PC作業用の椅子は「オフィスチェア」を「中古」で買え! ~正月に椅子がブッ壊れたのでワークチェア選びの基礎知識を1万8000字で解説~

はじめに:正月に椅子がブッ壊れた話

こんにちは。今回は初のnote記事ということでワークチェアの選び方について書こうと思います。

ワークチェアというのは、自分の部屋で使う作業用の椅子です。つまりPCでだらだらネットを眺めたり、ゲームをしたり、たまーに仕事したりする時に座るチェアです。
俺も今、この記事をワークチェアに座りながらキーボードを叩いて書いてます。海外ではタスクチェアと呼ばれることもあるそうです。なんだかカッコいいですね。

なんで椅子なんかの話をしようと思ったかと言うと、今年の正月に俺が7年間使っていた椅子がブッ壊れたからです。
元日の朝、いつものように椅子に座ろうとするとバキッという縁起のいい音がしてガスシリンダーが死にました。縁起の良い年明けですね。

前から椅子については興味があって結構調べてたんですが、今回新しい椅子を探してあちこち彷徨った結果、ワークチェア選びについて結構な知見が得られた気がしたのでnoteで共有しようと思った次第です。

一応言っておくと、俺は椅子メーカーの社員でも家具店の社員でもないです。ただの椅子がブッ壊れただけの一般人です。
しかしその分、商売とか宣伝とか案件とか忖度とかステマとかアフェリエイトとかアドセンスとかのオトナノジジョーとは無縁のリアルな情報をお届けできると思います。あんまり深いことは考えず、気楽に読んでください。

忙しい人向けの結論:椅子はオフィスチェアを中古で買え!

最初に結論から言うと、家で使う椅子(ワークチェア)が欲しい人は「オフィスチェア」を「中古で安く買う」のがオススメです。

オフィスチェアというのは、オフィス家具メーカーが法人向けに作っている椅子のことです。オフィスチェアという名前ですが、個人でも買えますし別にオフィス以外で使っても誰にも文句は言われません。

なぜオフィスチェアが良いのかと言うと、単純に製品としての質が高いからです。
そのへんの安物の椅子は、クッションはペラいし背面は固いし全体的にグラグラしてギシギシ言うし、すぐ壊れるしロクなもんじゃありません。

オフィスチェアは椅子の中でもいわばプロユース向けの製品なので、座り心地・機能・耐久性、どれもその辺に売っている安い椅子より何段階もレベルが上です。
具体的にはオカムラやコクヨやイトーキやウチダやハーマンミラーやスチールケースやヘイワースといった有名オフィス家具メーカーの椅子なら、どれを選んでも大ハズレはないです。

しかし、そうした有名オフィス家具メーカーのオフィスチェアには一つ大きな問題点があります。新品だとバカ高いことです。

Amazonより

上の画像は、オフィスチェアの定番メーカー・オカムラの人気モデル「シルフィー」と最上位モデル「コンテッサ セコンダ」をAmazonで検索したところですが、安いものでも9万円近く、高いものは20万円以上もします。2万円じゃありません、20万円です。
一見ぼったくり価格に見えますが、質の良いものなので仕方ありません…みたいなことを俺は言いません。高すぎです。ぼったくりです。

しかし、このぼったくりには理由があります。オフィスチェアというのは基本的に企業がオフィスを開くときに数百脚とかの単位で注文するものなので、大量購入による値引きを前提とした定価になっているからです。
個人が自宅用に1脚だけオフィスチェアを買うというのはそもそもイレギュラー気味な販路なわけで、その分割高な買い物になってしまうわけですね。

つまり、ここで俺たちは2つの苦しい選択を迫られるわけです。品質に妥協して安かろう悪かろうのヘボチェアを買うか、それとも値段を妥協してしっかりした椅子のために20万出すか?

