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部員の横顔(2) オーツボ氏

「部員の横顔」第2回は、2021年の猪名川特別を制し、第2回の板橋競馬倶楽部リーディングに輝いたオーツボさんです。首位との50勝差を一気にひっくり返し、実力で新部長の座をもぎ取った同氏の競馬観に迫りました。(聞き手:阿川サワー子)


阿川サワー子(以下、サワー):昨年の板橋競馬倶楽部リーディングは鮮やかな逆転劇でした。おめでとうございます


オーツボ
:ありがとうございます。有馬記念まで22勝だった私が幹事長代理さんを逆転できるとは考えてもいませんでした

板橋競馬倶楽部リーディング2022……JRAの平地重賞における的中数を競う戦い。幹事長代理が77勝で首位を独走し、優勝が確定していたが、どうも面白みに欠けるので「猪名川特別」で最も多い配当を得た者を王者とする特別ルールが採用された

サワー:まずは自己紹介をお願いします。九州にお住まいなんですよね?

オーツボ:はい。福岡在住です。40代で二児の父です

サワー:ということは、お給料を全て競馬に突っ込むというわけにはいかないですよね

オーツボ:おこづかい制ですね。毎月色んなウル技を駆使して競馬資金を捻りだしていますが、負けるためにやっているようで。我ながら何のために競馬をやっているのかわかんなくなります。と言いつつ、競馬歴はかれこれ20年を超えてしまいました…

サワー:競馬を始めたきっかけはなんだったんですか?

オーツボ:大学1年の時にサークルの先輩に誘われて、東京競馬場に天皇賞秋を観に行ったのが最初です。スペシャルウィークが勝った年ですね

サワー:競馬には興味があったんですか?

オーツボ:いえ、全く知りませんでした。ダビスタもやったことなかったし。唯一名前を聞いたことがあったスペシャルウィークから買おうとしたら、先輩が「スペシャルなんて絶対来ねえよ!」ってギャンギャン言うので、そんなもんかなあと思って仕方なく蛯名が乗ってるクリスザブレイヴ(16着)から買って惨敗しました

サワー:ほろ苦いデビューでしたね

オーツボ:これは後で知ったんですけど、スペシャルウィークはその前の2走で惨敗して「終わった馬」扱いされてたんですね。見事な復活劇でした。ちなみに、先輩はそのあと超大手ゼネコンに就職が決まりました。ゼネコン、人を見る目ねえな

サワー:それから競馬にのめり込んで行ったと。初めて勝ったのはどんなレースでしたか?

オーツボ:それは覚えてませんが、初めて「大きく勝った」のは2001年のスプリンターズSですね。5000円で馬連3頭ボックス買いしたら、3000円張ったところが当たって9万円の払い戻し。大学生の9万円って社会人の50万円くらいの感覚なんですよね。テレビでレース見ながら手がブルブル震えたのを覚えてます。友達誘って焼肉食べに行きました

サワー:思い出に残っているレースを教えてください

オーツボ:オルフェーヴルのダービー(2011年)ですね。土砂降りの中、現地でアンニュイ君と見てました。POGで指名してたこともあって新馬のころから追っかけてたんですけど、最後の直線で一瞬壁になりそうなところからワープしたみたいに突き抜けてきたのが見えて涙が出ました。人馬ともに泥だらけだった表彰式も印象的です

サワー:オーツボさんと言えばオルフェーヴルというイメージです。猪名川特別でも人気薄のオルフェ産駒を買って高額馬券を当てていました

オーツボ:元々、栗毛が大好きなんですけどその中でもオルフェの尾花栗毛は絶品ですね。グッドルッキングホース。決して大きくない身体から全身バネのような筋肉で弾けるように飛んでくる末脚のすごさは間違いなく史上最強です。僕は本気でディープよりもオルフェの方が強いと思ってますし、1回目の凱旋門賞も池添だったら勝ってたと思ってます。産駒は今のところフィリーサイアーっぽい傾向が強いのですが、できれば父系で血を繋いでいってほしいですね

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https://world.jra-van.jp/db/horse/H1646/

サワー:注目しているオルフェ産駒はいますか

オーツボソーヴァリアントです。昨年末のチャレンジカップは今年の中距離G1戦線での活躍を期待させる走りでワクワクしました。骨折の具合が心配ですが、大きなところを獲れる馬だと思いますので、なんとか復帰して大活躍してもらって、後継種牡馬入りを目指して頑張ってほしいですね

サワー:ところで、先ほど話に出たアンニュイさんとは古いお知合いのようですね。どんなきっかけで知り合ったんですか?

オーツボ:ファーストコンタクトは、アンニュイ君がまだ大学生だったころに書いてたブログです。学生ブログランキングに入ってたのを何となく読んだのが最初で。そこからミクシィの友達になって実際に会うという流れで。ティンダーとかパパ活のはしりみたいな出会い方ですね

サワー:アンニュイさんと言えば、湾岸民を向こうに大立ち回りを演じるなど板橋競馬倶楽部きっての武闘派として知られていますが、初対面はどんな印象でした?


オーツボ:ブログの文章からなんとなく「育ちの良さからくる闇」みたいなものを感じてましたが、実際に会ったら割と爽やかで、少しガッカリしたのを覚えてます。最近はすっかり「感じ悪いキャラ」というか「感じ悪い人」というか「性格が悪い人」というイメージになってますが、彼が不動産業界に入ってしまったことが全ての始まりだったんじゃないかと思います

サワー不動産業界がアンニュイさんを変えてしまった…?

