AIによる科学研究の自動化:「AI Scientist」が切り開く新時代
皆さん、こんにちは。今日は、科学研究の世界に革命を起こす可能性を秘めた驚くべき技術についてお話しします。Sakana AIという会社が開発した「AI Scientist(AI科学者)」というシステムです。この技術は、人工知能(AI)を使って科学研究のプロセス全体を自動化しようという、これまでにない挑戦的な取り組みです。
AI Scientistとは?
AI Scientistは、大規模言語モデル(LLM)などの基盤モデルを活用して、科学研究のあらゆる段階を自動化するシステムです。具体的には、以下のような作業を全てAIが行います:
新しい研究アイデアの生成
必要なコードの作成
実験の実行
実験結果の要約と視覚化
科学論文の執筆
さらに驚くべきことに、AI Scientistは論文の査読プロセスまで自動化しています。つまり、AIが書いた論文を別のAIが評価し、フィードバックを提供するのです。
なぜAI Scientistが重要なのか?
研究の民主化: 1本の論文を作成するのにかかるコストはわずか15ドル程度と推定されています。これにより、資金や設備の制約を受けずに、誰もが研究に参加できる可能性が開かれます。
研究速度の加速: 人間の研究者が何ヶ月もかけて行う作業を、AIは非常に短時間で完了できる可能性があります。これにより、科学の進歩が大幅に加速する可能性があります。
新しい発見の可能性: AIは人間とは異なる方法で問題を捉え、解決策を見出す可能性があります。これにより、人間だけでは思いつかなかった革新的なアイデアが生まれる可能性があります。
AI Scientistの仕組み
AI Scientistのプロセスは、大きく4つの段階に分けられます:
アイデア生成: 既存の研究をベースに、AIが新しい研究方向を「ブレインストーミング」します。必要に応じて、過去の論文データベースを検索して、アイデアの新規性を確認します。
実験の反復: 提案されたアイデアに基づいて実験を実行し、結果を視覚化します。
論文の執筆: 実験結果を基に、学術会議の論文形式に沿って論文を執筆します。
自動査読: 別のAIが論文を評価し、フィードバックを提供します。このフィードバックは、現在の研究の改善や将来の研究方向の決定に活用されます。
○ AIサイエンティストの概念図
AI Scientistは、まず一連のアイデアをブレインストーミングし、その新規性を評価する。次に、新しいアルゴリズムを実装するために、最近の自動コード生成の進歩を利用したコードベースを編集する。その後、AI Scientistは実験を行い、数値データと視覚的サマリーの両方で構成される結果を収集する。科学的な報告書を作成し、結果を説明し、文脈づける。最後に、AI Scientistは、一流の機械学習学会の基準に基づいた自動査読を作成します。このレビューは、現在のプロジェクトを改良し、将来のオープンエンドなアイデアの世代に情報を提供するのに役立ちます。
AI Scientistの成果例
Sakana AIの報告によると、AI Scientistはすでにいくつかの興味深い研究成果を生み出しています。例えば:
これらの研究は、AIによって自動的に実施され、論文として執筆されたものです。人間の専門家による評価でも、トップレベルの学会で「弱い採択」(Weak Accept)に値する質を持つものもあったそうです。
○ AI Scientistが作成した論文例「Adaptive Dual-Scale Denoising」
この論文は、いくつかの欠点(例えば、その方法が成功する理由についての解釈がやや納得できない)を含みながらも、AI Scientist自身が実施し、査読を受けた実験において優れた実証的結果を示す、興味深い新しい方向性を提案している。
現状の限界と課題
もちろん、AI Scientistにも現時点では限界があります:
視覚的な処理の限界: 現在のシステムは画像を「見る」ことができないため、グラフや図表の品質を評価できません。
実装の誤り: アイデアを正しくコードに落とし込めない場合があります。
結果の解釈ミス: 数値の大小比較など、基本的な判断でも時々間違えることがあります。
倫理的な懸念: AIによる大量の論文生成が、査読プロセスに負担をかける可能性があります。また、AIが危険な研究(例:新種のウイルス作成)を行う可能性も懸念されています。
将来の展望
AI Scientistの登場は、科学研究の未来に大きな影響を与える可能性があります。研究のスピードと効率が劇的に向上する一方で、人間の研究者の役割も変化していくでしょう。
また、オープンソースのAIモデルの発展により、将来的にはより多くの人々がAI Scientistのような技術を利用できるようになる可能性もあります。
ただし、AI Scientistが本当に革新的なアイデア(例:人工ニューラルネットワークの概念そのもの)を生み出せるかどうかは、まだ未知数です。人間の創造性や偶然の発見をAIが完全に再現できるかどうかは、今後の研究課題となるでしょう。
まとめ
AI Scientistは、科学研究の自動化という大胆な挑戦です。この技術が成熟すれば、科学の進歩が加速し、人類が直面する様々な課題の解決に貢献する可能性があります。一方で、倫理的な問題や人間の研究者の役割の変化など、新たな課題も生まれています。
AI Scientistの登場は、科学研究の世界に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。私たちは、この技術の発展を注意深く見守りながら、その可能性と課題について、社会全体で議論を重ねていく必要があるでしょう。
この記事は、Claude 3.5 Sonnetが作成しました。
○ 参考リンク
AI Scientistによる論文執筆の仕組みについて
AI Scientistによる論文執筆の仕組みが気になったので、GitHubのAI Scientistのリポジトリを調べてみました。
論文執筆に関するコードは、主にai_scientistフォルダ内のperform_writeup.pyに書かれているのだろうと当たりを付けて、Claudeに解説してもらいました。
Claudeの回答は以下の通りです。
ここで、3. 論文作成プロセスのperform_writeup() 関数が重要なのだろうと考えて、この関数についてClaudeに解説をお願いします。
Claudeの回答は以下の通りです。
「特定のプロンプトとヒントを使用して」論文の内容を生成させているということなので、これらのプロンプトについて解説をお願いします。
Claudeの回答は以下の通りです。
複雑な工程をたどって論文の内容を生成しているようですが、アブストラクト及びセクションごとの内容の生成を指示する「abstract_prompt」と「section_prompt」というものがあることが分かったので、これについて聞いてみます。
Claudeの回答は以下の通りです。
abstract_prompt = f"""We've provided the `latex/template.tex` file to the project. We will be filling it in section by section.