いえ、実はもう一つ選択肢があります。それが中古でオフィスチェアを買うという第三の道です。

幸いにもオフィス用品業界は中古流通が発達しています。オフィスの移転や倒産の際にまとめて売り払ったり、決算前に予算を使い切るためにまだまだ使える事務用品でもどんどん買い替えたりするから、などいろんなオトナノジジョーがあるそうです。

裏事情はともかく、そのお陰で俺たちは安く中古のオフィスチェアを入手するチャンスが得られるわけです。オトナノジジョーに感謝です。
中古オフィス用品は値引き率も高く、定価の5割~8割引はザラです。つまり2~3万円も出せば、定価10万円以上の高級オフィスチェアが入手できるわけです。
これが品質・値段共に妥協せず、いい椅子を安く手に入れる秘密の裏技です。みんながしぶしぶ安物で妥協したり、高級チェアに涙を呑んで万札を切っている裏で、「わかってる」人はちゃっかり8割引きで良いオフィスチェアを確保しているわけです。間違いなくこれが攻守最強、コスパ最高の選択肢です。オフィスチェアはいいものを中古で買え!

ワークチェアを買う7つの方法

ぶっちゃけ言いたいことは上で全部なんですが、せっかくなんでもう少し細かく解説します。

ワークチェアを買う方法は、大きく分けて以下の7つがあります。予算別に安い順から見ていきましょう。

1:ネット通販やホームセンターで売ってる安い椅子(3000円~1万円)

とにかく1円でもお金を節約したい、最低限座れさえすれば他はどうでもいい、という切羽詰まった人は、ネット通販やホームセンターで一番安い椅子を探しましょう。安さは正義です。

Amazonより

今Amazonで調べてみたところ、上記画像の約4500円のサンワサプライの椅子が最安値クラスのようです。

画像を見てもらうとわかりますが、実は俺はこの椅子を10年以上前に買ったことがあります。当時はもうちょい安くて3000円ぐらいでした。
昔は金がなかったので、普通にこの椅子でPC作業したりメシを食ったりしてました。今でも家にあります。3000円で10年保ってるんだから大したもんですね。

しかし実際に使っていた経験を踏まえて言うと、こうした安椅子は「一応椅子の形状をしているので、座ることはできる」というだけの代物で、それ以上ではないです。
クッションはペラペラで速攻でお尻が痛くなりますし、背もたれは「背中のS字カーブ? エルゴノミクス? なにそれ?」と言わんばかりのオマケのような代物です。リクライニング機能やアームレストなんて贅沢なものは当然ありません。
1日10分程度しか座らないのであればなんとかガマンできますが、本格的な作業をしたいなら、少なくとももう少しいい椅子を選ぶべきです。

一応言っておくと、俺はサンワサプライというメーカーは嫌いじゃないです。PC関連のアクセサリとかは安いので結構買うこともあります。しかし残念ながら、椅子は専門メーカーに任せるべきだと思います。

2:ネット通販で売っているそこそこの値段の椅子(1万~3万円)

では「もう少しいい椅子」を探してみましょう。Amazonで「ワークチェア」「オフィスチェア」と検索してみると、良さげなのがいくつか出てきました。

Amazonより

Amazonや楽天で検索すれば、こうした名前を聞いたことがあるようなないようなメーカー(失礼)のチェアが山のようにヒットします。
価格は2万円前後が多く、見た目もカタログスペックも悪くありません。
ランバーサポートやアームレストにリクライニング機能、物によっては立派なヘッドレストまで付いてきて、かなり豪華です。前述のサンワの3000円椅子と比べれば雲泥の差です。

おそらく、あまり椅子に詳しくない人ならこれで十分「いい椅子」だと思ってポチってしまうと思います。実際上記の何千何万と付いているレビューもそんな感じです。

ただ、俺としてはこういう名前を聞いたことがあるような(略)メーカーのチェアを通販で買うのはオススメしません。メーカー差別ではなく、単純に試座できないからです。

「試座」という謎ワードが普通に出てきましたが、これはそのまま「試し座り」のことです。
ワークチェアを選ぶ上で最も重要なのは、メーカーでも値段でもカタログスペックでも口コミでもなく、実際に座ってみてしっくり来るかどうかです。(これは椅子に限らず、体に触れて使うあらゆる製品に共通して言えることです。)

