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ほう、そうか?放送法の活用を考える〜SNSの自由はそのままで、偽広告や偽情報拡散を一掃するシンプルな方法〜

SNSのカオスはなんとかならないのか?


昨今、だれでも多少はそう思うだろう。

SNSは偽情報が紛れ込むことがある。などというなまやさしい状況ではなくなった。

  • ちょっと目につくニュースはほぼ偽情報。

  • 広告はほぼ詐欺広告。

  • 有名人のアカウントはすべて偽アカウント。

という惨状になってしまった。

これではSNSは死んでしまう。

もともと、SNSはまだまだ普及途上だ。本当に便利なメディアにすることができればまだまだ利用を増やす余地がある。しかし現状では、よほど情報スキルの高い人でなければお勧めできないし、利用者も、何を信じてよいかわからない。うんことカレーを混ぜて食わせるような状態では、正常な感性の人はとても利用する気にならないだろう。
利用者も、発信者も、プラットフォーマーも、現状はそろそろ我慢の限界を超えつつあると思う。にもかかわらず、たとえばTwitterを再生しようとするイーロンマスク氏もずいぶんと難航している。なにかよい方法はないものか?

そこで、「放送法を活用してはどうか」と考えてみた。

もちろん僕はイーロンマスクが失敗したことをうまくできると思うほど、うぬぼれてはいない。しかし、「放送法を活用してみたら」と、ちょっと漏らしてみたところ、まんざらでもない反応があった。少なくともこのアプローチに関心を持つ人はいるようだ。

今後いろんなアイデアは出てくるとして、僕が考えたことも、参考になるかどうかはわからないが興味は持たれるかもしれない。というわけで、こんなことを考えてみたよ、ということをちょっと説明してみたい。

SNS の問題を整理する

SNSの問題は、そのほとんどがそれが「通信」であることだ。

まてまて、早まるな。
SNSを放送と同じように規制するのか?それはアカン!

そんなことは考えていない。必要ないと、思う。最後まで読んでもらえばわかるが、僕の考える放送法の適用で、これまでより発信がやりにくくなったり、手続きが煩雑になることはないはずだ。
ではおちついて、順番に。

まず、SNSが通信であることで、何が困難かをおさらいしよう。
例えば、誰かが選挙に関するまったくの虚偽情報を流したとする。これは問題だ。ではどうやって防止するか?
現在、SNSで発信されるこうした情報はほぼ匿名アカウントだ。良くて、誰が所有してるかわからない匿名化された架空法人である。
だから、不適切な発信を大量に撒こうと思えば簡単だ。会社作ってメッセージをなげ、広告料を払えば、撒いてくれる。
では、SNS運営企業はなにもチェックせずに撒いているのか?その通り。なぜチェックしないかといえば、それは通信だからだ。これを事前に確認しようとすると、通信の秘密や言論の自由に抵触する。
そして、問題が認識され対応しようとしても後手後手になり、誰か何の目的で偽情報を拡散したかもわからない。

放送なら当然内容が正しいことが求められる

そう。プラットフォームが放送局とみなせるなら、この問題はほとんど解決するのだ。放送事業者は、「放送の品位に」責任を持つ。なので、虚偽や、詐欺はもちろん、差別や人権侵害も、放送事業者の責任になる。この責任を持たせることが大事で、検閲をする必要などはない。放送局なんだから、問題をおこさないようにきちんと管理してね、とお願いすればよいだけ。

もちろん、放送局は、「いや、放送局としてはきちんと管理していたが、番組責任者が不適切な番組を作った」と主張することはできる。しかしなにもしないわけにはいかないし、番組を選択するのは放送局の責任だから、現状のようなやりたい放題にはならない。なにより、放送なんだから、放送番組を「放送局」がチェックしたり「放送すべき内容」を選ぶのになんの問題もない。プラットフォームと違い、放送事業者は内容の品位を保つ義務があり、また誰が発信しているかは明確なので、問題を解決しろ、と指示すればよい事になる。

もちろんSNSは放送じゃない

だから、プラットフォーム自体に放送局の責任を追わせるのはおかしいし、普通のSNS利用者に放送局の責任を追わせるのはもっとおかしい。
しかし、明らかに放送であるものだけを放送として管理できれば良いではないか?

SNSはなぜ放送じゃないんだ?放送ってなんだ?

というところを考えてみよう。
SNSやメールは普通は放送じゃない。これはだれでもわかる。
しかし、たとえばNHKの関連会社がインスタでニュースサービスを行ったとする。NHKニュースよりNHKインスタの方が視聴者数が多い。これはSNSなのか?放送なんだろうか?

