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無期刑という刑罰

 昨年(令和元年)末、控訴審で死刑判決が無期懲役に減軽されたことが話題になりました。また、死刑廃止の議論でも、死刑に代わって無期刑の終身刑化といったことが取り上げられたりします。
 無期刑というのは、字義通りに読めば、期間の定めがない自由刑(自由を制限する刑)であり、人の生命を奪うような重大犯罪を犯した者に科される刑罰です。
 よく、「日本の無期刑は、終身刑と異なり、一生刑務所ではなく、仮出所してくるのが通例」と言われます。平成30年末で無期刑受刑者は1789人でした。14年前には、新たな無期受刑者が180人を超えたこともありますが、今は落ち着いて同年中の新たな無期刑受刑者は25人。初めて仮釈放を許されたのは7人。そして、死亡した無期刑受刑者は24人。仮釈放が許された人でも、平均して31年収容されています。無期刑になれば、再び社会に出ることは、30年を超える受刑を経てもなお狭き門だと言えるでしょう。
 保護司として、無期刑受刑者を担当することは、何十年にもわたる生活環境調整、引受人の確保をし続けることであり、仮釈放が許されたとして、さらにその後、恩赦にならない限り本人が死亡するまで続く保護観察を、薄氷を踏む思いで実行することになります。しんどい責任を負うことになりますが、それだけに、対象者が更生し、被害者遺族に対する償いを尽くし、慰霊を全うして、社会が認め、恩赦に浴することとなったときの感激は言葉にできないものです。一人の人間の魂を救い、被害者やその遺族の魂を少しでも癒し、新たな被害者を生まなかったのですから。 (2020.9 なだの風28号)


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