのエンドレスエイトリバイバル、
・2009年から丁度10年という2019年の夏というタイミング

3つが上手いこと揃ったこの夏に、
自らでエンドレスエイトを再現することで、あのアニメの、ハルヒの、SOS団の、Wちゃんとの2009年夏の、その後にもあった自分の夏の思い出たちの、製品バージョンを作り作品として発表する事で、それら全てを記録として残す&今回の夏自体も新しい思い出とする演劇の企画をやろうと決めたのでした。完全に見切り発車的に。

そしてそのためにはまず自分なりのSOS団員を集める必要があったのです。


【D:505団召集】

2019年2,3月はそれとなく過ぎていきましたが、もし仮に夏にやるとしたら春になったらいよいよ人を探さないと間に合わないぞと思い、四月頭から団員集めを始めました。
といっても気軽に呼べるような役者にそう多く心当たりがあるわけでもないし、友達で役者をやっている人も別のちゃんとした団体の公演があったり、かといって非役者の社会人だったりする人はこんな文化祭の延長みたいなものにスケジュールを割くわけにいかなかったりと、思った以上に人集めは難航しました。

それに今回は「涼宮ハルヒのエンドレスエイトをやる」という大名目があるため、俺なりのSOS団(自分含め最低5人)+α?を男女混合で集める必要がありました。

涼宮ハルヒを少しでも知っている人だったらなんとなくわかるとは思うのですが、いわゆる広義でいう”萌えアニメ”にも分類可能な『涼宮ハルヒの憂鬱』のファンは、主人公であるキョン(高校一年生男子 cv:杉田智和)に多少なりとも自分を投影して、涼宮ハルヒにやれやれ付き合わされる感じを楽しむフシってあると思うんです。
自分もラノベやアニメを見る時には「俺もキョンになってハルヒたちと10代を過ごしてぇー!」と少なからず思っていました。
でも、いつからだったか(おそらく2010年頃には)、僕はキョンというよりもどちらかといえばハルヒ寄りの人間だと気づいたのです。
巻き込まれ側主人公であるキョンならまだしも、一応のカリスマである涼宮ハルヒに自分を投影するなんてどれだけ自意識過剰なんだ…とお思いかもしれませんが、
自分なりの理屈を振りかざして周りの人を無理やり巻き込み、ある種子供じみたベタな遊びの延長のようなものに付き合わせる、それによって自分を含めた世界が面白くなる事を信じている…信じたいと心から願っている涼宮ハルヒはとても他人だとは思えませんでした。
今作『夏アニメーション』をやるとなった時、コンプソンズの金子くんに「たけきさんがハルヒやるんですか!?」と聞かれて「あたりめーだろ、だって俺はハルヒだろ!」と答えたら勢いに関心されたりもしたんで、まあ、強いて言えばその感じ含めハルヒポジションてことでそんな間違ってないはず。言葉が先行し過ぎてる感じとか。ともかく俺はハルヒポジなワケ。

SOS団は男2人女3人の5人いて、
金内健樹=涼宮ハルヒ (ポジション)としてしまったため、
全主要キャラクターの性別を逆転させて、
男3人女2人集める必要がありました。
自分を引いて男女2人ずつ。


まず、盛夏火の前作『スパイダーランド』を見た直後に「たけきさァん…」とニヤニヤ近づいてきて傑作である旨を伝えてくれた、鈴木啓佑くんに4月頭に声をかけました。(基本、自分の周りをイエスマンで固めておきたいんです)

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「出るに決まってるじゃないですか!」と即答され、これで1人。家も近所なので好都合でした。
けいすけくんは白痴だったり暴力人間だったりのキャラクターを演じることが多いので、ハルヒでいうとみくるちゃんかな〜と漠然と考えました。(みくるちゃんはフワフワした巨乳で、ふえぇ…とか、ハルヒにいじめられたりしているザ・萌えキャラです)


4月後半、前作『スパイダーランド』にも出てくれた小野カズマさんが所属する劇団 排気口の『群れたち』という作品を見に行きました。心の片隅にキャスティングの事を考えつつ。
排気口常連役者陣に加え、魅力的な新規客演者が沢山出演していて、その中の「電気屋2」を演じていたNamiさんが印象に残りました。

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印象に残ったと同時に、感想をツイッターに書くとそれをリツイートしてくれたりフォローしてくれたりと何となく交流が生まれたため(あと同じ時期に『愛がなんだ』を見ていた)、5月前半に勢いでDMしてオファーする事にしました。
出演にも好意的で、数日後2人で初対面ながら下北沢の激安居酒屋「晩杯屋」へ飲みに行き、お互いの身の上話をしたりして出演してもらう運びになりました。僕もNamiさんもタトゥー入れてるっていうのも妙に同胞感がありました。

Namiさんはハルヒシリーズの主人公であるキョンというよりも、行動力あったり手回しの効きがやたらいい感じを見ると、古泉(2枚目イケボキャラcv:小野大輔)ポジションかな、と本人にもその場で伝えました。

5月半ば
前年僕が自殺を考えていた時に助けてくれたりもした、五年来の友人である三葉虫(オーディン)みどりちゃんにも、所属劇団「地蔵中毒」との稽古日程の調整をうまいことやってもらって出てもらう事になりました。

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主役のキョンのポジションか…?とも思ったのですが、出演時間を少なめにして稽古参加率を低くしたら出やすいとの事だったので、エクストラキャラである妹(ハルヒシリーズにも主人公キョンの妹というキャラがいるのです)とかだとちょうどいいかな、年下だしとか漠然と考えました。(みどりちゃんは友達界隈だと一人だけ一段階若いので終身名誉妹感あるのです。年下だし)
ちなみにみどりちゃんは私のバンド、夏アニメーション2期メンバーのドラム担当でもあります。


5月後半
鳥居トリィさんという人がいまして、僕とかがやっているネットラジオの横の繋がりで知り合った別のネットラジオの人です。

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鳥居さんはうちのラジオの怜人さんの口車に乗せられて前年の秋頃に名古屋から東京へ越してきて友達になりました。
うちのラジオにゲストで出てもらったり、前作『スパイダーランド』を見に来てくれたりした後くらいから頻繁にうちに泊まりに来るようになり、一緒に賭けスマブラをしたりスーファミのレトロゲーム実況を録ったり深夜に銭湯へ行ったりするような仲になっていました。
ここまで高頻度でうちに泊まりに来る人もなかなか居なかったため、演技経験は無いとの事でしたが弁が立つ人なので出てもらう事にしました。
あまりに僕がしつこく誘うので、就職活動とか色々あったらしいですが、「就職は8月末までは良しとして出演する」と言ってくれました。
セリフ少なそうな、ハルヒで言うところの長門なら練習や演技経験少なくてもいいだろ?との事で。


これで、自分含め、SOS団でいうところの、ハルヒ、みくる、長門、古泉ポジションは揃ったのですが、主人公であるキョン(の女版)がいつまでも決まらずにいました。

前述したクルミちゃんに再びラインしても「仕事の休みが舞台で潰れるのが嫌だ」と言って出ないし、また別にオファーさせて頂いた某芸術家の方も多忙のため出演できないとの事で、深刻にキャスティングの最重要部分は難航していました。

そんななか、5/21、新山さんから突然出演したいとのラインが来ました。
前作を見た人の評判から面白そうと思ったとの事でした。
新山さんは、僕や近所の友達何人かが入ってる集合ラインのメンバーだったりして面識はめちゃめちゃあるのですが、個人間でラインしていたわけでもなく、表向きはSNSをやっていなかったりして(一方的にこちら側を監視はしているそう)、役者探しの時にラインとツイッターを使う私からすると完全な盲点でした。

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そんな彼女が、盛夏火のアカウントで出していた人員募集のツイートを見てなんと声をかけてくれたということです。


この喜びは「涼宮ハルヒの憂鬱I」で、キョンから曜日ごとに髪型が違うことを指摘されたハルヒと同じようなものですよ。
まさか自分の妄言に釣られて向こうからホイホイやって来るような奴がいるなんて!