どんなに高級で評判が良い椅子でも、自分の体に合わずしっくり来ないというパターンは十分ありえます。
一番良くないのは、一度も座ったことがない椅子をカタログスペックやレビューだけを信用して買ってしまうことです。試着したことがない服を買うようなものです。服なら合わなくても気軽に返品したりメルカリで売れば良いですが、椅子の場合はそう簡単に行きません。

上で挙げたAmazonの2万円前後の椅子は、基本的に実店舗で試すことができません。なので通販でこれらの椅子を買うのはギャンブルです。
賭け事は嫌いではないという人は試してみるのも良いかもしれません。俺はビビリなので基本的に試座できない椅子は買いません。

3:ニトリやIKEAで売っているそこそこの値段の椅子(1万円~3万円)

ニトリ公式サイトより

試座という観点で言うと、ニトリやIKEAのような大型チェーン系の量販店は大きなアドバンテージがあります。実際に店頭で好きなだけ座って試すことができるからです。

特にみんな大好きニトリは全国どこにでもあるので座り放題です。
椅子について興味が出たという人は、とりあえず近所のニトリに行って片っ端からワークチェアに座ってみると良いでしょう。自分にとってどんな椅子がしっくり来るのか、大雑把にでも掴めると思います。
Amazonでレビューを頼りに椅子を選ぶぐらいなら、同価格帯のものをニトリかIKEAで納得行くまで試座してから買う方が絶対に良いです。

椅子を試座するときは、最低でも30分は座ることをオススメします。長く感じるかもしれませんが、スマホでもいじっていればすぐです。
座った瞬間のファーストインプレッションが良くても、少し時間が経つとなんだかしっくり来なかったりお尻が痛くなってきたりということはよくあります。恋愛と同じですね(?)

ちなみに俺もニトリやIKEAに置いてあるワークチェアは基本全て試座しましたが、製品の質はピンキリで、どれも良くも悪くも値段相応という感じです。
安いやつは前述のサンワの安椅子と大差ない程度ですし、逆に2万~3万円クラスだと専門メーカーのオフィスチェア(のローエンド・ミドルエンドモデル)ともそこそこ張り合えるぐらいのクオリティになってきます。
以下に俺が試座してめぼしいと思ったものを挙げておきます。

  • ニトリ バジーオ(執筆時価格:1万5900円)

    • リクライニング機能がカス(座面も一緒の角度で傾いてしまう)ですが、それさえ妥協すればクッションもそこそこ分厚くヘッドレストも付いているので、コスパは悪くないと思います。

  • ニトリ OC701(執筆時価格:3万9900円)

    • エルゴヒューマンパクリリスペクト商品です。俺は良いものはどんどん普及するべきだと思うので、こういうクローン系の製品には好意的です。エルゴヒューマンが欲しいけどちょっと高い…という人にはアリだと思います。

  • IKEA イェルヴフェレット(執筆時価格:2万4990円)

    • ヘッドレストがデカくて肘掛けも可動式で、この手の量販店で売っている椅子としてはかなりレベルが高いです。実を言うと俺も購入寸前まで行ったんですが、座高を最低にしてもちょっとだけ高く感じる点、座面が太もも裏をやや圧迫する点だけが気になって結局買いませんでした。大柄な人ならアリだと思います。ちなみにIKEAのワークチェアのキャスターには、座っていない時は自動でロックがかかるというガチのクソ仕様があるので注意しましょう。

  • IKEA スティルスペル(執筆時価格:2万9990円)

    • 座面・背面共にメッシュの本格的なチェアです。ゲーミングチェア扱いされてますが、一般的なゲーミングチェアとは別ジャンルです。これもメッシュチェアとして十分クオリティが高いんですが、脚(キャスター部分)の形状にクセがあって、蜘蛛の巣状に広がっているせいで座りながら脚を引くとカカトがガツガツぶつかるという致命的な問題があります。ぶっちゃけ欠陥レベルだと思います。椅子のデザインは見栄えより使い勝手を重視してもらいたいです。

