生涯ベストゲームに「出会ってしまう」ということ
はじめに
もし「生涯ベストゲームはなに?」と聞かれたら、どんな作品を答えますか?
典型的な回答は、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『ファイナルファンタジーVII』といった、世間的な評価も高く、ビデオゲーム史においても重要な作品を挙げることだと思います。
一方で、その作品をプレイしていた当時の境遇や精神状態によって、その作品が「刺さりまくって」しまい、忘れられない一本になることがあります。そのような作品は、仮に歴史的名作ではなくても、その人にとっての生涯ベストゲームに「なってしまう」のではないでしょうか?
僕にとっては、『ROOMMANIA#203』(2000年、セガ、ドリームキャスト)が、そんな感じに「出会ってしまった」生涯ベストゲームです。今回は、本作と僕の話をしようと思います。
『ROOMMANIA #203』と僕
客観的な目で評価すると、本作は、他にはない個性が光る作品ではあるものの、超名作というわけではありません。ゲーム要素がうまく噛み合っていないところも少なくない作品だと思います。
割と最近、数年前に本作をあらためてプレイしてみてみると、「かなり一本道(むかし自分自身がプレイした時の記憶以上に)」である点が気になりました。
「アパートの部屋に住み着く神様となって、主人公の深層心理に働きかけ、行動を変える」というシステムは確かに個性的です。しかし、本システムが有効に作用するのは序盤だけで、しかもそれは、4種類のシナリオのどこに遷移するかを決定するためだけに使われます。
そして、ひとたびシナリオに入ってしまうと、バッドエンド以外の分岐はなく、「正解の行動」がほぼ決まっている一本道のルートになってしまうのです。
一見色々なことが自由にできそうなゲームシステムに反して、シナリオによる拘束が強すぎるのです。その点で惜しい作品であると思います。
しかし、そんなことは関係なく、本作は僕にとっての「生涯ベストゲーム」と言わざるを得ないのです。
僕が本作をプレイした当時、僕は高校生でした。ゲームの中で、主人公(ネジタイヘイ)は大学生で、気ままな一人暮らしを満喫していました。友達と交流したり、恋をしたり、趣味に打ち込んだりする姿に、「少し未来の、自分にも訪れるかもしれない大学生活」を見出して、憧れを感じていました。
本作の年代設定は、ゲームの発売年(2000年)から見ると少し先である2002年だったので、主人公と僕は、ほぼ同い年の設定でした。そのため、より一層、自分自身を本作の主人公と同一視するようになっていました。
本作の作中アーティストで、実際にCDデビューもした「Serani Poji(セラニポージ)」の音楽も衝撃的でした。
「僕のマシュ…」をはじめとする楽曲たちは、メロディーがお洒落で、でも歌詞はちょっと独特で、その組み合わせがとても個性的で、それまで僕が知っていた音楽とは全く違っていました。
ゲーム中のエピソードと関係ありそうで関係なさそう、でも少し関係してそう、といった絶妙な距離感もあって、Serani Pojiの楽曲たちも、僕にとって忘れられない存在となりました。
このように、誰もが知る名作というわけではなくても、本作『ROOMMANIA #203』は僕にとっては生涯ベストゲームです。極めて個人的な経験に基づくものですが、それであるが故に、本作には「僕の人生の一部」が含まれているように思うのです。
まとめ
本記事では、誰もが認める歴史的名作ではなくても、その人の個人的な経験によって、ある作品が生涯ベストゲームに「なってしまう」場合があることを示しました。そして、僕の場合の例として『ROOMMANIA #203』のことを書きました。
僕が今回の記事を思いついたのは、Serani Pojiの『ピポピポ』がSNS上で発掘されブームになっているという記事に接したからでした。今回のブームを受けてリリースされた『ピポピポ』の高速バージョンを購入したことは言うまでもありません。
しかし、それ以上に、『ROOMMANIA #203』に対する僕自身の記憶の蓋が開き、そのことを言語化したくなった次第でした。
これをお読みの皆様の「生涯ベストゲーム」は何でしょうか?そして、その理由はどのようなものでしょうか?
考えてみても面白いかもしれませんね。
(了)
2023.12.18 Itaru Otomaru
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