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こうして自分含め出演者5人+妹1人が揃い、全員の諸々のスケジュールとすり合わせた結果、2019年8月30-32の三日間開催という事になりました。

最初は8/24,25の土日と8/31土曜の2週末三日間とか色々考えたのですが、

・2週末空けるのは厳しいという出演者のスケジュールの関係
・絶対に8月中にやりたいという私のエゴ
・絶対に全8回公演やらなければいけないという私のエゴ

の結果、最後の日曜日を8/32とする事で、なんとか8月最後の金土日3日間に8公演をぶち込むという無理矢理な公演日程に決まりました。

しかも、「外の景色を上手いこと取り入れたいため日の出ているうちに終わらなくてはいけない」という盲信から、夜の回(すなわちソワレ)は無しとして、
11時,14時,17時 という、次の回までの空き時間がほとんど作れないバカみたいなスケジュールとなりました。

先述した『エンドレスエイトの驚愕』は、
物語、表現、プロジェクト、コンセプト…と様々な定位とそれに基づくループの仮説から放送版エンドレスエイトを読み解き…そうするとまた新しい仮説が浮かび上がるような本で、読んでいると哲学門外漢としては頭がグルグルしてくるわけですが、
物語内容だけでなくこの劇そのもののプロジェクト自体を夏のループ作品にする事は絶対だと強固に思ってきました。

コンセプチュアルアートは「という表現を考えてみました」でなく「という表現を実際にやってみました」をもって初めてアートとなるため、実際に8/32を作り出したり、誰に見せるでもない練習含めて私たちのループであるという事全てをもって作品とすることこそが重要でした。

ネットミーム的にSNSで単に「今日は8/32でござい」と発言するような、夏に対して表面的にしか考えていないようなインターネットのつまらない奴とは違い、演劇の物語外である告知や案内文段階で8/32を作り出すくらいに夏とループに対して本気かを示す必要があったのでした。


【E:脚本を書いたりとか Memories of Summer】

パロディ好きの自分は役名とかずっとノリノリで考えていて、配役は以下の通りとなりました。

キョンキョン・・・新山志保
温宮ハルキ(ぬくみやはるき)・・・金内健樹
夜比奈みちる(やひなみちる)・・・鈴木啓佑
新泉三樹(にいずみみつき)・・・Nami
長田優希(ながたゆうき)・・・鳥居トリィ

キョンキョンの妹・・・三葉虫オーディンみどり


5月後半
キャスティングと並行して、先述した三浦俊彦『エンドレスエイトの驚愕』を再読、アニメ版エンドレスエイト連続試聴などを行いつつ、今作をどういう話にするかを考えていきました。
鳥居さんとは「脚本会議」という名目で集まっては賭けスマブラをして、飯を食いに行って、ゲーム実況を撮って、深夜に銭湯に行って、うちに泊まる、みたいなのを何回かやってました。

5月25日
「そろそろタイトルやプロットを考えなくてはいけないぞ」との事で、今度は落合南長崎の鳥居さんの家へ赴いて会議をしましたが、鳥居さんがNintendo SwitchのDLコンテンツで買った『オーバークック』というキッチンのバイトを延々やらされるみたいなゲームを二人で遊んでいました。

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ラチがあかないので「晩飯の間に絶対タイトルを決めよう」と決心して近所の家系ラーメン屋に行き、二人で考えることに。

私が挙げてきた仮タイトルは

・10th of 2009(先述した2009年への思い入れなどもあって)
・AUGUSTUGUA(回文っぽくなっててループ感を表現している)
・盛夏火(セルフタイトルだとかっこいい)
など。

迷いに迷い、スタ丼を食った私は小麦抜き療法を行なっていたにも関わらず追加で家系ラーメンを頼んでしまいましたが、なんかのタイミングでハッと気づき、
僕がネットネームとして使っている『夏アニメーション』こそが最適なのではないかという話になりました。(これまた僕にとってセルフタイトルでもあります)

その時の鳥居さんが取ったメモ↓

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僕が数年前から夏アニメーションと名乗りだしたのもひとえに2009年のエンドレスエイトとその時の自分に対するオマージュであり、特に中身は無いけど語感と勢いで付けたものだったので、ここで改めて作品タイトルとする事で意味をアニメイト(生命を与える)できるとも考えたのです。

そんなこんなでフライヤーとかも作って、(プリントパックへ印刷の入稿がうまくできずに、結局紙のフライヤーは金だけ払って作れなかった)

1フライヤー表

1フライヤー裏


告知して、6/15に顔合わせを行い、脚本を書くのと練習をするという段階へ行きました。


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けいすけくんが出ているコンプソンズに特報フライヤーの折り込みに行きました。

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[特報]夏アニメーション


7/10
小屋入り(うちの団地に)して、書いた分の読み合わせをテキトーにやった気がします。

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7/18
京都アニメーションへの放火テロ事件が起きて、こんなくだらないパロディを今書いていていいものかと落ち込みました。ランティス祭りで本家SOS団も再集結し、エンドレスエイト10周年というタイミングでの事件だというのも悲しかったです。起きたことが、こちらが意見したり創作物で対抗するような事では到底なすすべもないレベルに酷い事件だったため、事件とは距離を置いて脚本作りを進める事にしました。

7/19
『天気の子』を見に行き、「こんなものを見たら素人演劇なんて敵う筈がない」と圧倒され、新宿から代々木〜原宿〜代々木公園あたりを一人で歩いてしまいます。(当座組みではみどりちゃん以外全員『天気の子』は見ています)

7/20
近所の祖師ヶ谷大蔵の神社でやっている盆踊り(自民党後援で、地元の右翼団体なども協力している)に行きます。
当座組みからは鳥居さんと僕、他にはコンプソンズの細井じゅん君や、カネタリク、カネタガク、元凶さんが参加。

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鳥居さんの顔というか骨格って、フィッシュマンズの佐藤伸治と同じ系統だよね。

