ジェンダーレスじゃない式守さん
はじめに
今期も結構面白いアニメが大量でした。製作されてくださっている皆さん、コロナ過のなかありがとうございました。
世界が物騒になり、ともすれば明日には死んでしまうのではと小心者のぼくは思いながら生きていましたが、アニメを見ている時は時間を忘れることができます。
導入
さて、今期も終わりに近づいてきたのでそろそろ長い尺で何か書こうと思いました。
候補としては「パリピ孔明」や「かぐや様」「SPY×FAMILY」などの人気作や、個人的にヒットした「BIRDE WIND」のどれかを扱う気満々だったのですが、とある作品が目につきました。それが「可愛いだけじゃない式守さん」です。
「可愛いだけじゃない式守さん」(以下、本作と「式守さん」の表記を併用。併用する意味はありません)の書誌的情報に触れておくと、本作はツイッター発の漫画であり、のちにマガジンで長期連載が始まった作品とのこと。それなのによくも続けられると、作者と編集さんには頭が下がります。
そんな「式守さん」ですがアマゾンプライムで意外と評価が割れています。面白いと評価する人は「尊い」「優しい」「新しい」などの単語が目立つのに対し、批判的意見としては「テンポが悪い」「和泉君(男性主人公)の声がキモい」などの意見が見られました。また両者とも「原作を見ろ」という意見が散見されました。
でも、これらの語は無視します。要は感想で千差万別だからです。同じ感想の人は同意し、違う人は違うと言うだけの平行線をたどるだけです。もちろん自分の意見を強固にしたければいくらでも手はあると思いますが、まぁそんな頑張らんでいいでしょう。
ただ、テンポが悪いという意見には同意で、これらの解決策としては和泉君に何かもう一つ属性があれば内容が増えテンポが改善できたのではないでしょうか。和泉君はとてつもない不幸体質だけど底なしに心優しいメンタルの持ち主として描かれています。それはすごく立派なことで和泉君のストロングポイントです。でも、殊ストーリーに関しては薄味と言うのは指摘の通りだと思います。メンタル面以外の和泉君のストロングポイントがあれば...と思わないことはありませんでした。
(でもまぁ、ツイッター発なんだし今更無理でしょとも思うけど。むしろ狼谷さんを生み出せただけでも凄まじい努力ですよ。まじで、狼谷さん好き)
扱う問題について
では何を取り沙汰するのか。
そうAmazonプライムビデオのコメント欄で、ひときわの長い文章で書かれている感想に散見される「ジェンダーレス」という意見です。
いまさらながら説明しておくと「式守さん」という作品は、頼りないけど心優しい和泉君と可愛いけど和泉君を危機から守ってくれるカッコイイ彼女の式守さんのお話です。その従来とは逆転している役割を指して、とっても偉いアマプラレビュアーの方が「ジェンダーレス」について触れているのが気になりました。
なぜならこの作品はむしろ強固な性自認に基づいていると感じているからです。
例えば、和泉君はひ弱で猛烈なドジっ子ですが、式守さんのピンチには守らなければならないと感じていますし、狼谷さんも守ろうとします。このヒロインを守ろうとする姿は間違いなくヒーローのそれであり、和泉君は明確に式守さんの守護者になろうとしています。
この守らねばならぬという意識はどこから出ているか。
和泉君が心優しい性格だから、男とか女とか関係なく困っている人は助けようとするんだ! そんな和泉君がマッチョズムに憧れる旧態依然の男性像であるように読み取るのは冒涜だという意見が聞こえてきそうです。
でもジェンダーレスを書きたいのであれば和泉君は守られるだけの存在でいいはずです。そうではなく和泉君も守ろうとしている。そこが重要なのではないでしょうか。
式守さんはどうでしょうか。
式守さんは和泉君を守ります。そして守った後にはキレッキレの表情で和泉君を心配します。(くっそカッコイイし、なんかちょっとエッチ)
ですが一方で、デートの前には服装に悩む。
和泉君に可愛いと言われると喜ぶ。
そして和泉君の母親に料理を習う。
など明らかに女性的性自認に基づいた行動をとります。特に最後の料理を習う描写(のちに料理教室に通う)は典型的家族観に基づく行動です。
よって、式守さんは男性的役割を担っているわけではなく、むしろカッコヨクもあるし、和泉君の前では可愛くもありたいのです。この両面を持つ姿は明らかに現代女性の憧れと一致します。
したがって、一見すると性的役割を好感しているように見える「式守さん」ですが、実際は異なりむしろ時代の変化に伴った男女関係を表現しているだけであり、決してジェンダーレスだけの作品ではありません。 むしろラブコメというフィールドで新しいものを提供しようとしている作品なのではないでしょうか。
批判に対する応答
そしてアマゾンプライムでレビューを書いている人たちの意見は重要ですがもう少し考えなければいけないのかもしれません。
ある方は外国の紹介から始まり、古典的男性おたく像の否定、そしてマスキュリズムなどの指摘をされてましたから、勉強されているのでしょうが、保守的フェミニズムでしかないように感じました(つまり自分の立場を高めたいが故の意見です)。
周知のようにジェンダー論で重要なのは男女どちらかを擁護するかの二者択一ではありません。私たちがジェンダーというレッテルのなかで生きてることを知ることが第一であり、男性像を、女性像を解体したところで何の解決にもならないということです。(現に強烈なフェミニズムは反動としてマスキュリズムを生み出しました)
だから「式守さん」にジェンダー論を見る事は可能だと思います。ただ、男性像の否定のために作品を引用しないで欲しいなと考えます。
結論
「式守さん」はジェンダーレスの観点からも見る事ができる作品です。しかし和泉君と式守さんは自分の性自認に基づいた理想像のために成長するキャラとして描かれています。
その姿はジェンダーレスの一辺倒ではなく、むしろお互いの理想に向かいつつも自分の出来ることをこなしています。よって「式守さん」は男女の新しい一面をラブコメという作品で描こうとしているのではないでしょうか。
ここまでご覧いただいたかたはありがとうございました。
以下、有料欄はただの感想です。もしもし本当に良かったと思ってくださったかたがいらっしゃいましたら、お願いします。
それはどうでもいいとして、ぜひ皆さんのオススメのアニメを教えてくださいね!!
あ、あと余談なんですけど、OPの映像で和泉君と式守さんが色んなコスプレしてますよね。あれって和泉君がバディーものが好きだかららしいですよ。和泉君の妄想らしいです。
妄想が全世界に公開されちゃうとかとんでもない不幸体質ですね(笑)
でもカッコイイからいいか。何気にOPの曲いいよね。
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