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この気持ち、不燃物

手に入らないモノばかり欲しくなる
これって人間の習性かなんかなの?

私は末っ子だ。
末っ子といえば甘えん坊とかマイペースだとか
世の中のイメージが良いものだと思っていない
お姉ちゃんがいつも羨ましかった。
新しいお洋服、新しいおもちゃ、
必然的に私が使う物はお下がりが多かった。

裕福な家庭では無かったけどよくテレビで見るド貧乏家族の暮らしでも無かったし、習い事も沢山していた。何不自由ない暮らしと言われればそれまでだけど、欲しいモノをすぐ買って貰えるわけでもなかったので何をするにしても1番最初のお姉ちゃんがとにかく羨ましかった。

末っ子だからってデロデロに甘やかされたみたいな記憶も無い。何なら厳しくされた記憶ばかり頭をよぎったりする。それもこれも子供時代に褒められなかったという負の事実があるからだと思う。

こんなお馬鹿な私だけど、テストで満点を取ったとか作文コンクールで表彰されたとか人生の中で少しだけ輝く瞬間が確かにあった。
両親はとくに評価をしてくれなかった。嘘でも良いから大袈裟に褒めてもらいたかったし、頑張ったねと称えて欲しかったのだ。
そんな両親もまた、両親に褒められる事が無かったのだろうと歳を重ねてから知ったのだ。人を褒めて育てるなんて事を知らなかったんだと思う。

両親を憎んでる訳でもないし、育ててくれた事に大感謝しているけど、子供は1人で良かった。と父親がよく話してた話を母親から何度も聞かされていたので、私の意思で受精した訳じゃないんだから本当に勘弁してくれよと思っていた。

幼少時代に褒められなかった。褒められたかった。認めて欲しかった。
ただそれだけの事が、のちの人生に大きく影響する事は言うまでもない。
自己肯定感低め承認欲求の塊ニンゲン爆誕である。

誰かに認められたいから手軽なTinderをしているの?そんなわけでもないけど私より人格に何らかの問題を抱えている人によく出会えるTinder。
私、まだ….まとも?少しばかり安心するのだ。
(まともな人はTinderにハマりません。)

だいぶ話は変わるけど金曜日の夜中にラーメンを食べた。Dくんがラーメンがどうしても食べたいって言うからしょうがなくOKした。
だって夜中のラーメンってもう最悪じゃん。
病気をお金で買いたくないし…。
ラーメンかよぉ!って文句を言う私に、行くぞ!と車を走らせる Dくん。
私たちは不思議な関係だ。
ニンニク食べても気にしない関係。
どんな私も笑って流してくれる DくんはTinderからの出会いでも唯一信用できる男グループにいる。

夜中に食べる家系ラーメン。
最高においしかったけど後半は具合が悪い。
歳かもしれない、腹が苦しい重い
そんな私をよそに Dくんはパクパク野菜盛りとライスを食べる。
たくさん食べる男の子はかわいい。
母性本能をくすぐられる。
ラーメンの脂っこさを感じながら止まる箸を置いて私は音信不通だったセフレの話を始めた。

セフレの話をセフレにする。
これが出来るセフレは BくんかDくんくらいだ。
いつも私の話をどうでも良さそうに聞くDくん
ラーメンをすすりながら適当に頷いている

今日は音信不通のセフレ、Aくんのお話。
Aくんはセフレの中でもわりと長い付き合いで、顔とスタイル、ビジュがとてもいいという理由でスペオキセフレとして大事にしてきた。
ところがAくんはよく音信不通になった
今回もそうだった。いきなり連絡が途絶えるこの現象。初めてじゃない。
自損事故も起こしていないし元気でやっている事も容易に想像出来る。
仕事が忙しいと理由をつければ、何日何ヶ月もLINEを眠らせていい理由にはならない。
セフレだって信頼関係から成り立つものと私は考えている。

何日か前に音信不通だったAくんから連絡がきた。
ごめんね。の四文字に大した感情も含まれてないだろう。
音信不通からのこの連絡は理由あるものだった。

全く連絡が取れないAくんが気になってはいた。
退会したTinderをもう一度インストールし直した矢先、ひたすらスワイプしていたらもしかしたらAくんと再びマッチするかもしれないと、少しだけ頭をよぎる。現実は残酷だ。
音信不通だったAくんが早速表示された。
加工をつけながらも少しだけ写る目元と口元は紛れもなくAくんだった。