First, please fill in the "Title" and "Abstract" sections of the writeup.
Some tips are provided below:
{per_section_tips["Abstract"]}
Before every paragraph, please include a brief description of what you plan to write in that paragraph in a comment.
Be sure to first name the file and use *SEARCH/REPLACE* blocks to perform these edits.
"""
(日本語訳)abstract_prompt=「latex/template.tex ファイルをプロジェクトに提供しました。このファイルをセクションごとに埋めていきます。
まず、「タイトル」と「要旨」のセクションを記入してください。
以下にいくつかのヒントを提供します: {per_section_tips["Abstract"]}
各段落の前に、その段落で書こうとしている内容の簡単な説明をコメントとして記入してください。
最初にファイル名を指定し、SEARCH/REPLACE ブロックを使用してこれらの編集を行うことを忘れないでください。」
section_prompt = f"""Please fill in the {section} of the writeup. Some tips are provided below:
{per_section_tips[section]}
Be sure to use \cite or \citet where relevant, referring to the works provided in the file.
Do not cite anything that is not already in `references.bib`. Do not add any new entries to this.
Keep the experimental results (figures and tables) only in the Results section, and make sure that any captions are filled in.
In this pass, do not reference anything in later sections of the paper.
Before every paragraph, please include a brief description of what you plan to write in that paragraph in a comment.
Be sure to first name the file and use *SEARCH/REPLACE* blocks to perform these edits.
"""
(日本語訳)section_prompt =「{section} のセクションを記入してください。以下にいくつかのヒントを提供します: {per_section_tips[section]}
関連する箇所では、提供されているファイルの文献を参照して \cite または \citet を使用するようにしてください。references.bib に既に含まれていない文献を引用しないでください。新しいエントリを追加することも避けてください。
実験結果(図や表)は結果セクションのみに保持し、キャプションを必ず埋めてください。この段階では、論文の後のセクションにある内容を参照しないでください。
各段落の前に、その段落で書こうとしている内容の簡単な説明をコメントとして記入してください。
最初にファイル名を指定し、SEARCH/REPLACE ブロックを使用してこれらの編集を行うことを忘れないでください。」
abstract_promptとsection_promptは、直接定義されているわけではなく、perform_writeup() 関数内で動的に生成されているとのことです。また、per_section_tips 辞書に定義されているセクション別のヒントを利用して、指示を生成しているということが分かりました。
perform_writeup.py内のper_section_tipsの内容は以下の通りです。
per_section_tips = {
"Abstract": """
- TL;DR of the paper
- What are we trying to do and why is it relevant?
- Why is this hard?
- How do we solve it (i.e. our contribution!)
- How do we verify that we solved it (e.g. Experiments and results)
Please make sure the abstract reads smoothly and is well-motivated. This should be one continuous paragraph with no breaks between the lines.
""",
"Introduction": """
- Longer version of the Abstract, i.e. of the entire paper
- What are we trying to do and why is it relevant?
- Why is this hard?
- How do we solve it (i.e. our contribution!)
- How do we verify that we solved it (e.g. Experiments and results)
- New trend: specifically list your contributions as bullet points
- Extra space? Future work!
""",
"Related Work": """
- Academic siblings of our work, i.e. alternative attempts in literature at trying to solve the same problem.
- Goal is to “Compare and contrast” - how does their approach differ in either assumptions or method? If their method is applicable to our Problem Setting I expect a comparison in the experimental section. If not, there needs to be a clear statement why a given method is not applicable.
- Note: Just describing what another paper is doing is not enough. We need to compare and contrast.
""",
"Background": """
- Academic Ancestors of our work, i.e. all concepts and prior work that are required for understanding our method.
