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2年で予備試験論文を突破するための14ステップ+α

割引あり

はじめに

   論文の成績表が送られてきて、すぐにそれを元に分析して、予備試験論文の突破法を書きたかったのですが、口述試験の勉強に追われて遅くなってしまいました。

 この記事のタイトルを勉強法ではなく、突破するためとしたのは、予備試験は勉強することが目的ではなく、突破することが目的であるので、このタイトルにしています。

 自分が論文試験までに行った勉強や取り組みやそれに対する感想などは以下の記事に書かせていただいております。
 論文合格前に書かせていただいた記事ですが、多くの方にご購入いただき、感想もたくさんいただけましたので、今回の記事でも多くの方に役に立てることを目指して執筆させていただいております。

 この記事は自己の勉強法や成績だけでなく、X(旧Twitter上)で公開されていた他の論文合格者の成績通知表のデータ、ツイート、実際に論文合格者にお会いして話を聞かせていただいた内容も参考にして、どうすれば、予備試験論文を突破できるのかという視点から書いている記事になります。

 予備試験論文合格までのステップを14段階に分けていますが、この記事では全体の大きな方向性や、2年間のその時期で何を行うべきかという大枠を設定するにとどめています。 その中での細かい勉強法については、個々人の進捗度、理解度により最適化する必要がありますので、細かすぎる勉強方法になると、かえって合格への障害となる可能性も大きいです。 そのため、この記事では大きな方向性や枠を示すのみとなりますので、個人に合わせたさらに細かい方法が必要な方は最後にご紹介する個別指導の利用をご検討ください。

この記事の対象者

 この記事は2年以上じっくり時間をかけて予備試験論文突破を目指す人にとって、一番効果的であろう方法を書いております。
一番対象者としてイメージしている像は以下2つのタイプです。
①基礎講座を一通り終わって、問題演習も始めているけど、合格までの道筋が見えない。
②短答試験は合格したけど、論文合格までの道筋が見えない。

 なぜ1年突破ではなく、2年突破をターゲットにしているのかというと、勉強時間の問題だけでなく、論文試験は独特の雰囲気があり、あの試験を1発で合格するのはかなり困難であると感じたのが一番大きいです。
 上記の②のタイプの人にとっては、既に力がそれなりに備わっているため、残り1年間あれば、十分に合格を目指せます。
 2年間というのは、まだ①の段階にある人をイメージしたスケジュールです。

    1年合格や1発合格を目指す人は、この記事の方法では難しいかと思います。 また、論文で1桁合格、2桁合格という上位合格を目指すことは難しいので、順位は関係なくても、論文突破したいという方を対象にしています。

 この記事を読まれている段階で、まだ勉強を始めた段階であり、基礎講座もほとんど受講し終えておらず、問題演習も全然始められていないという方は、この記事を読まずに、まずは理解が不十分でも良いので、一通り基礎講座を終えることを優先されることをお勧めします。
 試験科目の全体像が全く見えていないと、勉強方法を見たとしても、なかなかその本質を吸収することは難しいため、一通り基礎講座を終えるのをお勧めします。
 予備校の基礎講座の時間は150時間~300時間で終了できるものがほとんどだと思います。 できれば、1.5倍速くらいで聞いて、100時間~200時間で1回まずは聞き終えるのを目指しましょう。
 1日2時間だけでも聞くことができれば、3か月程度で十分聞き終えることができるはずです。

合格のための3つの戦略

 合格を目指すための細かいステップの前提として、大きな方向性として3つの戦略を基礎にしています。

戦略①  自分の最低点のレベルを上げる

 合格のための方向性としては、大きく分けて、自分の実力で問題との相性が良く、調子がよかった場合にとれる最高得点を上げていく方法と、問題の相性や調子が悪かったなどの場合でもとれる最低得点を上げていく方法があります。
 私のこの記事での戦略は後者の方で、問題の相性や、自分の調子が悪かった時にとれる点数を上げるためのアプローチです。 そのため、高順位を狙うためには、ここに書かれているよりもさらに時間がかかります。
 一方で、問題により、当たり外れがあったとしても、合格最低点を超えやすい戦略といえるので、とりあえず最下位でも良いから論文に合格したいという人にとっては、採るべき戦略だと思っています。
 予備試験の一番の関門は論文試験ですが、その前の段階の短答試験であしもとをすくわれないように、比較的早い段階から、短答対策も行うことによって、短答での最低点のレベルも上げることも行います。

