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三人目の、唯一無二の兄へ

お兄ちゃんが無期限活動休止を発表した。



「お兄ちゃん」というのは、私が大学一年生のときに出会ってから役者として憧れ続けている烏丸亮さんのことだ。

地元にいる二人の兄と違って血縁関係もなければ法律上の兄でもない。大学時代血の気の多かった私が急にキショい呼び方をし始めただけだ。

それだけ、烏丸亮は鮮烈だった。

今はあのときに戻って、お兄ちゃんと呼ばせてほしい。



サークルの先輩と共演した作品で初めて観て、役者面会に行って、威厳のある宰相の役も優しくて手厚いファンサービスも、完全に刺さってしまった。

それから、いろんな舞台を見せてくれた。
シアターグリーンのベースシアターに出たときの面会で「ビッグツリーシアターでも素敵な作品を沢山やっているから観てみるといいよ」って教えてくれて、その次に出たのがビッグツリーシアター。
メインの役ではなかったけど、濃くてヤバい奴なのにかっこいい役だった。そこで今でも私に良くしてくださる濃いファン仲間の方がファンになった。
運命的で奇跡的だったな。


様々な作品を見せてくれる中で、一瞬たりともつまらない芝居を私に見せなかった。あまり気に入らない舞台に出ても、お兄ちゃんだけはその心情を、熱を、真摯に伝えてくれるから、退屈させてはくれなかった。


そんな中で私は役者として最初の夢を見た。
「お兄ちゃんと共演したい」


人として素敵で、役者としても素敵なお兄ちゃんと、私が唯一自由になれる舞台上で出会ってみたくなった。

その夢を見始めた頃、先輩の公演に出るくらいだから遠くなかったはず。

でも、ビッグツリーシアターに立つし、2.5にも出るし、一時期事務所入るし、どんどん遠くなっていくなって思った。
(さすがにこれで「元々近くねえじゃん」とは言わせねえ。)


コロナ禍でも透明なシールドだらけの中笑わせてくれた。配信だって頑張って、ミスター日本のゆかた2021審査員特別賞をとった。戦国炒飯のオーディションだって選ばれなかったけど大きな夢を見せてくれた。


殺陣だってすごくて、舞台に欠かせない存在になっていった。





どんどん高みへ上るお兄ちゃんと、つまづいて進むことができずにい続けていた私。


役者最初の夢は遠くなっていった気がしていた。




それでも最近の私は、沢山の人に支えられながら人生の大整理をして、また演劇ができるように動き出していた。


動き出すの、遅かったかな





役者としてずっと進化していたけど、出演数は減少傾向にあった。

ずっと走りながら、人生は散らかしちゃってたのかな。




いや、そもそも整理された人生ってなんだよ。私も使う言葉だけど、上手く定義できなくて、「普通にきちんと収まりながら生活する」みたいななんか嫌な語彙しか出てこないのよ。



悔しいよ。役者最初の夢を叶える希望がかなり減っちゃったんだもん。
この前Vの推しの相方が無期限活動休止から戻ってきたけど、理由が違うからそっちの嬉しさはあってもこっちの慰めにならないんだよ。





お兄ちゃん、ちゃんとした整理しようとしててえらいよ。なんとなくわかってたよ大変であろうことは。

下手すぎて整理しようとして散らかすみたいな真似する私みたいにはならなさそうだね。



ただの保険だとしても、終わりにしないでいてくれてありがとう。

あまりに沢山のものをもらった私は幸せ者だよ。



私はこれから演劇に出られるようにパワーをつけていくよ。

お兄ちゃんが演劇やりたいって言い出すときには主催公演なんかやってるかもね。


私の役者最初の夢、ちょっと変わったよ。


お兄ちゃんと舞台上で出会うんじゃなくて、私がお兄ちゃんを同じ舞台に立たせるんだ。




とっ散らかった私を見守って、そのときが来たらまたよろしくね。

【募金箱】病人ですが演劇も被写体もこれからやっていきたいです。サポートしてくれたらもっと色々できちゃうかもしれないので、興味があれば是非。