4:ゲーミングチェア(1万円~4万円)


Amazonより

ワークチェアを語る上で避けて通れないのがゲーミングチェアです。
ゲーミングチェアというのは、レーシングシート風のチェアの総称です。明確な定義はありませんが、プロゲーマーとかの人が配信をするときによく座ってるアレを思い浮かべればとりあえず問題はないです。

今はゲーミングチェアがとても流行っており、様々なメーカーがプロモーションに力を入れています。その結果、椅子についてそれほど詳しくない人がなんとなく自室で使うチェアを選ぼうとすると、自然とゲーミングチェアに誘導される環境が整っています。プロモーションの勝利です。

しかし、俺としてはゲーミングチェアはまったくオススメしません。ぶっちゃけると俺はゲーミングチェアアンチです。
(これからしばらくゲーミングチェアの悪口を言うので、ゲーミングチェアが大好きな人は目を瞑っててください。)

俺がゲーミングチェアを嫌いな理由はいろいろあります。合皮がすぐに劣化してボロボロになるからとか、バケットシートが無意味な上動きづらいとか、デザインが派手で悪趣味とか様々ですが、一番大きいのは(特に背面が)体にフィットしないという根本的な理由です。

AKRacingやらnoblechairsやらDowinxやらBauhutteやら、有名なメーカーのゲーミングチェアはいろいろ試座してきましたが、どれも5分と座っていられないほどまったく体に合いませんでした。
ゲーミングチェアは頭と腰にクッションが付いていて、その位置を調節して背中のS字カーブを保つというのが基本的な設計思想です。しかし俺の場合は、体格のせいなのか(俺は平均身長痩せ型の成人男性です)椅子との相性のせいなのか、ゲーミングチェアに座ると腰と頭がクッションに圧迫され背中だけが浮いた意味不明な姿勢になります。

もちろん人間の体型は千差万別なので、ゲーミングチェアがしっくり来るという人もいると思います。そういう人はそれで問題ないです。
しかし俺のようにゲーミングチェアに向いていない体格の人間も少なからずいます。そういう人はゲーミングチェアを選ぶ必要はないです。ゲーミングチェアは良くも悪くもマニアックで人を選ぶ製品です。

5:オフィス家具メーカーの中古の椅子(1万円~5万円)

前述の通り、コスパ最強の「椅子選びの答え」です。中古に抵抗がない人はこの選択肢がベストです。

具体的には、オカムラ・イトーキ・コクヨの国内3大メーカーの椅子であれば、どれを選んでも大失敗することはないと思います。
とにかく安さを追求するなら1万円以下のローエンドのものを、コスパ重視ならら2~3万円のミドルエンドのものを、ヘッドレスト付きなど機能を重視する場合は5万円程度のものが目安です。

デメリットは、当然ながら中古であることです。「知らないオッサンが裸で座ってたかもしれない椅子なんて…」と思う人もいるかもしれません。ぶっちゃけ俺も最初はちょっとそう思ってました。でも大丈夫、3日も使ってれば中古であることは忘れます。慣れます。
それに中古オフィス用品店の商品は、基本的に会社の事務所で使われたものが払い下げられたものなので、オッサンが裸で使用済の代物は少ない…と思います(多分)。

後は、古いモデルだと寿命が短くなるのもデメリットです。
買う際はできるだけ製造年を確認して、新しめのものを選びましょう。だいたい椅子の裏にシールが張ってあってそこに書いてます。
良いオフィスチェアは頑丈なので、製造から10~15年ぐらいは普通に使えます。
仮に7年前に製造された個体でも、あと8年ぐらいは使えるはずなので悪くないです。10年前だと少し古めですが、それでも5年ぐらいは使えるはずなので安ければアリです。製造3年以内の新しいものなら10年以上は使えるはずなのでかなりラッキーです。

