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ヒント-014

石山は自分の振付/演出作品で、自ら出演してしまうことが多い。
これは出演料等の予算的な部分も関係しているのだが、そのパートは非常に慎重にクリエーションを進めている

当たり前だが、自分の体の動きを自分でリアルタイムで、第三者の視点で確認するはできない。スタジオにある鏡を見ても、首をそちらに向ける等、余計なアクションが入って、「その時の動きそのもの」を目視することはできない
ただ、動いている際の、自分の体内の感覚は直接的に感じられるので、この情報はかなり役に立つ。「自分が指定したこの動きは、こんなに体力的に辛かったのか」というような、他の出演者が置かれている状況を、より体感的に知ることはできる。

そういうこともあって、自分はクリエーション及びリハーサルの時に、かなりの時間ビデオを回してる。バックアップの映像データは、もう何テラもの容量になっている。
最近は、リハーサルを収録してすぐにダンサー達と確認ができるように、画面の大きいiPadを使い、「体の動きの試演→画像を見ながらの確認ミーティング」をクイックに進めている

とにかく、重要になるのは「他人の目」だ。自分はビデオを回しながらも、知り合いの信用出来る第三者に、体の動きのフレーズ展開を見てもらう事も多い。
パフォーミングアーツ関係者でもいいが、別のフィールドの第三者を招く方が、意外な視点でのアドバイスをくれることも結構あるので、より刺激的だ

もちろん、忌憚なく自分の意見を口にしてくれる人である事が肝要ではあるが、同じようなフィールドの人達からのアドバイス「のみ」で、自分のクリエーションを貫徹してしまうと、「驚き」が入り込む余地が減ってしまうように思うのだ。

例えば、ダンス作品のクリエーションで言えば、「踊らない」人達の意見は、非常に参考になる。自分達が考える「当たり前」が通用しないシチュエーションは、こちらが「いかに狭い世界で、ものを考えてしまっている事実」と「想定していない方向への作品の拡張性」を気付かせてくれるのだ。
そして収録映像を元にディスカッションを進める事は、そういう「第三者」の参加を容易にする。具体的なポイントを明示しやすいのだ。

もちろんダンサーも同じだ。振付家のアドバイスがより明確になり、ダンサー自身も「このフレーズは、観客(席)の視点でこう見えているから、こういうアドバイスがディレクターから来たのか」と自身の中で即座に合点がいく例が多いのだ。
また、当然だが、「振付家はこのポイントの事を言っているのか? あのポイントなのか?」という咀嚼する事に手間取ってしまう事も減る。動画の説得力は大きいのだ。

リハーサル・スタジオに、毎回、それなりの重さの機材を持ち込むのは、辛いかもしれない。それは分かるが、ビデオ収録+即座に再生出来るシステムを、持ち込む習慣をつければ、疑似的に「第三者の目」を獲得出来るのだ。

これをやるかやらないかはパフォーマンス作品のクオリティアップに、深く関わってくるように思う。

(文責・石山雄三)

次回は10月17日、掲載予定。

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全てのサポートは、次のクリエーションに有効活用されます。 アーティストとしては、これが本当に大きな力となるのです。