オーツボ:僕は不動産業界のことはわかりませんが、地主とか大手デベロッパーとか態度でかい銀行とか、そういうところとの仕事が増えていく中で、少しずつ「クソが」って言う回数が増えて今に至ってるように思います。もしメーカーとかで働いてたら間違っても奥さんを犬のように扱う人間にはならなかったんじゃないかな。というわけで地主が悪いです


サワー地主感じ悪いですもんね。でもオーツボさんもアンニュイさんに負けず劣らずツイートの攻撃性が高いですよね。どんなお仕事をされているんですか?

オーツボ世間から好かれてないのに、自分たちは好かれてると信じて疑わない人が多い業界で働いています

サワー:競馬に話を戻しましょうか…。好きな騎手はいますか?

オーツボ:池添謙一騎手です。オルフェーヴル、スイープトウショウ、ドリームジャーニー、先日のメイケイエールまで、池添騎手が乗る馬はとにかく曲者ぞろい。そんな曲者軍団をまっすぐ走らせて勝たせる技術と、こうと決めて乗った時の肝の座りは池添さんがナンバーワンだと思います。ガッツポーズと悦に入った顔がナルシスティックでキモイとか言う人もいますけど、馬券が当たってたらそんなの気にならないですよ。

サワー池添騎手にTwitterで罵声を浴びせてブロックされている部員に聞かせてあげたいですね。ほかにはいますか?

オーツボ:若手だと団野大成騎手です。若いのに先輩に臆せずに自分でレースを作ってやろうという気概を感じます。よく穴も開けてくれますし、しっかり悔いない競馬をしてくれるので負けても納得できるのが買う側としては嬉しいですね。

サワー:好きなレースを教えてください

オーツボ:皐月賞です。牡馬クラシック1冠目ということで、弥生賞、スプリングS、共同通信杯と別路線を勝ってきた馬が一堂に会して「さあ!誰が一番早いか、勝負始めようや!」って感じがするので一番わくわくします。馬券もダービーより荒れる傾向が強く、穴党にとっては嬉しいですね。2009年のアンライバルド→トライアンフマーチとか、2008年のキャプテントゥーレ→タケミカヅチとか馬券的にもいい思い出が多いです。

サワー:けっこう穴馬券を当ててますよね。過去最高の配当はどのぐらいでしたか

オーツボ:35万くらいです。オルフェ3歳の時の有馬記念でした。「帯」というやつを一度は獲ってみたいですが3連単をほとんど買わないのでなかなか難しいですね。

サワー:35万はすごい!馬券収支はプラスなのでは

オーツボどマイナスですね。一切収支をつけてないのでいくらマイナスか想像つきませんが、安いファミリーカー1台分くらいはゆうに負けてるんじゃないかと。20年競馬やってて収支プラスで終わったのは4、5回くらいでしょうか。てゆうか、「趣味」なんで、お金が減って当たり前なんですよ! 楽しく時間がつぶれて気持ちよくアドレナリンが出るんだからお金かかって当たり前なんです!

サワー:負けがちな人が自分に言い聞かせる「競馬=ディズニーランド理論」ですね。競馬予想のこだわりってありますか

オーツボ:あまり理論派じゃないので恥ずかしいのですが、重賞ではその馬とコースの相性を一番見ますかね。あとは騎手に関しては好き嫌いでバッサリいってしまいます。たとえ単勝1倍台でも三浦と岩田康はほぼ買いませんし、人気が無くても池添、団野、菅原あたりは印つけちゃいますね

サワー:けっこう思い切るんですね。三浦騎手と言えど1倍台を切るのは怖いような…

オーツボ:僕みたいに相馬眼が無くてパドック見てもさっぱりわからない人間が穴馬を拾うには、「人気ないけど団野だから買う」とか「オルフェ産駒の栗毛だから買う」とか自分ルールを決めてオッズ無視で機械的にやるのがいいと思ってます

サワー:なるほど。好きな競馬場とかはありますか?

オーツボ:最も足を運んだ東京競馬場ですね。初めて行ったときは、とにかく広いなと思ったのと、そこが競馬のためにこれだけ人で埋まるんだというのにただただ驚きました。競馬新聞広げてるおじさんしか乗ってない南武線に揺られて、府中本町の駅から過去の名馬のポスターとか見ながら歩くのも気分が高まっていいんですよね。早くいつでも好きな時にふらっと競馬場に行けるようになるといいのですが…

サワー:地元の佐賀にも競馬場がありますよね

オーツボ:好きな競馬場ですね。夏はなんかわからないけどすごいサクフワのかき氷(たしか150円くらい)、冬は買ったらその場で網で焼いてくれて表面カリッと香ばしくしてくれるあんこもち(たしか120円くらい)が絶品なんですよ。これは是非みなさんに食べていただきたい。ツアーやりましょう!

サワー:板橋競馬倶楽部では有志による地方競馬観戦ツアーも頻繁に行われています。いつか佐賀競馬で総会が開かれるかもしれませんね。板橋競馬倶楽部メンバーで印象的な人っていますか?

オーツボパンチくんさんです。ヤンキーで反社で、しょっちゅうアカ凍結されるのに妙に文化度高いところもあってつかみどころがないんですよね。板橋という土壌の奥深さを感じさせるというか。一度お会いしたいと思ってるんですけど、絶対会わない方がいいとは思ってます(笑) 恋かな?

サワー反社との交際は自己責任でお願いします。さて、最後にリーディング覇者としての意気込みをお聞かせください

オーツボ:僕はたかさんみたいにコンスタントに当てて高回収率を叩きだすタイプではないので、自分だけ当たってるときが一番うれしいんですよね。昨年も大荒れした中日新聞杯でメンバーで僕だけギリギリ拾えてた(板橋競馬倶楽部用語で「地球を救ってる」)時が一番アドレナリン出ました。今年も回収率は二の次で、キラリと光る馬券を買えたらいいですね

サワー:ありがとうございました!

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