中古オフィスチェア選びに慣れてくると、まず製造年をチェックするクセが付きます。店で椅子の底面を覗き込んでる人がいたら、たぶん中古オフィスチェア沼の住民なので温かい目で見守ってやってください。

6:オフィス家具メーカーのローエンドモデルの椅子(2万円~5万円)


Amazonより

オカムラ・イトーキ・コクヨといったオフィス家具メーカーの製品は、前述の通り個人が普通に買おうとするとバカ高いですが、例外もあります。それが、最初から個人向けに作られたネット販売向けのモデルです。
具体的にはオカムラのビラージュシリーズ、イトーキのサリダシリーズ、コクヨのエントリーなどが該当します。

これらは基本的にネットで注文し、購入後に自分で組み立てるためコストが抑えられており、普通の法人向けモデルと比べてかなり値段が低いです。
例えばコクヨのエントリーは単体で2万3000円程度、イトーキのサリダの最上位モデルであるYL9Gでも4万7000円程度で、オフィスチェアのローエンド・エントリーモデルとしての役割を果たしています。
しっかりしたメーカーの椅子が欲しいけど中古はイヤ…そんなワガママボディなあなたのニッチな需要を満たすモデルと言えます。

ちなみに俺はビラージュを大塚家具で、サリダをイトーキのショールームで試座したことがありますが、やはりいずれも値段相応の品質という感じでした。
一流メーカーだけあってその辺の安椅子に比べれば遥かにクオリティは高いですが、同じメーカーのミドルエンド・ハイエンドモデルと比べてしまうと一段階見劣りする点は否めません。マイナーメジャー、二軍の帝王というところです。
同じ価格帯なら間違いなく中古チェアの方が質は高いです。新品という点にどこまで価値を見いだせるかですね。

加えて試座し辛い点もネックです。繰り返すように座ったことがない椅子を評判だけで買うのはギャンブルです。
ただ、オカムラ・イトーキ・コクヨといった有名メーカーはそこそこブランド力があるので、最悪失敗してもメルカリなどで売れるのはメリットです、椅子は送料が高い(メルカリの場合は概ね8600円~)のがネックですが、ある程度でも購入費が戻ってくるならマシですね。

サリダシリーズは購入検討している声もよく聞くので俺の感想を言っておくと、YL7が一番座り心地が柔らかくていい感じでした。YL8も悪くないですが、クッションがペラペラでした。使うなら上にクッションを足した方が良いと思います。YL9とYL9GはYL8と同じペラペラクッションに加え、背面とヘッドレストのエラストマー素材が岩のようにガチガチだったのでオススメしません。

7:オフィス家具メーカーのミドル~ハイエンドモデルの椅子(7万~20万)

金に糸目をつけないなら、有名オフィスチェアメーカーのハイエンド品を新品で買うのが最も安心です。
安めのモデルで7万、ボリュームゾーンで10~15万、ハイエンドで20万円あたりが目安です。

中古に抵抗がある人、中古ショップを巡ったり状態を確認したりするのがめんどくせえ! という人、自分が欲しいモデルが中古市場に出回っていないという人は、素直に定価で買いましょう。理想的な作業環境が得られるなら10万や20万出すのも決して悪くありません。

ただどうでもいいですが、この手の買い物をする時によく使われる「○年使うとして1ヶ月あたり○円と考えれば安い」みたいな言い方はなんかサギっぽいので俺は好きじゃないです。

で、どうやって中古でオフィスチェアを買うの?

