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川口義一先生の「日本語教師のためのアイデアブック」を読む 発音編①

私のオンラインレッスンの生徒Bさんは、香港系オーストラリア人で英語と中国語を話す日本語ゼロ初級者です。

ひらがなの読み方を教えている際に、「ばびぶべぼ」と「ぱぴぷぺぽ」にさしかかると
私がモデル音を出して聞かせて「リピート プリーズ」とやるのですが、なかなかうまく発音できません。それどころか「ばびぶべぼ」にところどころ「ぱぴぷぺぽ」が混じるように聞こえます。

私は中国語話者の指導をするのはほぼ初めてだったので、???の状態にいたところ、「日本語教師のためのアイデアブック」川口義一著を読んでいて、こういうことかと気が付きました。

(日本語教師のための初級文法・文型完全「文脈化」・「個人化」アイデアブック ココ出版73P)
なお、p音とb音の対立は、中国語・韓国語などの言語では、「無声のp」vs「有声のb」ではなく、「有気のp」vs「無気のb」になりますので、中国語母語話者や韓国語母語話者が「そろそろpaだろう」と思うと、「有気音」の[pha]が出てくる可能性があります。教師はこれにすぐに気がつき、「あ、その音に近いんだけど、もっと力を抜いて、優しく柔らかく発音してください」と指示し、日本語「ぱ行」音に近づけるように指導しなければいけません。

同様に、「そろそろbaだろう」と思うと、「無気音」が出てきて、日本人の耳にはむしろ「ぱ」に聞こえてしまいます。ここは、「もっと力を抜いて、溜まっていたため息を出すみたいにして発音してみてください」と指導します。

この「有気と無気の対立」は、「か行」と「が行」、「た行」と「だ行」でも起こりますから、濁音・半濁音の指導には特別なテクニックが必要です。
(引用終了)

そもそもこの本の主旨として、発音の指導においては、教師がモデル音を出して聞かせて「真似してみろ」という指示をだすのは「ダメ」(本書70P)とされていて、「教授は学習に従属する」という理念に基づき、サイレントウェイを応用した著者オリジナルの「SW式仮名導入表」を利用した指導をすることになっている(69P)のですが、一旦それは置きます。

著者によると、中国語話者学習者が、「ba」を出そうとすると、「無気音」が出て来て、日本人の耳にはむしろ「ぱ」と聞こえるらしいのです。

そして、「もっと力を抜いて」発音させる具体的指導法を以下のように書いています。

(同書 106P)
韓国人学習者や中国人学習者が語頭の濁音がうまく出せないのは、「弛緩」の欠如が原因です。彼らの母語には有声音・無声音の対立がなく、有声音の濁音を、帯気が少ないという点から無気音で代替してしまうため、日本人の耳には声帯の震えが感じられず、濁音に聞こえないというのが、この問題の原因です。

これを克服するには、無気音の緊張を取って弛緩した音を出させるのが最適の指導法です。そこで(中略)肩の力を抜いた、ため息交じりの声で「あー、だめだ」などと言わせてみると弛緩した有声音っぽい音が出ます。

そこでその音を言語化させてみると、「こんなに力のない音でだいじょうぶなんですか」というような感想を述べる者が多くいます。つまり、濁音は、彼らの想像をはるかに超える「弛緩」した音だということです。この感覚が言語化してつかめれば、きちんと意識化もでき、間違えなくなりますし、間違えても自己訂正が利きます。
(引用終了)

たぶん、正しいと思うのですが、「濁音は、彼らの想像をはるかに超える『弛緩』した音だ」という感覚が「私の想像をはるかに超えている」ので「あー、だめだ」と言ってみても、正に「あー、だめだ」となってしまいます。

どなたか、私にもわかるように教えていただけませんでしょうか?


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