300円のエアガンくじで最下位の拳銃を当てた僕は、『天気の子』を前日に見たというのもあり大喜びでした。

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7/25
うちで練習をした後、翌日も練習だったため鳥居さんが泊まっていった気がします。

7/26
朝に、数年前のPFFグランプリを獲った岩切一空『花に嵐』をネットで購入して見た後、鳥居さんとココス祖師ヶ谷大蔵店へ行き、主に僕が脚本を書く作業をします(全然捗らなかった)。その後は家で練習。

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僕のやってるネットラジオの山田くんに誘われ、高円寺の有名な盆踊りへ。山田のミュージシャン友達もたくさん来る。
また別のネットラジオ友達:怜人さんの留守中に猫の世話を任された鳥居さんとタカシマくん(この人もネットラジオ友達)も一緒にやって来て、みんなで盆踊りしました。

7/29
絶対に脚本初稿を8月に入る前に完成させると豪語してしまったため、苦しんでいます。
そんな中少人数で練習。
終わらない日常モノの大クラシックとして参考にして安易なオマージュも重ねた『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』を部屋で連続再生し、座組みメンバーにも延々と見せて「これを俺たちはやらなくてはいけないんだ!」と力説しました。そのためこの写真のけいすけには『ビューティフルドリーマー』のレコードを持たせています。

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このレコードは本番でも目配せとして客席側に飾りました。案の定目ざといサブカル野郎達が指摘してくれて嬉しかった。
新山さんが持っているのはこれまたループものの傑作『四畳半神話大系』の BDBox。

7/31
脚本の前半は『エンドレスエイト』のパロディをやればよかったものの、中盤から色々と話を飛躍させなくてはいけなかったのですが、ふんわりとしたアイデアのまま進めていたため、7月後半は脚本が書けなくて…書けてもとてもダサくて、自分の能力の無さに本当に苦しんでいました。
あまりに思いつめすぎて、「最終回の最後では俺が3Fのベランダから飛び降りる」と書いて、30分間くらいどうすれば足を折らずに飛び降りれるかを考えていました。(冗談に聞こえるかもしれませんが本気で考えたんです)
誰かが先回りしてマットを敷く?(『スリー・ビルボード』のメイキングで見た)、5点着地?、ベランダの淵にぶら下がって2Fの部屋に降りる?
ですが、半身不随になる恐れもあったため結局この案は無しとなりました。

何かノルマを課さないと期限内に脚本を(どんなにクソでも)書き上げる事はできないと考えた僕は、集合ラインで「8/1 0:00までに脚本が書き終わらなかったら、実家に行ってお母さんを殴って帰ってくる」と宣言しました。「書き終わらなかったら死ぬわ!」とかだと「はいはい、またいつものやつね」となってしまうので、なんとかお母さんを殴らなくて済むように本気でスパートをかけて、多少、いや結構、無理がある、つまらない展開だとしても書き進め、23:58くらいに書き終わり、本当に0:00ちょうどに集合ラインに『夏アニメーション初稿』をアップロードし、鳥居さんに驚かれました。お母さんを殴らずに済んで本当によかったです。

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505団5人全員揃ったのでSOS団オマージュ写真を撮る。

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僕の誕生日で、本当は全員に祝って欲しかったんですけど、新山さんはマーライオン(友達のプロミュージシャンです)の別ユニットのサポートとがあったり等、みんな何かと予定があり、Namiさんただ一人に祝ってもらいました。

持病 多め 担当で

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気を利かせて「おたんじょうびおめでとう」幕やパーティ帽子を買って来てくれて、出生時刻の18:10には、全裸になった僕が水を張った風呂に入って息を止め(子宮のメタファー)、時報を聞いたNamiさんがクラッカーをぶちまけ、水から上がる(出生のメタファー)、といった祝い方をしてもらいました。多分死ぬまで忘れない、いい誕生日の瞬間です。

その後はけいすけ氏も合流し、「誕生日なら焼肉だろ!」との事で3人で牛角へ。
招集をかけたのは僕だったので、「ホビット族は誕生日のやつがもてなす」というしきたりに則り、多めに金を払いました。

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その後はけいすけの幼馴染でもあるカネタリクも合流し、祖師谷公園(一家惨殺事件があった近くの公園です)でみんなで花火をしました。

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ハルヒっぽい髪型にするべく下北沢に縮毛強制をかけに行きました。

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誕生日にけいすけが買って来てくれた発泡酒を飲みながら、フランクフルトを大量に茹でで、誕生日アフターパーティみたいなやつをやりました。(この時の僕は、市川実日子の顔真似です)

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僕は稲川淳二の階段ライブに行きました。

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家に幕を張ったりするためのロープを打ったりする。Namiさんのサバイバル能力が遺憾無く発揮されました。こういうとこ古泉っぽい!

505団全員が揃ったので、またSOS団パロ写真を撮りました。
これがやりたいがためにバンドや演劇などをやっています。(コーネリアスバンドもよくやってるよね)

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家のでかい家具、本棚とかを両親に車で運び出してもらいました。お母さん殴ることにならなくて本当によかった。

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みんなのチョイスするサマーソングのプレイリストを作りたかったので、全員に3曲ずつ提出することを強要しました。


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劇中で使う映像の撮影をしました。実際に蝉をとったり(Namiさんがやたら上手い)、自転車に二人乗りしたり、団地の階段の一番上でアイス食ったり・・・。

(けいすけは親戚の初盆に参加したためヒゲがなくなっている)

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この日の夜も花火してるとこの映像撮影。

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この劇の冒頭には2台自転車が出てくる予定だったのですが、ベランダにはとても2台を置くスペースは無いと判明し、折りたたみ自転車が1台だとしても後ろのサドルがないと二人乗りは厳しいと判明。
劇で使える小さめの自転車を買うべく自転車屋を巡ろうとするが、乗っていた自転車がこのタイミングでとても漕げないレベルにパンクする。

推薦コメントをお願いしていたhocoten氏が稽古場に遊びに来ました。
本番10日前のこの段階でセリフ覚えや演技はグッダグダだったのですが、海岸のシーンの体位指導を受けました。

謎のインスタ映え集合写真も。

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出はけなどの動きも含めて練習すると、ステージ裏(ベランダや風呂場など)で人がバッティングしまくる事が判明。そもそも家なんかで演劇はやるべきではないのでは?と切羽詰った僕は、みんなが帰った後に深夜延々と香盤表を作りました。

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数日前、自転車がパンクした時に空気を入れてくれた芦花公園の自転車屋さんにあった折りたたみ自転車を買いに行きました。めちゃくちゃ親切にしてくれたので、2万5千円くらいしたが購入。このせいで小道具代が一気にかさむ。

夜の練習で前日作った「完璧な香盤表」を1シーンずつ説明するも、みんな「?」って感じに。そりゃそうだ。

「まあ、追い追いやってくうちに把握しましょう」みたいな感じでたしなめられる。

ではけのイメージもついて練習のノリが良かったため、練習を早々に切り上げ、僕、新山、けいすけ、鳥居の4人でカラオケに行く。
盛り上がりすぎて鳥居さんは終電を逃し(tofubeatsの『River』を歌いたいがために駅にダッシュするのを諦めた)、二人で久しぶりに銭湯に行きうちに泊まりました。

