やめ先!

面接日当日のことははっきりと覚えている。

実家近くのワンルームマンションの自宅から1回の乗り換えで駅につくと、学校までの道のりが結構遠い。それでも3月の夕方の陽は温かく落ち始めたころで、少し気持ちを落ち着かせてくれた。

学校につくと、入り口付近で人当たりの良さそうな私と同世代の男性の教諭と思しき方が、

「こんにちは!」と声をかけてくれ、

「校長室はこっちです。」と案内してくれた。

校長室の入ると思っている校長先生のイメージとは真逆の、女性のお世辞にも優しそうな風貌とは思えない貫禄ある女性がジロリとこちらを見た。

「校長の植草です。」

「坂倉と申します。よろしくお願いします。」

開口1番、

「あんた、中高の体育志望やねんて?」

(すぐにため口…。)

「は、はい。」

「まあちょうどええわ。ここは元気ええ子いっぱいおるからな。」

嫌な予感は的中しそうだった。

「5年生担任や。どう?」

「えっ!!そんな、高学年の担任ですか!?」

「そう。逃げなや。」

「ゴク。」

自分の唾をのむ音が聞こえてくる。

「まあ、配置はちゃんとしたげるから心配せんとき。ひゃっ。ひゃっ。」

特徴のある笑い声が響いた。

帰り道、入り口で会った男性教師が、

「また、これからよろしくお願いしまーす!」

と笑顔で声をかけてくれたが、返した笑顔は引きつっていたことは言うまでもない。

もう、腹をくくるしかなかった。

#教師 #先生#小学校#元教員#同僚


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