以上を見ると、やはり中古でオフィスチェアを買うという選択肢がコスパ最強の結論であることがご理解いただけたと思います。異論がある人も、とりあえず理解したということにしておいてください。

じゃあ実際にどうやって中古チェアを買うんだという話ですが、これには大きく分けて3つの方法があります。

実店舗に行って買う

中古ショップの実店舗に行って買う方法です。
俺の経験上、オフハウスやセカンドストリートといった普通のリサイクルショップにはオフィスチェアはほとんど置いてないです。どうやら普通の人はオフィスチェアなんて買わないし、ましてやリサイクルショップに持っていくことはないようです。なので基本的には中古オフィス家具専門店で探しましょう。

一番有名なのが全国展開しているオフィスバスターズという店で、法人相手の営業がメインのようですが、個人でも問題なく購入できますし店舗に行けば試座もし放題です。
俺はこれまでオフィスバスターズで3回オフィスチェアを買ってます。中古でオフィスチェアを探しているなら、とりあえず一番近いオフィスバスターズの店舗に行って、片っ端から椅子に座りましょう。そこがスタートです。

オフィスバスターズの良い点は、購入から1年間の保証がついていることです。仮に買ったオフィスチェアがすぐにブッ壊れたとしても、1年以内なら返品・返金が可能だそうです。
幸いにも俺が買ったチェアが1年以内にブッ壊れたことはないので実際にどんな対応になるかは不明ですが、中古のリスクである品質面をある程度担保してくれるのはかなりありがたいです。

我ながらなんだか胡散臭い勧め方ですが、俺はオフィスバスターズの社員でも株主でもなく広告も貼ってないので、オフィスバスターズが儲かっても俺に一切得はないです。
中古オフィス用品点は意外とたくさんあるので、Googleマップで近くにあるかどうか検索してみてください。俺のオススメは東京・大阪・名古屋に店舗があるFULL道具屋 無限堂です。

実店舗に行くメリットは、やはり試座できる点です。
特に中古チェアは状態が千差万別なので、同じモデルでも個体によって製造年が古かったり新しかったり、クッションがヘタっていたり丈夫だったりとかなり違いがあります。可能であれば店に赴いて、気に入った個体を「指名買い」するべきです。

ただしネックになるのが営業時間で、例えばオフィスバスターズは平日の昼しか営業してません。名前の通りオフィスをバスターするのが本業なので、法人相手の取引が基本だからだと思います。
平日昼に仕事があるカタギの人は行きづらいと思いますが、ガチで椅子を選びたいなら有給を取って店に行く価値は十分あると思います。ちなみに上で挙げた無限堂は土曜日も開いてるので、カタギの人はそこに行きましょう。

ショップからネット通販で買う

大きめの中古オフィス家具店はだいたいネット通販もやってます。自社サイトでやってることもあれば、メルカリやヤフオクや楽天市場に出品しているパターンもあります。

実物を見られないのは大きなデメリットですが、近くに店がない人や店に行く時間がない人には貴重な購入手段です。買う前に年式など気になる点は店に訊ねてみるのも良いでしょう。

個人からメルカリ等で買う

個人がメルカリやヤフオクに出品しているものを直接買う方法もあります。椅子に限りませんが、こういう個人間売買は運がよければ相場よりかなり安い価格で購入できる掘り出し物が見つかる可能性があるのが魅力です。

反面、ショップと違ってアフターサービスは期待できません。特に中古チェアは状態が千差万別でチェックできないので、少なからずリスクがあります。
実際俺も一度、メルカリで中古チェアを買ったら発送直前に「機能が不具合が見つかった」とメッセージが来て、取引が中止になった経験があります。送られてから問題が見つかって揉めるよりは遥かにマシなので良かったのですが、そういうトラブルも起こり得るということです。

個人的には、そういうトラブルを避けるという点も含めて、やはり可能な限り実店舗に赴くのをオススメします。まったくインターネットってやつは、大事な時に信用できねえんだからさあ…。

ワークチェアの各機能:クッションかメッシュか、それが問題だ

次に、ワークチェアを選ぶ時に最低限知っておきたい各機能について簡単に解説します。

座面

お尻を載せる部分です。座っている時に一番体重がかかる部分なので、当然ながら重要なパーツです。
どんなに高級な椅子でも座面がダメだと5分と座っていられません。その意味ではオフィスチェアの心臓と言っていいぐらい重要な要素です。