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8/25
近所で自宅をオープンスペースとしてイベントを行なったりしている、ぢるちゃん(前作『スパイダーランド 』を見に来てくれて友達になった)から客席用クッションを借りるついでに、深夜にみんなで鳥貴族へ。
ぢるちゃんに加え、お馴染みコンプソンズ金子くんや、排気口みーやんの姿も。

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Namiさんと、Namiさんちに泊まることになったみーやんと3人で途中まで一緒に帰る。


8/26
これまた推薦コメントを頼んでいた、東京にこにこちゃんの萩谷つぐとよ氏が稽古に来る。
グダグダな俺の演出を見て、結構まともな演出とアドバイスをつけてくれる。トホホ。

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これまたコンプソンズ金子くんも合流し、みんなで日高屋へ晩飯を食いに行くと、『オルギア視聴覚室2』(僕はその時コンプソンズの非常勤メンバーとして出ました)にも出演していた、レティクル座の阿部さんらに偶然出くわす。それを気にもせずまた別の劇団の悪口を大声で言う金子。


8/27
練習。盆踊りとかしたっけ。
みどりちゃんが「夏アニメーション」ってタイトル幕を作って来てくれる。

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8/28
昼間っから暇な僕とNamiさんで、ちょっと離れたコジマにプリンタのインクを買いに行き(当日パンフや物販用台本の印刷に使うのです)、コジマの横にあるサイゼリヤでNamiさんの後半の膨大なセリフの練習に付き合う。僕が分量を気にせず書いてしまったせいで苦しむ姿に申し訳なくなる。サイゼリヤの間違い探しもクリアする。

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夜はみんな揃って練習。


8/29
本番前日ということでメイン5人は午後イチに集合して昼食を食べることに。
Namiさんが寝坊したので4人で近所のしゃぶしゃぶ屋:ともえ食堂へ。
Namiさんはクレープか何かを一人で食べたらしい。

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夜に通してみる。


と、ここまで日記みたいなのを書いて8/30から本番となるのですが、
ここで脚本のシーン別解説をします。
ブログの構成下手かよ!でも、どこに入れていいのかわからなかったのでここで。

ちなみに脚本はこちらから¥500で読めます。

脚本と照らし合わせながらだとより解説が楽しめます。
物販で¥500で売ってしまった以上、noteのテキスト版も¥500で売るのです。


【X:脚本完全解説】

[客入れ]
盛夏火団地演劇は、なるべく日常から劇に/劇から日常にシームレスに出入りして欲しい、劇と日常がお互いに影響や残滓を与え合ってほしいという願いのもと作られているので、お客さんは団地の部屋に入ると、既に部屋でダラダラしているキョンキョン(新山)の姿を見せ続けられる事になります。
客の案内をするのは妹(みどりちゃん)で、劇中の展開でもそうですが彼女は劇と現実の橋渡し的な存在なのです。そのため客入れや前説を一人でこなし、演じる側スペースと客席側スペースを超えて、客席側にある日めくりカレンダーを破ったりします。


[1.キョンキョンの家]
キョンキョンの家に505団のハルキらがやってくるシーン。
電話のくだりは『エンドレスエイト』冒頭を完全になぞっていますが、本作ではまず団地の部屋で話を進めなくてはいけないため、一旦団地の部屋に全員集合してくだらない会話を繰り広げます。
会話の内容がナンセンスで寒すぎてつまらなくて(延々水道料金の話とかをする)、自分で書いといてなんですが、最後の回まで全て毎回心が折れそうでした。
スマブラ(N64版)がやたらフィーチャーされるのは僕、と鳥居さん、やうちに遊びに来る人たちのこの部屋での日常だからです。


[2.プール駐輪場]
団地演劇1『スパイダーランド 』は、本当に団地のこの部屋でしか物語が展開されない話でしたが、『夏アニメーション』は夏休みモノなので、ただの団地の部屋のステージが色んな場所として見立てられます。僕は演劇の「場所見立て」なんて客の想像力に依存した欺瞞じゃん!と思ってなるべくやりたくなかったのですが、2作目にして早くもルールを破ります。
そのため、ただの部屋が別の場所に見立てられるファーストシーンでまず境界をぶっ壊す必要があり、自転車で勢いよくベランダ側から部屋に入って来る事で、「はい!ここは外!」と、まるでピアス穴や性器の強引な拡張のような事をすると決めていました。
あと、(普通の部屋に)自転車が出て来る演劇は傑作が多いとか誰か言ってた気がしたし。
ヌトミックの額田くんの短編でも部屋に自転車出て来てたし。
あと、オチで自転車使うのはよくあるかもだけど、ファーストシーンで使えば勢いつくかなって。

前シーンでキョンキョンが出発ぎわに張った「夏アニメーション」のタイトル幕を自転車で突き破り、そこにCut Copyというエレクトロバンドの『Unforgettable Season』という曲のサビが重なります。この曲はそれこそ2009年によく聞いていた一曲で、自分的に夏といえば真っ先に浮かぶ曲です。イントロのベースラインで胸がキューとなります。コレが「夏のアレ」です。


あと、昔好きな子とCut Copyの話になった時に、この曲が好きって事を説明した思い出もあります。(その子は『Lights And Music』が好きと言ってた)


[3.市民プール]
『エンドレスエイト』と同じ流れで3シーン目は市民プールです。やっぱり女性メンバーもいるし、水着シーンはこの劇に必須です。
水着合わせをした時に、Namiさんの持ってる水着が全てエロすぎたため、全体のバランスを取るためにハルキも競泳用ブーメランパンツに変更しました。

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Namiさんと私は刺青が入っていて、キョンキョンの新山さんもなぜかこの夏、身体中にタトゥーシールが入っていたため、市民プールにいる5人中3人がtatooありというなんだかよくわからない集団になっています。(服を着ている長田も、のちの展開で身体中に刺青的なものが入っているとわかるため、みちる以外の全員がtatooありともいえます)
長田が日光に弱く着衣のまま日傘をさしているのは鳥居さん本人にかぶせました。

後悔しているのが、ベランダに用意した小さいプールに水を張らなかった事です。足とかがホコリでドロドロになったり、その後の水の処理の面倒さを極力無くすため諦めましたが、エアー(無いものをあるフリで演技する事、空のお皿から食べ物を食べるフリをしたり)が大嫌いなので、ここは本当に後悔しています。この一点だけでもこの劇は駄作と言っていいくらいの防ごうと思えば防げた妥協点だと思います。

演出的・脚本的にとても上手いとはいえませんが、ループ/デジャヴ感ある会話がなされます。

ここで使っているカーネーションの『市民プール』という曲はSpotifyで「市民プール」で検索したら出てきて、あまりにピッタリなのでインストっぽく編集して使いました。


