ヒヤリハット1「猫井川 落石にヒヤリとする」

こんにちは。

私は労働安全コンサルタントという仕事をしております。
普段は労災を防ぐために、建設現場や工場のパトロールしたり、教育したりしています。
労働安全コンサルタントとして、産業安全衛生に関してのブログもやっております。

ブログ
今日も無事にただいま

このブログの中で、ヒヤリハットで小話でも作ろうかしらと思いたち、載せていました。
すでにそのなりの量も書いたのですが、ブログの中だけで埋没させるのにもったいなさを感じたので、noteでも載せてみようかと思いました。

多少手を加えたりしていますが、主にはブログからの転載です。
建設現場を舞台にしていますが、社内での安全衛生教育の時にでも使ってもらえれば、幸いです。

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猫井川、落石にひやりとする


(株)HHCは、総合建設業の会社です。土木工事から、コンクリート、建築のなど、どんな仕事でも、いい仕事をするので、あちこちの会社から声がかかり、仕事を請負っています。

そんなHCCの若手作業員、猫井川ニャン(27歳)は、今日は市街地で下水道管工事の現場に来ていました。
作業するメンバーは、職長の犬尾沢ガウ(36歳)と、ベテランの兎長耳ぴょん(58歳)、保楠田コン(46歳)でした。
仕事の内容は、小型のショベルカーで幅30cm、深さ1.8mまで掘り、そこに直径50mmの塩ビ管を布設します。

朝、現場に4人は到着し、作業内容の確認などの打ち合わせを行いました。
そして交通規制を行い、作業を開始しました。

犬尾沢がショベルカーに乗り、アスファルト舗装を壊し、穴を掘っていきます。掘った土は、保楠田が運転するダンプカーで運び出していました。

穴が掘れてくると、次は塩ビ管を置いていきます。
犬尾沢はショベルカーで、どんどん掘り進んでいきます。
兎耳長と猫井川が穴の中に入り、掘削床を均し、塩ビ管を置く作業していました。

午前中で、目的の半分くらいまで作業が進んだので、休憩に入ることにしました。

全員で作業場所を離れていきます。
猫井川も一緒に向かっていましたが、ふと穴の中にスコップを置いたままということに気づきました。
「放置していたら、犬尾沢さんに怒られるかもしれないな」
取りに行くことにしました。

ちょっと穴の中に入るだけなので、ヘルメットも被らず、脚立を使わず、飛び降りようとしました。
それを見た犬尾沢は、
「猫井川、作業現場に入るんだったら、ヘルメット被っとけ」
と叫びましたが、猫井川は気にせず、飛び降りました。

ダン!と穴の底に着地しました。
しかしその瞬間、足がぐにゃりとして、尻もちを着いてしまいました。
さらに間の悪いことに、土壁のところから、こぶし大の石が猫井川に向かって落ちてきて、顔をかすめたのです。

肝を冷やす、猫井川。

何とか足が回復して、地表に出てきた猫井川を待っていたのは、赤くなった額と犬尾沢の説教でした。

猫井川ニャン、その日の昼食は、少ししょっぱく感じたのでした。

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ヒヤリハットの解説

まずヒヤリハットですが、現場作業をされている方は、一度は耳にされたことはあるかと思います。
簡単に説明すると、「事故や災害に至らなかったけれども、一歩間違えれば、そうなっていたものです。」
ヒヤリとして冷や汗をかいた、ハッと息を呑んだというのが語源です。日本語です。
事故や災害にならなかったので、見過ごされがちですが。労災防止のためには、ヒヤリハットを集めることはとても重要です。

今回のヒヤリハットは、「土壁からの落石にヒヤリ」ですね。

1.8mの深さまで掘るのことは珍しいことではありません。
しかしその深さですと、人一人がすっぽり頭まで入ってしまう程の深さではありますね。

ヒヤリハットとしては、猫井川が穴に入った時に、落石が顔の横をかすめたものです。
こぶし大の石となると、結構な大きさです。直径10センチくらい?
もし顔に当たっていたら、命に関わらなくとも、かなりのダメージになりますよね。

猫井川はちょっとスコップを取りに行くからと、ヘルメットを被らずに作業場に入りました。
こういう掘削作業は明かり掘りというのですが、明かり堀作業を行う場合、作業者は保護帽(ヘルメット)を着用しなければなりません。
ヘルメットがあれば、落石が頭にあたったとしても、ガードしてくれるので、ちょっとした時間でもヘルメットは被ったほうがいいです。

もう一点、脚立を使わずに穴の底に飛び降りたので、足首をぐねっとしてしまいました。
1.5m以上の高さがある場合は、階段やはしごなどの昇降設備を使わなければなりません。
穴底は狭く、土です。がたがたもしています。足の踏み場も充分でないことが多いです。ジャンプは避けたほうがいいですね。

さて、さらにより落石を防ぐためにできることといえば、作業方法を検討することです。
明かり掘りで掘削する場合は、勾配をつけなければなりません。
ちょうど逆台形の形で、掘っていくわけです。勾配の角度は掘削の深さや地質によって異なります。

今回のケースであれば、岩盤などではありませんが、2m未満なので90°でも構いません。
スペースなどの余裕があれば、多少角度をつけてもいいですけどね。
土壁が90°と60°であれば、岩がボトンと落ちてくる危険性は違いますよね。

また、土止め支保工を設置することで、落石や土壁の崩れを防ぐことができます。しかし、今回のように短期で小規模のものであれば、土止め支保工までは不要かもしれません。土質が崩れやすいなどの状況に応じますね。

あと、落石を防ぐ方法としては、作業中でもグラグラしている浮石や落ちそうな土の塊があれば、先に落としてしまうほうがいいですね。そうすると作業中に落下してくる危険は避けられます。

今回のヒヤリハットのまとめ

ヒヤリハットの内容
「穴の底に飛び降りたら足を捻り、悶絶してたら落石が顔をかすめた。」

ヒヤリハットの対策
 1.保護帽(ヘルメット)を着用する。
 2.脚立などの昇降設備を使う。
 3.浮石などはあらかじめ、取り除く。

それでは。
読んでくださって、ありがとうございました。


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