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日本のIT化は紙の置換えにしかすぎない

ITサポーターTsuchidaの土田です。

日本の中で紙からコンピュータにシステム化されたのが、1970年代なのでそれから50年もの年月が経過しています。当時はIBMなどの汎用コンピュータが中心で、プログラム言語もアセンブラやFortranやCOBOLが中心でした。

当時は紙の書類を何とかデータ化したいということで、紙に書いていたものをキーパンチャーが入力して、入力したデータを処理する仕組みを作ったのです。今のように画面を見ながら直接入力ができずに、キーパンチャーが紙の文字を見ながらキーボードで入力して、入力した結果を紙カードに出力し、紙カードをリーダに読ませてエラーチェックをしてデータを取り込むものでした。だから当時は紙の情報がそのままデータとして入力されていたので、紙の置き換えのシステムになったのは当然です。紙よりもコンピュータの方が正確で速いので、50年前の技術ではごく当然のことです。

当時はツールなども貧弱だったため、必要な情報をフラグという形でデータに持たせたのです。各データは紙の情報にフラグや日時の情報を付加されていたのです。データベースがない時代だったので、データ処理がバッチ処理のジョブの中で細かく分かれて複雑につなぎ合わされていたのです。システムの改修や新しい要望を組み込むたびに、システムは複雑怪奇になっていくのでした。

さすがに50年も同じシステムを使っていないので、その後システム再構築というものが行われるのでした。ところが日本のシステム再構築の際に「前例踏襲」という言葉を非常によく使われます。これは何かというと、古いシステムの機能をそのまま継承するということです。実はシステム再構築にあたって「前例踏襲」がネックになります。何故かというと、古いシステムはさまざまな制約で複雑になってしまったことが、新システムではツールやプログラム言語で簡単にできるようになるのです。ただそうすると古いシステムの無駄と思われる箇所があっても、「前例踏襲」だと無駄な部分も引き継ぐことになります。無駄な部分を無駄と判断できなければ、「前例踏襲」で古いシステムと同じ作りをしてしまいます。

日本のシステムは「前例踏襲」で作られることが多いので、使われないプログラムが結構存在するのです。「前提踏襲」は、NTTデータ・日立製作所などのITゼネコンで特によくつかわれる言葉なので、ITゼネコンが絡んでいる役所のシステムは複雑怪奇になっているはずです。

クレジットカードや生命保険・火災保険の申込書って、昭和の頃からそんなに変わっていないはずです。実は申込書に記入した文字はデータ入力されているので、申込書を見るとデータ入力画面がある程度想像がつきます。申込書が変わらないということは何十年もデータ入力の仕組みが変わらないことを意味します。

システムを知らない人は新システムになると簡単で便利になると思われるのですが、実態は旧システムに新機能を盛り込み、より複雑になっているのです。これは日本人が決断できないからだと思うのです。私もシステムにかかわっていると、今更というような機能があります。「この機能って本当に必要ですか?」と聞いてみると、誰も明確な回答することもなく、その機能は永久になくなることがなく新システムに組み込まれます。

日本の仕事の仕方の問題なんですが、システムが大きくなりすぎて担当がサブシステム単位になります。システム担当者は他のサブシステムのことがわからなくて、他のサブシステムで使うから必要と判断します。これは業務担当者にも言えることなんですが、自分の担当範囲以外の業務を知らないから、他で使うんじゃないかという判断をして無駄と思われる機能を必要と判断します。

もっと厄介なのは、システム担当者が業務のことを知らずに、業務担当者はシステムのことを知らないので、システム担当者は業務で使っているからといい、業務担当者はシステムで何かで使っているはずということで両者の意見を聞いても機能はそのまま残るのです。

現状維持で自分たちの持ち分の範囲でシステムの再構築を行うと往々にして起こりがちです。そこにITベンダーが入ってきたところで、まともなシステム設計をやらずに、ユーザから要望だけ聞いて、要望以外は前例踏襲として、既存のシステムのプログラムソースを下請けに解析させて、解析結果から基本設計書を書いているので、ITベンダーに依頼してもシステムは改善されません。

システムを再構築するというのは、コンピュータのシステムだけではなく、仕事の仕方を見直すいいタイミングなんです。既存の仕事のまま、システム再構築すれば業務が改善されるというのは幻想です。ただこの幻想を見ている日本人って結構多いのです。

既存のシステムに拘らず、どういうインプットをして適正なデータを溜め込み、業務が回るだけの必要最小限のアウトプットを作ることをすれば、結果としてシンプルで拡張性の高いシステムになるのです。

アメリカのIT企業のGAFAは古いシステムとは全く関係ない独自のシステムを作り上げました。アメリカの成長産業は「前例踏襲」ではなく「前例打破」なのです。前例踏襲に拘っている限り日本のITは進まず、昭和の時代の単なる紙の置き換えのシステムをいまだに続けているのです。日本で顧客とのやり取りをFAXという紙文化がまだ健在ということは、いまだに紙の置き換えのシステムが多く残っているのです。

システムが効率的かどうかって、データ入力画面を見ればある程度分かります。入力項目が非常に多い画面は効率の悪いシステムだと思っています。政府が作っているWEBの入力画面をみると頭が痛くなるほど入力項目が多いです。政府がデジタル化を紙の延長にしか考えていない証拠です。入力画面をみるとそのシステムの出来不出来がある程度わかります。

入力画面の無駄な項目については、30年くらい前からおかしいと思っていました。このおかしいという感覚は、年配の人だけでなく案外若い人も持っていないのです。何となく若い人は目の前にある業務を従順に受け入れている気がします。

個人的に若い人がシステム開発に携わる場合には、これって無駄なんじゃないかなという感覚を持ってほしいものです。システムに関して年配の人が言うことが正解とは限らないのです。

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