- Usually includes a subsection, Problem Setting, which formally introduces the problem setting and notation (Formalism) for our method. Highlights any specific assumptions that are made that are unusual.
- Note: If our paper introduces a novel problem setting as part of its contributions, it's best to have a separate Section.
""",
"Method": """
- What we do. Why we do it. All described using the general Formalism introduced in the Problem Setting and building on top of the concepts / foundations introduced in Background.
""",
"Experimental Setup": """
- How do we test that our stuff works? Introduces a specific instantiation of the Problem Setting and specific implementation details of our Method for this Problem Setting.
- Do not imagine unknown hardware details.
- Includes a description of the dataset, evaluation metrics, important hyperparameters, and implementation details.
""",
"Results": """
- Shows the results of running Method on our problem described in Experimental Setup.
- Includes statements on hyperparameters and other potential issues of fairness.
- Only includes results that have actually been run and saved in the logs. Do not hallucinate results that don't exist.
- If results exist: compares to baselines and includes statistics and confidence intervals.
- If results exist: includes ablation studies to show that specific parts of the method are relevant.
- Discusses limitations of the method.
- Make sure to include all the results from the experiments, and include all relevant figures.
""",
"Conclusion": """
- Brief recap of the entire paper.
- To keep going with the analogy, you can think of future work as (potential) academic offspring.
""",
}
(日本語訳)
"要旨 (Abstract)":
論文の概要
私たちが取り組もうとしていることは何か、そしてなぜそれが重要なのか?
なぜそれが難しいのか?
どのようにしてそれを解決するのか(つまり、私たちの貢献!)
どのようにしてそれを解決できたことを検証するのか(例:実験と結果)
要旨がスムーズに読めて、動機付けがしっかりしていることを確認してください。これは、行間に改行を挟まずに、一続きの段落として記述してください。
"序論 (Introduction)":
要旨の長いバージョン、つまり論文全体の概要
私たちが取り組もうとしていることは何か、そしてなぜそれが重要なのか?
なぜそれが難しいのか?
どのようにしてそれを解決するのか(つまり、私たちの貢献!)
どのようにしてそれを解決できたことを検証するのか(例:実験と結果)
新しいトレンド:貢献を箇条書きで具体的に列挙する
余裕があれば、将来の研究についても言及!
"関連研究 (Related Work)":
私たちの研究に関連する学術的な「兄弟」、つまり同じ問題を解決しようとした他の文献。
目標は「比較と対比」を行うこと。彼らのアプローチが仮定や方法のどちらかでどのように異なるか? 彼らの方法が私たちの問題設定に適用できる場合、実験セクションでの比較を期待します。適用できない場合、その方法が適用できない理由を明確に示す必要があります。
注意:他の論文が何をしているかを単に説明するだけでは不十分です。比較と対比が必要です。
"背景 (Background)":
私たちの研究に関連する学術的な「先祖」、つまり私たちの方法を理解するために必要なすべての概念と先行研究。
通常は、問題設定と記法(形式化)を正式に導入する「問題設定」サブセクションが含まれます。我々の方法に関連する特定の仮定や特異な点を強調します。
注意:私たちの論文が新しい問題設定を貢献の一部として導入する場合、別のセクションを設けるのが最適です。
"方法 (Method)":
私たちが行うこと、その理由。問題設定で導入された一般的な形式に基づき、背景で紹介された概念や基礎をもとに詳細を記述します。
"実験設定 (Experimental Setup)":
私たちの手法が機能するかどうかをどのようにテストするか? 問題設定の特定の実例と、この問題設定に対する私たちの方法の特定の実装詳細を紹介します。
不明なハードウェアの詳細を想像しないでください。
データセット、評価指標、重要なハイパーパラメータ、および実装の詳細を説明します。
"結果 (Results)":
実験設定で説明した問題に対して私たちの方法を実行した結果を示します。
ハイパーパラメータや公平性の問題に関する記述を含めます。
実行され、ログに保存されている結果のみを含めます。存在しない結果を想像しないでください。
結果が存在する場合:ベースラインとの比較を行い、統計と信頼区間を含めます。
結果が存在する場合:特定の手法の一部が関連性を持つことを示すためのアブレーション研究を含めます。
方法の限界について議論します。
実験の結果をすべて含め、関連する図をすべて含めるようにしてください。
"結論 (Conclusion)":
論文全体の簡単なまとめ。
このアナロジーを続けるなら、将来の研究は(潜在的な)学術的「子孫」と考えることができます。
AI Scientistのコードの一部を利用した論文作成実験
ここで、per_section_tipsを利用して論文を書くことができるか試してみます。
Claudeの回答は以下の通りです。
実験結果の数値は架空のもの(ハルシネーション)だと思いますが、論文らしきものが生成できました。このシステムの実力を感じるとともに、開発したsakana.aiも課題として指摘していますが、注意しないと簡単に不正な論文ができてしまうという恐ろしさも感じました。(もちろん、実際にこのシステムを利用する場合には、本物の実験結果が使用され、査読システムなどによってリスクが軽減されるはずです。)