それは放送ではない。電波をつかってないからだ。<-本当に?

今時、そんな主張をする人はいるかな?電波を使うことが本質だろうか?と僕は思う。そもそもニュースを見ているときに、それが電波を伝わったか、IPネットワークで伝わったか、そんなことを気にするのか?そんなことを気にするのは、
やっぱり1000baseTケーブルだと音が違うのよ、と悦にいってるオーディオマニアだけ
だろうよ。
これらは、ネットワークでいえば物理層、ネットワーク層の区別だが、そんなもので法的区分をするのはおかしい、と僕は思う。
では、放送と通信は、利用者の体感的にはどう違うか?放送というのは、発信者が不特定多数にむけて発信し、公衆が受信できるような伝送形態のことだ、と僕は理解している。インスタだろうが、電波だろうが、100万人の公衆が受信していれば、それは電波の放送と社会的には同じ効果を持つ。それを法的に「電波だから放送ではない」とするのはおかしい。公衆が受信するから放送なのである。

多数であっても公衆でなければ放送とする必要はないだろう。たとえば、某宗教団体の発信するコンテンツが放送として不適切でも、まったく問題ない。それはだれも文句は言わないだろう。信者しか見てないからだ。信者は公衆ではないから、放送法は適用する必要はないように思うのである。

放送法では実はすでにそうなっている、ように見える?

ご存知のように放送法をみてみると、法律上はすでにそうなっている(ように見える)。

放送法における放送の定義
「第二条一  「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。」

では「電気通信」ってなんだ?
電気通信事業法
「 電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。」
優先、無線を問わない。

なんだもうちゃんとそうなっているではないか!

つまり文言を素直に解釈すれば、インスタで100万人が受信するニュースを流している人はすでに「放送」をしているのである。極論だけど、文字通りによめばそうなるように僕は思う。

つまりキモは、「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信」なら、放送として扱うべきだろう。どうすればそれが実現するか、ということだ。

アイデアはシンプルだ。単にSNSのカテゴリーとして放送を定義する

これだけだ。実にシンプルだ。これまでのSNSは一切制限する必要はない。しかしその中に「放送」というチャンネルを新設する。
使いたくない人は使わなくてよい。使いたい人だけが使えばよいのだ。
これは、法律上は今すぐにでも可能だ。なぜなら放送法上の放送の定義は、
電気磁器的な方法で公衆に伝達する
という定義だからだ。なので、あとはSNSの一部を「放送」チャンネルにする行政的措置を定めれば良い。
法文はまったく変える必要がない。
いろんな方法がある。例えば、発信者が「私の発信は放送として発信したい」としたら放送にする。また、受信されるメッセージ数が100万を超えたら放送と定義するのでもよい。
とにかく、技術的に放送と通信の区別がしやすいように、「公衆」の定義を行政的に指定すれば、それで放送と通信の区分が完了する。

たとえば、だれもが放送と認める程度の受信者数、視聴率0.1%以上としよう。これはテレビ番組のなかでもそこそこ高い視聴率の方である。人口にすると10万人だ。これを「公衆」と定義する。

フォロワー10万人のインスタは放送。
99999人なら通信。
シンプルだ。

これをどう技術的に実現するか?
フォロワー99999人までは、なにもしない。1万人になったら、
おめでとうございます。あなたは放送局の規模に達しました。放送局になりますか?
y/n
と確認する。yなら放送局の登録をすれば良い。

これまでの偽情報はどうするのか?

ここが実はポイントだ。何もしない。放送を選択せず、広く拡散するのは、放置する。つまりなんのきせいもない。それは問題ない。
しかし、信用が欲しい発信者は、この制度の実施後は、ほとんどが放送を選択するだろう。わざわざ海賊放送を自ら名乗る必要なもないからだ。
なので、放送でないのに拡散したメッセージは、「極めて怪しい」とわかる。それで十分だ。

放送に免許は必要?