[4.プール帰り道]
水着から服を着る猶予のために設けられた特にそこまで必要のないシーンです。
ここでもだめ押しで自転車が登場します。

[5.キョンキョンの家]
505団という、ハルキが考えたアレなネーミングと物語次元階層という本作の裏テーマを無理矢理に絡めた説明を考えました。
それと、夏中にしなきゃいけない事をみんなでアレコレ言い合う大変楽しいシーンです。

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長田の流しそうめん、新泉のイルカと泳ぐ、吊り橋渡り、台風中継ごっこなどは脚本書く段階で実際に彼らからアイデアを募ったら発案されたためそのまま採用して本人に言わせています。

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本番では、妹(みどりちゃん)が手持ち無沙汰なのをいい事になぜか勝手にキュウリやタクアンを食っているという自己演出をぶち込み、演者の笑いと困惑を誘いました。


[6.デパート]
本当は全員浴衣になりたい、でも全員が着替えるような猶予はない、じゃあ誰が浴衣になるべきか・・・?というのを考えた挙句、「結局浴衣を買わない」という選択をするという裏幕事情のため以外に本当に何の意味もないシーンです。だからこそ好きです。

新泉の「これは別に姫カットじゃないですけどね・・・」というツッコミ、キョンキョンの怒気を込めた「はい」がすごく気に入ってます。
前後に着替える猶予のある妹が甚平を、実際に浴衣を持っていた新泉(Nami)が浴衣を着るというはこびになっています。


[7.盆踊り会場]
盆踊りを踊ろうにも、
・振動で音飛びがひどい
・盆踊り曲のレパートリーが少ない
というシーンです。

これは僕の実体験で、4年くらい前に成城学園前と仙川の中間くらいにある集合住宅の公園で行われた超ローカルな盆踊りにY太くんというイケメンの友達と行った経験が元になっています。
近所に張られていた張り紙を見て20代中盤の男二人が、幼児〜小中学生とその保護者しかいないような盆踊りに参加して数時間踊り続けたたため、とても怪しげな目で見られました。
この盆踊りでは、振動に弱くて音飛びしまくるコンポ+操作ミスで何度も同じ曲の頭ばかりを流す婆さん+4曲しかないレパートリー(確か、『ドラえもん音頭』『炭坑節』『東京音頭』『大東京音頭』)という、超ローファイ盆踊りで、一生の思い出に残っています。
本作ではさらにひどく、結局『ドラえもん音頭』だけしか流れないし音飛びもひどい、という風にしています。(アナウンスは駒形クルミに頼んで送ってもらいました)

この劇を見に来てくれたY太くんが「あの盆踊りのシーンってあの時一緒に行ったやつだよな!」と気づいてくれてめちゃくちゃ嬉しかったです。
ちなみに詳しくは言いませんが、この劇では「まさかそこもか!?」と言えるような部分も実は実体験が相当な礎になっていたりもします。恥ずかしいので内緒だけどね!


[8.河原]
部屋の中で花火をやろうとして、結局ベランダでやるというシーンです。
部屋の中で火をつけようとしてヒヤヒヤさせられる、劇場では使えない火をベランダで使う(花火の匂いもする)、本物の風景が背後に広がるベランダに立ちすくむとなんかいい感じになる、と、団地演劇のいいところを安直にやったらいろんな人から評価されたシーンです。言い方悪いけど、そりゃあ実際の部屋や風景の中でこういう事やるんだから相対的になんかよく見えるってワケで、脚本的・演出的努力は全然していません。これだから本物志向実景演劇はチョロくて最高です。


[9.夏のリストをこなしていく]
よくあるリミテッド・アニメで、静止画をスクロールしたりズームしたりして「こういうような日々が過ぎて行きました」みたいな演出がなされるのってあると思いますけど、ああいう感じをやりたかったです。丁度話の真ん中あたりで、この劇の象徴的なシーンです。
5人が部屋をグルグル回りながら夏にやるべき事を一気にこなしていきます。
でかい筒で実際に流しそうめんを流してキョンキョンに食わせるところや、5人全員で魚を釣り上げるところが気に入ってます。

ここで大江千里の『夏の決心』を使うのはさすがにベタすぎるかと躊躇がありましたが、みんなに相談すると「全然めちゃくちゃいいじゃん!」との事なので王道中の王道ですが使っちゃいました。


[10.天体観測]
これは『エンドレスエイト』にもあったシーンですが、前段階の設定(みくるは未来人で、長門は宇宙人で・・・など)を視聴者が共有しているハルヒと違い、単発作品である『夏アニメーション』では設定の前情報の無い物語を後半で突飛な方向に持っていくには色々とハードルがありました。(そのためここで脚本の執筆も一時止まった)
『エンドレスエイト』では星空や火星の観察でしたが、本作では、謎や陰謀の多いとされる月をフィーチャーし、この劇中世界とも絡めたような「月の裏側」についてのくだらない問答を繰り広げます。Netflixドキュメンタリー『ビハインド・ザ・カーブ』を見たというのもあり、地球平面説や陰謀論などのワードが出て来ます。

月はプロジェクターで投影していて、このシーンの後半ではハルキの妄想の中のこれから旅行で行くビーチの映像が色々投影され、最終的には妄想から実際に旅行中のビーチでの星空へとシームレスに移り変わります。

旅行とか合宿にいく前って、なんとなく宿とか旅行先の景色を勝手に妄想したりして、実際に行くと妄想とは全然かけ離れている事ってよくあると思うんですけど、あの感覚を表現したかったです。


[11.夜の浜辺]
脚本に行き詰まったのでとりあえず危うい胸キュンロマンスをノリノリで書きました。自分が演じるっていうのに・・・。
何を話させたらいいもんかと悩んだ挙句、言葉が先行して意味が曖昧だった「夏アニメーション」というこのタイトルを私ハルキ自らキョンキョン新山に説明するシーンになりました。
実際、ここで言語化する事で私が5年近く使ってきた無意味ワード「夏アニメーション」をようやく一応の定義づけをする事ができてよかったと思ってます。
「テーマ言ってるぜ!」感も含め、基本的に演技のできない僕が自分の言葉で熱弁する事でシュチュエーションも相まってノリノリで演じられました。
「浜辺で一緒にハミガキ」は僕の想像しうる最高にロマンティックなシュチュエーションでもあるので、こんなもんを練習で何回も+人前で本番8回もやれて至福でした。
このシーンも見た人からやたら好評で大変嬉しかったです。

「深夜に外で一緒に歩いている時の独特の発声法」をするよう、自分と新山氏に言い聞かせ続けましたが、多分二人ともセリフに精一杯でできてなかったような気がします笑

脳内のロマンティックエンジン(by.森見登美彦)全開で書いたため、言葉のトーンから何からしつこく要求しました。(「さあね」の発声方法とか)

途中、近くで偶然(?)二人の目が合うシーンがあるのですが、これは私の敬愛する、天野こずえ『ARIA』のお月見の日に二人で誤って古井戸に落ちてしまう回での藍華ちゃんとアルくんの「・・・近いのね」の距離感でやるよう、実際に心の中でも(・・・近いのね)と言うように新山氏に伝えました。