戦略②  Aランク狙いやすい科目は確実にAをとりにいく

 論文試験では、AランクからFランクで評価されますが、素点評価ではなく、偏差値換算されてしまうため、BからEはほぼ2.5点刻みとなり、BからEにとどまっている限りは、他の人との差はほとんど発生せず、Aランクをとれば、大きく他を引き離せる可能性があります。逆にFランクをとれば、大きく引き離されてしまう可能性があります。
 もちろん誰しもが、Aランクをとりたいと思っているので、どの科目も狙ってAランクをとるというのは非常に難しいです。しかし、実際にはAランクがとりやすい科目があると思っています。 それは、選択科目と実務基礎科目(民事、刑事)です。 なぜかというと、この3科目は短答試験の科目にないので、どうしても手薄になる人が多いからです。
 論文の受験者数が約2500人で、論文合格者が約500人なので、順当にいけば、論文が不合格になった2000人が翌年の論文試験を受けることになるので、短答にないこの3科目も特に手薄になっていないのではないかと思われる方も多いかもしれません。
 予備試験の短答は、一般教養科目という運の要素が強い科目が60点と、他の科目の2科目分もあることや、法律科目も一定のレベルになると、それ以上点数を伸ばしにくいようになっているため、前年に短答合格した2000人のうち、4割程度の800人は入れ替わる可能性があり、残り1割の200人はロー生となり、次は予備試験ではなく、司法試験を受けるため、実際には、論文受験生の2500人のうち、1250人から1500人は論文受験回数が1回目なのではないかと推測しています。 そのため、選択科目と実務基礎科目は、短答合格後からやり始めた人が多いため、比較的Aがとりやすい科目になっていると推測しています。
 しかし、選択科目はまだ導入されてから2回しか実施されておらず、今後はしっかりとした対策がとられるため、今後の傾向はわかりませんが、実務基礎科目については、予備試験の初期から状況が変わっていないため、今後もAをとりやすい科目であると推測します。

戦略③  苦手な科目を作らない

 短答試験では、1科目30点しかないため、15点以下になるような苦手な科目があると、運の要素もしくは、圧倒的な実力が必要な一般教養科目で挽回するしかないので、苦手な科目は作らないことは必須です。 法律科目ではいくら得意な科目であっても、難問が2問くらいは入れられ、24点以上をとるのが非常に難しいようになっているため、得意科目で挽回することが難しいです。
 論文試験では、前述の通り、素点ではなく、偏差値換算がされてしまうため、得点の分布が圧縮されたものになるため、もし苦手な科目があり、大幅に低い点数になった場合は、それを他の科目で挽回するのは難しいため、苦手な科目を作らないことが重要です。
 また、得意科目を作ったとしても、上位層のレベルは高く、上のレベルで点数を伸ばすよりも、下位層に確実に勝って、点数を上げる方が簡単であるため、苦手な科目を作らない対策を重視しています。


理想としているスケジュール概要

1年目のスケジュール

  1.  先ほども書きましたが予備校の基礎講座の時間は150時間~300時間であるため、1.5倍速で、1日2,3時間勉強するとして、3か月程度かかることになります。 予備校の基礎講座は、耳から聞けて、動画であるため理解しやすいというメリットはありますが、時間がかかりますので、薄い書籍なので、理解できる人は書籍から学ぶという方法でも良いでしょう。

  2.  基礎講座を一通り終えたら、次は短答の演習です。基礎講座についている問題もしくは、市販の短答用の問題集で実際に問題を解くということをやります。 1周目はかなり時間がかかりますが、2か月程度を目標にして、一旦全法律科目8科目の問題集を1周することを目指します。

  3.  次に論文で論点といわれるものにどんなものがあるのかということを一通り習得することを目指します。 ここでは本質的な理解までする時間はないため、どんな論点があるのか、判例ではどのような結論をとっているのかというのを知ることを目標にします。 利用教材は、市販の論証集というもので良いです。 多くの人はアガルートの論証集を利用していますが、noteでも安価で販売しているものも多くなってきているので、それを利用するのでも十分です。 ここは期間を2か月としているので、それほど深く論点の理解はできないので、1周で深く理解することよりも、浅く、2,3周できる方が理想です。

  4.  ここまでの時点で、短答試験まで残り3か月になっているという想定です。 残りの3か月は、短答のみに全力を注ぐフェーズになります。ここの具体的方法は下の箇所で詳述します。

  5.  短答試験に突破できたら、論文までの50日間で、可能な限り論文試験に適用できるように取り組みます。 現実的には、この段階では論文試験合格を目指すのではなく、次年の論文試験に合格するための土台にできることを目指します。 ここまでで、最初の1年間になります。