あ〜あ、こんなところでまた会いたくなかった。
右スワイプしてみた、やっぱりマッチする。
音信不通になって早何ヶ月経っただろう。
たくさんの時間が過ぎていたけど、忙しいとよく言っていたAくんから光の速さでメッセージが送られてくる。

ちんこびんびん太郎だった。
Tinderだし分かってはいたけど、さっさと会ってSEXしたいです!!というオーラがひしひしと伝わってくる。
無性にイライラしてしまった。
音信不通だったこの期間に一度でも一言でもLINEできたじゃん。したくなかった、面倒くさかった、分かってるよそんなことは馬鹿野郎!!!

意地悪な私はそれとなくセフレの存在を聞き出した。Aくんはペラペラと話し出す。
年上のセフレがいたこと、仕事が忙しく連絡を返せないまま今日まできてしまったこと。
…..これ私の話…?
申し訳なかったと思ってるとか反省してるとか言い訳らしいことを並べるAくん。
Tinderをしてる暇があったら謝罪をしろよ!
イライラが止まらなかった。
反省しているならばセフレに謝れば?と投げた
まともな思考を持っていれば、話し始めたばかりの第三者にセフレ問題をとやかく言われる筋合いは無い。

ちんこびんびん太郎の脳内、正常な判断が出来ない。Tinderの知らん女に言われたことを素直に、
そうします!と受け入れるAくん。

すぐに私のスマホが鳴る。
ごめんね。の文字があった
私がずっと待っていた連絡とごめんねのLINEは、私自身がAくんから引き出した悲しいものだった。
何の意味を持たない、ごめんねの文字が痛い。

事の顛末を全て Dくんに話してすっかり冷めたラーメンのスープをぐるぐる回しながら、私は頭を抱えるのだった。

ラーメンは美味しい。ご飯を食べて幸せな気持ちになることは人間生活において重要な事だ。
おいしかったね〜とDくんとお店を出て駐車場に向かう。

神様っているのかな。
神様がいるなら善人悪人を仕分けして、スペシャルな時間を与えようとか、罰を与えようとか、
そんなシステム作られてたりする?
きっと私は人を騙したから神様に目をつけられたのでしょう。

Dくんの車の横にとめてある外車がすぐ目に入った。最悪だ。Aくんの車。特徴的な彼の車は目立っている。
ずっと欲しいと言っていた外車。買えたんだね
いつか乗せるね、と話してくれたけど
この田舎でこの車を乗ってる人、Aくんだけ。
気が狂いそうだった。このタイミングで現れるなよ。なんならラーメン屋でぐちぐち話してたの聞かれてないよね?
何でこの時間のこんな場所で会うかな、動揺を隠し切れない私はDくんに正直に話した。

「音信不通だったAくんの車がある、隣」

いつもだったら私にここぞとばかりに貶されていたDくんは鬼の首を取ったように嬉しそうにしていた。私のまんこを共有した男が同じ空間に2人いる。
顔を見てみたいというDくん希望のもと、Aくんが店から出てくるのを待った。

ほどなくして、Aくんが歩いてきた。
久しぶりに見たAくん。会社の作業着を着て後輩らしき仲間を連れながら喫煙所で談笑し出した。
時折身振り手振りをしながらわちゃわちゃしている。2年間続けた体だけの関係。

「あんな顔して笑うAくん、私知らなかったよ。」

セフレでもなんでも誰かの1番になりたいじゃん。
みんなに喜んで欲しくて、多少なりとも優しくしてきた。
しっくりこない日も、気持ち良かったよ!!と
リップサービスをしたりする。
お店に並んだお洋服を手に取っていざ試着したとき、すかさず店員さんが可愛いいい!!すごく似合ってますよ!!いいですね!
満面の笑みで声をかけてくるアレ。
相手を良い気分にさせる為に、平気で嘘もつける。そこに罪悪感はない。

私なんでセンチメンタルな気分になっているの?
Tinderでの出会いなんて薄っぺらいんだから
一喜一憂したらだめだよ。
訳もなく出るため息は、明日の私を作る活力になると思いたい。

今度またラーメン屋でAくんに会ったら、逃げないで笑って言うの。

「私は相も変わらず元気だよ」

嘘も幸せになれる嘘なら、神様もきっと見逃してくれるはずだ。







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