このとき、いちいち免許をとらなければならないとすると、やや面倒だ。で、登録についてみると、
「第百二十六条 一般放送の業務を行おうとする者は、総務大臣の登録を受けなければならない。ただし、有線電気通信設備を用いて行われるラジオ放送その他の一般放送の種類、一般放送の業務に用いられる電気通信設備の規模等からみて受信者の利益及び放送の健全な発達に及ぼす影響が比較的少ないものとして総務省令で定める一般放送については、この限りでない。」
とあるので、総務省が登録しなくていいよ、と、決めれば登録もしなくても良さそうだ。
しかし、放送と通信の違いは、
1 匿名放送というものはない
2 放送する人は一応責任がある

匿名アカウントが匿名のままではさすがに良くないから、住所氏名、連絡先は登録してもらう。

1. フォロワー数が10万人を超えると、「放送局になるか?」という確認が行われる。
2. 了承すれば、発信者の属性が放送局に転換され、そのまま発信が続く

最初から放送局の属性を選択していれば、フォロワー数が増えた歳に確認する必要すらない。発信者にとっては何の手間もかからない。
放送内容や品位の行政によるチェックはしない
「そして、放送であることを理由に、発信内容を厳しくチェックするのですよね?」
早合点しないでほしい。そんなことは必要ない。NHKの内容チェックを行政のだれかがやっているか?やっていない。

某政治家が独自放送局を作るのは自由だし検閲はない。

放送には表現の自由、言論の自由があるのだ。だから放送法の規制はあるが、外部から干渉するわけではない。自主的にチェックするだけである。

じゃぁ何がかわるのか?

いい質問だ。
NHKの発信内容を外部で事前チェックして差し止めたりはしない。放送の検閲はされないのだ。しかし放送であるから、放送事業者としての責任が生じる。たとえば、以下が求められる。
第4条
 公安及び善良な風俗を害しないこと。
 政治的に公平であること。
 報道は事実をまげないですること。
 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

そして罰則もある。内容に疑義があれば、確認が求められるし、違反への罰則もある。事前の検閲はないが、もちろん問題が野放しにされるわけではなく、責任は追及されるし、逃げられない。
そして放送は匿名では認められない。
ここが重要だ。

要するに、自身が信念をもって発信する限りこれまで通り

である。発信するまではなんの制限もない。ただし、放送事業者が匿名ということはありえないから、登録時には責任者は登録しなければならないし問題があれば追及される。それだけのことである。
できないのは、匿名の海賊放送がそれと解らすに正体不明の発信をすることだけだ。僕の考えでは、これだけで、SNSの発信のほとんどの問題はかなり解消されると思うのだ。問題は、発信者を隠して、あるいは詐称して、偽情報をそれと区別できないように配信できることで、こうした放送カテゴリーが明示されれば、ほとんどの受信者は、放送であるがそうでないかを、まず情報の信頼性の判断に使うことができるはずだと思うのだ。

プラットフォーマの仕事はすごく楽になる

そしてプラットフォーマのシステム的な仕組みは非常に簡単だ。
「放送ではない」発信は公衆に拡散しなければよいだけである。フォロワー99999までなら、これまでとまったくかわらない。広告も99999件以内なら関係はない、とすればよい。
プラットフォーマの責任はすごく軽くなる。

公衆が受信するものと、個人の通信を同じルールでは扱えない

というところに問題があったのではないか、と思う。
こうして、試みに放送として扱ったらどうなるか、を考えてみると、放送とするだけで大部分の問題は解決しそうに、僕には思える。
むろん放送であっても虚偽の報道は行えるし、詐欺広告はなくならないのではないか、という意見はありそうだ。しかし、情報をガチガチに規制することが求められているわけではない。誰がやっているかわからないような、ステルスなゴミが、大量に拡散されることが問題なのだろうと推測する。

匿名も許され、発信者の秘匿性が保障される通信と、発信者は完全に明らかで、登録に多少の手間があり、責任を負わされている放送では、おそらく、問題発生量の規模が違ってくるだろう。

僕はこの程度の縛りでも、十分問題は解決するし、せっかくだれもが自由に発信できるというSNSの特性は、あまり毀損しない方が良いと思うのだ。
放送の検閲や、細かいチェックなどは、言論を萎縮させる。本当に詐欺とか完全な誤り以外は、あまり細かい規制をすべきではないと思うのだ。

まとめ

ながながと説明したから、アイデアを簡単にまとめておく。やることは以下の2つだけだ。
1 SNS発信者は一定条件で放送局を名乗れる。それは、受信者もわかる表示とする。
2 放送及び放送局には現行の放送方がを適用する。

これだけだ。シンプルでしょう?

面白いね、と、思われただろうか?

まぁ、さすがに、たぶんもっと頭のよい方々が、別途いい方法は考えていらっしゃるとおもう。実際の対策は、専門家に任せたい。話のネタに一つのアイデアとして提示させていただいた。

おもしろい、と思っていただければ幸いです。


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