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共演者に対して書いたやつ本人がこういう胸キュンシーンを演じるという大罪に苦しみつつも毎回死ぬほどときめいて興奮していました。(なぜなら自分の一番のときめきを書いたから・・・)
たぶんこの罪だけで私は地獄に行きます。


[12.地元の駅の改札前]
なんかギクシャクしてしまったキョンキョンとハルキ、ノリノリのみちる、みたいなシーンです。
ここから物語は”転”へと転がり込みます。
終始無口だった長田の謎が浮かび上がりますが、私のアイデア不足のせいでなんじゃそりゃ、なよくわからないムチャな設定が明らかになります。


[13.公園]
ハルキをのぞく4人が物語の真相を考察する長いシーンです。

『涼宮ハルヒ』シリーズでは、エンドレスエイトに到るまでの『憂鬱I-VI』あたりで既に、

・ハルヒには神的な力がある
・宇宙人、未来人、超能力者が部員にいる
(・名言はされないが、『ハルヒシリーズ』自体が創作物である事に多少は自覚的)

という前提が共有された上での、エンドレスエイトの「夏休みがループしている」というビックリでした。
そのため、みくるちゃんが唐突に「未来と連絡がつかなくなりました〜」と言ってもいいし、長門がループを全て記憶していてもいいわけです。

ですが『夏アニメーション』は脚本の現時点だと「男女5人が夏休みに遊んでいる」という情報以外は特にない単発作品なので、大オチに向かう前の問題提起シーンで色々とこの話のリアリティを提示する必要がありました。

提示しなくていけない要素は次の通り

・登場人物たちのキャラ設定の甘さ(名前、年齢、職業などが当人たちにも不明である)
・時間設定の曖昧さ(日付や年月がわからない)
・この話は現実より何段階か下の(それこそ劇などの)ストーリーである
・夏に遊ぶのをループしている
・そのループの総計時間は10年ほどになる
・その総計時間による登場人物(もしくは演者)への年齢経過などの影響は不明
・誰かのせいでループが起こっている
(劇中ではスルーされるが ・この物語の作者は誰か)

つまらない説明は全部ここで一気にバーーっと済ませちゃいたかったため、むちゃくちゃ長く回りくどくわかりづらい、例えだらけの推理がなされます。
自分でも書いててワケがわからなくなってきましたし、ベタベタな「メタ要素」(この話は、お話である!っていうアレとか)の連続にちょっとどうかなとも思いましたが、無理やり書きました。
推理役である新泉の負担がとにかくデカく、4人ともそれぞれに苦しんでいたので、「こんな無教養な俺が書いた説明セリフを延々と演じさせて申し訳ないな〜唯一俺出ないシーンなのになー」と裏で思っていました。


[14.キョンキョンの家]
このループの原因が妹であるとわかるシーンです。
正確には、ハルキの願望を叶える願望機としての役割が妹≒三葉虫みどりというようなワケです。妹が物語外側との橋渡しなのです。
これは先述した『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』における夢邪気というキャラクターの設定と、謎の少女の服装(白い帽子に白いワンピース、実はラムちゃん)をそのまま使いました。

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逆再生、冒頭に戻る、映像を使う、ループが重なり乱れる、など、お世辞にも上手いとは言えない演出で無理矢理話を進めました。
まあ、真実に近付きすぎた結果、ハルキの情緒不安定さとともに夏のループがバグる感じのアレです。ただ、演出がいいのが思い浮かばなかったため全然伝わってないと思います。これは私の能力とセンスオブワンダーの欠如のせいです。


[15.時の最果て]
混乱とループを極めた時間は、そりゃあ最終的には時の最果てにいくもんです。
『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』、スティーブンキングの『ランゴリアーズ』などの要素をそのまんま使っています。ランゴリアーズは実際にランゴリアーズとして出てきます。長田(鳥居さん)には『ランゴリアーズ』におけるトゥミーさん(CV:大塚芳忠)の発狂シーンをやってくれと頼みました。


バットで撃退とかも、Mナイトシャマラン『サイン』の丸コピペです。もう執筆の想像力が無くなっていたんでしょうね。お母さんを殴らないために。

抽象空間なので、「夏を終わらせたくないハルキ=たけきを無理矢理説得する」というのの要素そのまま出しみたいなのをやろうと当初から思っていました。
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツオトナ帝国の逆襲』にならい、ジョンソン&ジョンソンのボディクリームやキンカンの匂いで夏をふりまきみんなを洗脳しようとします。
ジョンソン&ジョンソンの匂いは、うちの実家から5分のグリーンプラザ成城という2000年まであって今は高級マンションになってしまった金持ち向け複合施設のプールの更衣室と同じ匂いのため、僕にとっての夏の匂いなのです。

最終的に月が落ちてきて、ハルキを懐柔するべくキョンキョンが金木犀の匂いを身にまとい、やけくそでハルキを抱きしめます。


[16a.夏アニメーションI-VII]
『エンドレスエイト』にならい、7回公演目まではループを脱出できず再び夏へと戻る結末です。

キョンキョンが躊躇しているうちに妹がベランダを開けて勢いよく入ってきて、強制的に時間を最初の市民プールへ行く前あたりに戻して物語はぼんやりと終わり・・・いや、終わらずに次の回へと持ち越されます。妹が再びめくる客席側の日めくりカレンダーの日付にも注目です。

お客さんとの面会などもなるべくそのままのテンションでぬるっと行うように勤めました。
ここで流れるのはもちろんAnimal Collectiveの『Fireworks』をループ編集した音源です。


【E2:Endless Summer`s (Never) End】

話が戻りまして、本番の3日間です。

8/30
朝に集合して、1回通しを行いました。

テンションがないのが良くないと思ったので、テンションを上げるため1回目の開場を行う前に強制的に「おばけの救急車」を全員に踊らせました。

キョンキョンと妹以外の4人は始まるまで上で待機。

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2回本番を終えると、時間を間違えた小野カズマさん(前作『スパイダーランド 』に出てくれた)が遅れてやってきて、丸出しになった小道具などを見て「ああ、これは『うる星やつら』の・・・」とか、どんどん元ネタを指摘し始めたため、「こいつめ」と思いつつニヤリとしました。

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この後は衣装を洗濯して、みんなでコインランドリーの乾燥機にかけに行って、中華料理屋に飲みに行きました。

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8/31
二日目。11時からだったのでまさに駆け抜けました。
夕方には8/31らしくこんな写真を撮ったり。

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この日も衣装を洗濯機にかけてコインランドリーの乾燥機に。
東京にこにこちゃんの萩谷氏とex.東京にこにこちゃんの武内くんも一緒にまた別の中華料理屋へ行きました。

