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デザートはいらない

欲望が滲む窓を 指で撫でると 沢山の光が 飛び込んでくる 貴方 不味いものまで欲しがって なんでも話だけで 片付けようとする人 デザートなんていらない 早く帰ってしまおう デザートなんていらない、と 貴方はいつも言うの

祭りの後

祭りの後 立ち去った人は 次の夢を捜すでしょうか 祭りの後 くれた視線は 次の命燃やすでしょうか 浅い眠りを焚べて 祭りを夢見る心は残らず なんなら覚めてしまえ 出任せばかりに 身振り手振りも 沈黙を埋める三枚目 格好(pose)で埋めるなら黙ろうか 祭りの後を嗤われて それが栄光よ もう飾りは付けないね 貰いもんは要らないね

Meaningless

私は私という意味だけ まるで過不足無し 嫌いな名前 何度も書いた 重なる帳尻合わせとその返済 鏡の向こうの近親憎悪 こんな名前、誰の為? お前が奪った私、返せ そもそもは何も無い meaningless

絶唱

笑っているのか 泣いているのか 酔っているのか 醒めているのか 生まれたとき 一瞬のきらめき そこからずっと 魔力をかけられて 生まれたっきり 私を愛しているのは 喝采だけ

一匹狼

どうしてこれまで 私のことを知っているのか どうしてこの馨りを 嗅ぎ分けてきたのか 食後にはちょうどいいお口直しは 出来レースと冗談と トカゲの尻尾 老いたネコ 居なくなるなら後始末させないで 死ぬなら一匹(ひとり)で死ぬね 求められぬなら求めろよ

リトル・シュガー・メイト

お互いのことは 知っていた コーヒーを飲みながら ノートを広げていると いつも勝手に 相席してくる人 私をひたすら笑わせて 先に帰ってしまう 午後三時頃になると 店先では 貴方を待つ人影が 早く出てこいと急かしていたから 愛嬌のある人気者 クセのないブレンドコーヒー 笑うと片頬が上がるの クールだと思ってた どんな冗談を言っても おどけて笑ってみせる いなせな人 甘くて優しい人気者 まろやかな カフェ・オ・レ 午後三時頃に いつもの人影は 現れなくて 出ましょうか

二人の時代

ずっとある痛みがなんの痛みかもわからず 薬を塗っていたけれど もう鏡も見なくていい 指先で弾けば なにもかも失う危うさだ けれど 今が青春じゃないというなら なんだ 「何故」と聞かないで 二人に前提は無いから はやく大人になってくれ

あの家の窓

なんでもわかるよ 母親のように なんでも見えるから 存在しない時間に消える あの人が好きだ 隣人のリテラシー 風通しのわるい家に文句はないが 貴方の相手が落としていった草花が拾われない なんでもわかるよ 女神のように なんでも見えるから 死角に存在する時間を覗きたい 隣人のリテラシー なにかわかる なにか見えるから

女優

揺らぐ輪郭 全て愛せるほど身勝手では無い 私が私である確信が欲しい 私は変わってしまったかな 貴方 別れ際 見せた寂しい顔 それでさえ私は愛している 私の名なら、見たとおり 女神にでも 聖母にでも 妖女にも なれる 聞かないで 触らないで 優しくもないのに優しくしないで

通り過ぎた人達

登場人物たちの顔をつぎつぎと忘れてゆく 借り物の倖せは取り替えられてゆく 初だわ と言って 笑って 笑いを消して そうやってみんな去っていくのです 群れに飽きた狼は捨てられてゆく 遊びすぎた猫は老いを知ってゆく 夏だわ と言って 笑って 笑いを消して そうやってみんな去っていくのです 初だわ と言って 笑って 笑いを消して

スーパー・ドライ

だって心は抉るが 決して人を殺めない スーパードライだよ 本当 笑ってる私を 心の中で笑ってる 笑わないこの人 蝋燭が消えて失笑を買う いつでも私は表が裏で裏が表 笑えない 笑えない 全然面白くなんてないわ こっちを悪者にしないで 我儘こそ云わないが 密かに驕っている スーパードライだよ 本当 気遣ってるようでいて 気を遣わせてる 狡いあの人 つけた電気を別の場所で消す いつでも私は全部本当で全部嘘 笑えない 笑えない 全然面白くないわ こっちを道化にしない

神童

閉塞した地下鉄で 窓も無い 傘も要らない 私はサイコになって 私はヒステリーになって 私はメロンになって 鶏肉になって 「コウ君、外ではどうするの?」 「走ってはいけない」 他人が貴方になって 私は上が下になって 縦が横になって 下になって 「コウ君、外ではどうするの?」 「笑ってはいけない」

鏡の中のU

お前は真夏の燦然とした太陽であれ と、言われ 四六時中 鏡を覗き込んだ 名付けられてもらっておいて 云うのもなんだが 俺は俺だと 誰が言い切れる? その日暮らしの俺では 余りに名前がありすぎる 自分で自分を傷だらけにした 己の罪か 「あぁ、なんてお前らしいのだろう」 俺は鏡を殴る 「嫌だね、俺の何が解る」 太陽は月を抱きたい しかし太陽は真夜中を知らない 貴女は全てを明るく照らす太陽であれ と、言われ 四六時中 鏡を覗き込んだ 名付けられてもらっておいて

誤飲

無条件に舌の上で愛撫されるお前を見ていた だってこの子は僕似なんだ 女の子がいいなあ 可愛いからサ いいなぁ、お前は 愛されて いつまで舌の上で可愛がるつもり? 昔は可愛かったのに、さようなら と言って飲み込んだ いいなあ、お前は 愛されて 優しくないから笑わないだけ 出されたものは全部喰えって そーゆーことヨ いいなあ、お前は 愛されて