2年目のスケジュール

  1.  1回目の論文試験を受験した後は、合格発表までの3か月間で、論文の型の習得と、口述試験対策をします。 論文試験の合格可能性がゼロであったとしても、翌年の論文合格のために、口述試験対策はかなり効果的であるので、この時期に行います。

  2.  論文試験の合格発表時期を目安に、選択科目と、実務基礎科目の対策を始めて、3か月程度重点的に対策をします。 

  3.  論文試験の合格発表から短答試験までは7か月くらいありますが、短答知識も維持できる程度に勉強を再開しておきます。

  4.  論文試験の合格発表から論文の試験日までは、毎日15分から30分程度で良いので、論証集を見直す時間を作って、どんな論点が存在するのかを確認します。  論証を記憶するのではなく、試験の問題文から論点を抽出できるため、論点を頭の中で網羅出来ている状態を維持するためのものです。

  5.  論文の半年前から、3か月前にかけて過去問の演習を行います。できれば、毎日1問ずつやれれば、3か月で90問消化することができ、約10年分くらいの量をこなすことができます。 

  6.  短答の直前1か月は、短答試験の対策に集中します。短答は維持できる程度に半年程度継続しているはずなので、予備試験の過去問をこの1か月で2周くらいできることが理想です。

  7.  短答試験終了後は、資金的な問題がなければ、予備校の模試と、答練をできるかぎり受けることが理想です。 全て答案提出するのは、時間がとられるため、最低限問題を入手して、他の受験者が知っていて、自分が知らなかった問題をなくしておくことが、この相対評価の試験では重要なことです。


各ステップの目的と実施方法


(1年目)

ステップ① 基礎講座

  • ステップの目的
     予備試験の出題範囲の法律の内容を知り、どのようなことを知る必要があるのかを浅く知ることを目的とします。
     この段階ではとにかく理解できなくても、基礎講座を一通り全部を終わらせることを目的とします。 1回講座を聴いただけで全てを理解できる人は誰もいないと思いますので、立ち止まらず全部を聴き終えましょう。      基礎講座は、次からのステップでわからないところがあった時に随時その箇所を調べるために利用すれば良いのであって、初めから講座の内容を完璧に理解しようとする必要はありません。

  • 実施方法
     お薦めは予備校の基礎講座です。 書籍を買って独学で実施することも可能ですが、初期を全科目そろえようとしても、10万円近くかかってしまうので、スタディングの講座であれば、10万円で法律基本科目の7科目は網羅しているので、お薦めです。 もちろん、他の予備校の30万円、50万円、それ以上などのインプット講座があるので、自分の気に入ったものがあれば、それを利用するのが良いでしょう。
     予備校の動画講座は、理解はしやすいのですが、150時間から300時間と時間がかなりとられてしまいます。 それに比べて書籍だと、薄い本であれば、全科目分読んだとしても50時間程度で読めてしまうので、書籍を読んで理解できる人なら、書籍で勉強するほうが、時間対効果は高いです。
     結果として、この段階で法律基本科目の7科目がどのような法律なのか、予備試験ではどんな問題が出るのが何となくわかるようになれば、このステップはクリアです。


ステップ② 短答演習

  • ステップの目的
     基礎講座で習得した知識を基にして、実際の短答試験の問題に取り組み問題形式に慣れることと、自分が理解できなかった箇所を把握することを目的とします。
     この段階では、問題の選択肢を最後の二択に絞れる段階までいくことを目的とします。この段階ではとにかく理解できなくても、基礎講座を一通り全部を終わらせることを目的とします。 なぜなら、ほとんどの問題は最後の2つまでには絞れるが、そこから最終的に一つに絞るのが非常に難しいからです。

  • 実施方法
     基礎講座を受講されている場合は、基礎講座に付属している短答問題を解くということでも大丈夫ですし、辰已の短答過去問パーフェクトや、伊藤塾の合格セレクションなどの書籍を利用しても良いでしょう。
     ここでもステップ①の基礎講座と同じように、1度目で完全に問題と解答の理解を目指すのではなく、一旦最後まで全部の問題を解ききることを目的にしましょう。 問題を解くにしても、一度で全てを理解するのはできないですし、全体の知識の網羅性が上がってくると、解ける問題も出てくるので、まずは一周することを目標にしましょう。 そして、このステップの期間は2か月しか設定していないので、恐らく2周目するのは難しいと思いますが、余裕があれば、2周できることが理想です。


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