翌8/32の最終回では、演出の都合上私ハルキはそのままいなくなって、最低その日1日は打ち上げなども含め誰の前にも姿を見せてはいけないという事に(自分で)してしまいました。
中華料理屋の席で新山さんが「本当に?本当にフリとかじゃなく打ち上げも来ないの?」と聞いてきたので「俺だって行きたいよ!・・・でも・・・!」と言い、つぐとよ氏は上手いこと芸術家論みたいなもんに絡めて心情を説明してくれました。馬鹿にしつつ。
物語定位以上のプロジェクト定位においても、自分は秋へは行かずこの夏とともにバーンアウトするつもりだったので、当初からの決まりごとではあったのですが、新山さんが「そんな寂しい事ってある!?」とか言った時は、全然平気なフリをしていつつも今にも泣き出しそうでした。
この極限の寂しさを俺が噛みしめる事含めての作品なんだ・・・!とか言いつつ、実際にそうなる日が近づくと本当に気が狂いそうでした。まあその気の狂いを誘発させるためでもあったんだけど、にしても・・・。

盛夏火は、特に今回は、出る人:特に俺、が一番夏をループして一番エモくなるために作っているフシがあり、お客さんにはその片鱗を見てもらって、「それ以外のあいつらの時間」に想いを馳せてもらえたらいいなみたいなとこがあるため、こういう感じになっているのです。
「じゃあ今夜がたけきさんの最後の晩餐なんだね」とか誰かが言って、自分の生前葬をしているような気分になりました。

中華料理屋を出ると、鳥居さんと武内くんは帰り、残った人にまたもや金子くんも加わりカラオケに行きました。

Namiさんの歌う『オラはにんきもの』が矢島晶子のしんのすけボイスそのままですごかった。


【F:8月32日】

最終日ですが、この日も11,14,17時という過密スケジュールでした。
17時の最終回 夏アニメーションVIIIのみラストシーンが違うため、合間の時間に何回かそこの部分だけ練習しました。
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[16b.夏アニメーションVIII]
超強力金木犀香水の匂いを身に纏ったキョンキョンがハルキを後ろから抱きしめます。
なんか、自分の書く話、自分が抱きしめられるパターンが多いと思います。多分潜在的に抱きしめられたいんでしょうね。
昔『崖の上のポニョ』で、宮崎駿が自分を投影した宗介を自分の母を投影したトキさんに抱きとめさせるシーン描いて人生の清算を行っているのを『ポニョはこうして生まれた』というドキュメンタリーで見たのの影響とかもあると思います。

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夏アニメーションVIIIでは、キョンキョンがハルキに「アイラブユー」をついに言えるという展開になっています。
"後ろから抱きしめて「アイラブユー」を囁く"というのは本家『エンドレスエイト』で古泉がキョンに提案してすぐに却下されるループ脱出方法の一つです。

先述した通り単発作品の『夏アニメーション』がそのままエンドレスエイトをなぞるだけでは作品としてまとまりが悪かったため、涼宮ハルヒシリーズの世界観設定を説明し、それ単体でも作品としてなり立てるハルヒシリーズ冒頭6話分の『涼宮ハルヒの憂鬱I-VI』のような、日常セカイ系ラブコメ作品的小完結が必要だと考えました。
『涼宮ハルヒの憂鬱VI』ラストでは、閉鎖空間(ハルヒの不安定により発生し、そのままだと現実世界を飲み込んでしまう空間)に閉じ込められたキョンがハルヒに、実はポニーテール萌えである事、そしてポニーテール状態のハルヒに萌えていた事を伝えキスをする事で通常世界に帰ってきます。
これは決して、キョンのハルヒに対する愛が溢れてキスをしたという(だけの)訳ではなく、長門や古泉から送られてくる脱出のヒントだったり、世界崩壊の急を要しての勢いなど諸々あってこその困惑とエモーションに満ち溢れたキスシーンとなっていると、私は捉えています。

そのため、『夏アニメーションVIII』ラストにおけるキョンキョンの「アイラブユー!」も、別にキョンキョンがハルキのことが本当は好きだったとかそういうわけでは別になくて、半ばやけくその勢いと、文字通りハルキをなんとか懐柔して秋に連れて行くための演技だったと言えます。
(その"演技"を自分に対して、知り合いの女性に俺はやらせてた訳ですね。これは絶対に地獄に落ちますね)

そしてハルキは、それまでは友達以上くらいの関係をとってきたキョンキョンとの急展開の気まずさに居ても立ってもいられずそのまま逃げ出し、夏と共に消え去り、ほかの4人はハルキの記憶をなくして無事秋を迎えるけど、なんとなく夏に色々あったような気がする。というベタな感じで終わります。

これは、岡田斗司夫氏などが度々例にあげる、『Gu-Guガンモ』最終回や『サイレントメビウス』『君の名は。』ラストにおける、
「記憶はなくしているけど心は覚えていてなぜか涙が溢れてくる」という王道な感動パターンです。

まあ、いきなりこれを見せられた人間が感動するのかといったらそんなことはないと思いますが、いかんせん盛夏火は自分(とできればほかの出演者)が一番気持ちよく作品の核を味わうためにやっているフシもあるため、いなくなって忘れられてしまった僕が一番エモくなれるよう作ってあります。本当、私欲満たしと(僕がいなくなって悲しんで欲しいという)ナルシシズムもいいとこですね。
あと、いつまでも夏休みという蜜月を繰り返し続けて、その先の秋や老いや関係性の変化は迎えたくないという、まさに『ビューティフル・ドリーマー』のラムちゃん的な普遍的なわがままな願いをせめて作品内だけでも自分が叶えたかったというのもあります。(でもそのせいでもっと寂しい想いをする訳だけど笑)

脚本のト書きにもありますが、秋へ飛び越えられなかった私ハルキは、その後ラストシーンや終演後面会・物販、打ち上げにも決して姿を見せないという風にしてあります。

にしても、(I-VII回目も似たような同じセリフあるけど)キョンキョンと新泉の「きっと、夏のせい・・・ですよ⭐︎」-「あーもう、うるさい!」の、劇中でも行われたやりとりで終わる感じ、マジでいいですね我ながら。


で、3日目の合間時間にはこの一連と音楽のタイミングなどを練習したのでした。

【F2:8月32日】

14時の夏アニメーションVIIの回では、妹を演じるみどりちゃんが手を滑らせて風鈴を割ってしまい、アクティングエリアにガラス片が散らばりました。
その後大勢が走り回る場所だという事にハッとした私は、自分が出てくる時に極力らガラスを片付け、そのあとは偶然あった珪藻土マットをらガラス片のあたりに投げて、演者には無理矢理靴を履かせることで事なきを得ました。
途中で新山さんが痛そうな表情をしていたのでまさかガラス片が足に刺さったのかとヒヤヒヤしましたが、普通にキョンキョンの演技だったそうです。

最終回:17時の回が終わると私はみんなともう二度と会えなくなってしまうため、16時ごろ、最後に一緒にいるうちに記念撮影をしておくことにしました。

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差し入れで頂いたお菓子やお花などに囲まれて。
「病気の男の子がマラソンでゴールして死ぬ瞬間に撮った写真が、拍手する人々が全員合掌のポーズになっていた」みたいな有名な怖い話があると思いますが、あの不吉さが出るように、お供え物に囲まれた遺影の中の私を囲んだみんなが合掌しているように撮りました。
ちなみに私のこの顔は、『あの花』のめんまの遺影をマネしています。

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そして夏アニメーションVIII本番です。
終盤まではいつもと同じ流れなのですがこれで最後と思うと寂しいような気が晴れるような感じがしますね。

そしてついに最終回だけのシーン16b。
ここが終わったらもう私はこの505団の人とも『夏アニメーション』とも永遠にお別れです。
僕は、小中学校の時の嫌な帰り道の事を思い出すので金木犀の匂いが(匂いそのものはいいと思えても)嫌いなので、夏っぽいボディクリームやキンカンの対抗軸としてキョンキョンに纏わせる形で客席にも香る形で金木犀の匂いは毎回出てきます。
そんで最終回にはキョンキョンに「金木犀の匂いのする私も嫌い?」と言わせるわけです。

練習含め何回もやっているため、もうすでに私の中では金木犀の匂い≒キョンキョンと半分くらい刷り込まれてしまっています。そしてこの一回限りの最終回で、金木犀の匂いをさせたキョンキョンは私に(便宜上)「アイラブユー!好き!」を言い、この匂いとともに共に秋へ行くことを誘ってくるのです。

キョンキョンとハルキが劇中で急接近するシーンは夜の浜辺のシーンなど何回かありますが、あそこで馬乗りっぽくなって硬直する時は、当人にしかわかりませんがお互い視線が目からは微妙にズレていたり、何回もやった後ろから抱きしめるシーンでも直接目は合わない訳です。
しかしこの最終回に至っては、今度はキョンキョンが上位となり完全に目を合わせたままで「秋には何しよっか?秋にも私たち友達のままかな?」とハルキに訴えかけてくるのです。
私は自分のも含めて今までに何回かは劇とかに出たことはありますが、感情を伴った演技というものができた試しはなく、本当のリアルな感情を持った演技というものは存在しないとすら思っていました。

終わろうとする世界の中で、キョンキョンは完全にこちらと目を合わせてきます。
演じる新山さんの目が、泣き出すんじゃないか、これは演技ではないんじゃないか?と錯覚するくらいにマジで、この瞬間に私は生まれて初めて演技上でその場に起こるべき感情が爆発しました。

夏が終わる、何回も同じ夏と危うい瞬間を繰り返したキョンキョンがこちらに向かって叫ぶ。夏は終わって欲しくない、でもそれよりもこのまま505団と一緒にいたい・・・っていうか、キョンキョンにこんな目でこっちを見られたら一緒に秋に行きたくないわけがないじゃないか!!!!それに打ち上げも行きたいし!!!その場でストーリーを変えてでも一緒に居たい、というかこの瞬間が続いて欲しい・・・!!

本当に感情がグッチャグチャになりました。
お話上は「夏を続けたい」「キョンキョンたちと秋に行く」の葛藤のはずですが、もはや私の本心では「当初の予定通りお話を終わらせなくてはいけない」「キョンキョンが自分に圧倒的な意識を向けてくれているこの瞬間が永遠に続いて欲しい」にすり替わってしまっていました。っていうか、こんな泣きそうな表情でまっすぐに目を見つめられると、こっちまで泣いちゃいそうだよ!!!!

今年の8/32の夕方のこの瞬間は、人生の中でも相当上位の感情的ピークポイントだったと思います。
誰かから注目や愛を受けたい人間である自分が、まさか嘘の話とその練習の集積によって作り出されたその瞬間を迎える事で、ここまでリアルな感情が(まさか舞台上で)呼び起こされてしまうとは思ってもいませんでした。

あの数十秒間の景色は脳裏に焼き付いてるし(その時リアルタイムでの「この瞬間は一生残る」という確信も凄かった)、多分これから一生のあいだ金木犀の匂いを嗅ぐとキョンキョンaka新山さんを思い出す事になるんだと思います。


劇は本当のラストシーンになり、私ハルキは消えたのでずっと裏でラストシーンで秋を迎えた505団の声や、その後のお客さんとの面会だったり片付けの声を聞いていました。
文字通り自分が幽霊になったようで、本作が終わった後の自分のことをまるで考えていなかったというのもあって、本当に殻になってしまったみたいでした。
片付けが終わったようで、出演者も全員、幽霊である私にも聞こえるようにさようならを言って家を出て行きました。

空になってしまった夏アニメーションのステージ(であり自宅)を復帰させるために一人で黙々と演劇でいうところのバラシ作業を行っていました。
全然はかどらなくて寝っ転がってツイッターで感想とか見てたけど。

盛夏火の集合ラインで、みんなは焼肉屋で打ち上げをしていることが伝えられます。頭がおかしくなりそうでした。なんで俺が企画して書いたのに、俺が打ち上げに行けないの?
打ち上げが終わったようで、みんなから集合写真が送られてきた時、本当に自分が死んだ後みたいで泣きました。

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ちなみにこの写真、先述の遺影写真の僕の顔真似してるんですね。

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全然進まない片付けをしていると、深夜0時丁度すぎくらいに玄関がノックされました。
ついに苦情かと思い、ドアを開けると、例のコンプソンズ金子くん、新山氏、けいすけの3人が居ました。
なんでも、台本の最後のト書きには「ハルキは最低その日1日は打ち上げを含めて観客や演者の前に姿を見せない」とあるため、8/32が終わり日付が変われば会ってもいいという理屈のようで、打ち上げ後に来てくれたようでした。

ぶっちゃけ、『素晴らしき哉、人生』のラストみたいで、そのまま3人に抱きついて泣き出したい気持ちでしたが、恥ずかしいので「お、おう・・・」みたいな態度を取ってしまいました。

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そのあとは、4人で部屋を片付けたり差し入れを食べたり、いつものようにダベったりしました。日常が戻ってきた感じです。

途中、シャワーを浴びていたら『ジュマンジ』の太鼓のような音が聞こえてきたのでビビってたら、けいすけが自分の足をハンマーで叩いてる音だった。

そのあとは4人で団地の前の公園に行って、花火の残りを少しやって、みんなは帰って行きました。

【G:関連リンク】

なんかこう書くと、いろいろやったような、でもまだ全然何もやってないような、そういう夏でした。
でも、過去や創作物含めた夏の思い出を再現し、この夏を擬似的にエンドレスサマーにする、「夏アニメーション」に意味(と歴史)をアニメイトする、という人生の間にしなくてはいけなかった事ができてよかったです。

最後に、皆さんの感想ツイートまとめや、書いてくださった劇評などを載せておきます。

Love,たけき

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【魔女募集】

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盛夏火3に際して、企画段階から出演まで携わってくれる魔女を募集します。

日時:未定、冬季の間
場所:未定、団地の可能性もおおいにあり
ギャラ:相談しますが必ず出します。参加費の徴収・集客ノルマなどは死んでもありません。死んでも。それを不明瞭にする劇団は死ね。

お問い合わせ:seikabi.info@gmail.com
Twitter:


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