一方で、座面は自分でクッションを買ってきて上に乗せればある程度フォローできるという考え方もあります。
俺の経験上、オフィスチェアがダメになる一番の要因は座面のヘタリです。どんな椅子でも使っているとだんだん座面のクッションが柔らかく弱くなっていき、底面の硬い部分にお尻が付いて痛くなってきます(これを「底付き」と言います)。逆に言えば座面さえケアできればオフィスチェアの寿命は伸びます。なので自分でクッションを用意して補強するというのは悪くない考え方です。

しかし、クッションを重ねた場合もベースになる元々の座面の質は座り心地に影響してきますし、クッションを重ねることで座高が高くなると背面とのバランスも変わってきてしまいます。
俺も前の椅子の座面がヘタったとき、いろんなクッションを試すクッション難民と化しましたが、結果的にはどれも一時しのぎ以上の成果は得られませんでした。やはり座面は元から良いものを選ぶに越したことはないというのが俺の結論です。

ワークチェアの座面は、大きく分けてクッションとメッシュというニつの素材があります。これはかなり大きな違いで、同じ機種でも座面がクッションかメッシュかによって別物レベルに座り心地が変わってきます。

クッションとメッシュ、どちらが良いのか? これはビアンカ派とフローラ派、はたまたティファ派かエアリス派かと同じぐらい好みが分かれると言われています。
しかし俺の独断で言っていいなら、基本的に座面はクッションの方が良いです。理由は単純に、クッションのほうが体圧分散性が高い、つまり座っていてお尻が痛くなりづらいからです。

コクヨ公式サイトより

これは俺の適当な経験則ではなく、日本を代表するオフィス家具メーカーであるコクヨも公式ページで言っていたことです(残念ながら今はそのページは消えてしまっているようなので、こちらの記事のスクショから引用しました)。
実際、コクヨが出している主要なオフィスチェアはすべてクッション座面です。有言実行ですね。

俺はメッシュ座面の有名なチェアはあらかた試座しましたが、どれも例外なく、座ってすぐにお尻のお尻の坐骨が痛くなりました。アーロンチェア、コンテッサセコンダ、エルゴヒューマン、すべてそうです。
メッシュ座面は通気性が良く、見た目がスタイリッシュというメリットもありますが、座り心地という点では人を選ぶ素材であることは間違いないです。
メッシュ座面が合わずに買い替えたという声は結構ありますが、クッション座面が合わなかったという話はほぼ聞きません。もちろんメッシュ座面に試座してみてしっくり来るなら問題ないですが、違和感があるようなクッション座面にするべきです。ということで俺はクッション派でありフローラ派でありエアリス派です。

背面

背面(背もたれ)も地味に重要です。
人間は座っているときでも姿勢を保持するために結構な筋肉を使っています。背もたれがないスツールのような椅子に座るとわかると思いますが、体を直立させようとすると腹筋が疲れてしまい、力を抜くと自然に猫背になって腰や背中に負担がかかります。人間は座っていると、自然と悪い姿勢になるようにできているのです。厄介ですね。

コクヨ公式サイトより

しっかりしたオフィスチェアは、ほぼ例外なく上の画像のように腰の部分が前に押し出されるカーブを描いた背面形状になっています。
これは人間の背骨のS字カーブに合わせた形状だからです。こういう椅子であれば、背中を背面にぴったり付けて座ることで、自然と腰や背中に負担の少ない姿勢を保つことができます。サンワの3000円椅子のように、腰の部分にフォローがない安椅子がダメな一番の理由はこれです。

重要なのは、人間の体型は千差万別であり椅子の背面がフィットするかどうかはその人次第だということです。
どんなに評価の高い椅子であっても、背面のカーブが自分の体型に合わないのであれば座り心地は大幅に悪くなります。必ず納得行くまで試座しましょう。

背面にもクッションとメッシュの二種類があります。メッシュ背面はハンモックのように弾力があって背中を支えるタイプ、一方クッション背面は固い樹脂をベースに薄めのクッションを敷いているタイプです。

座面ではあれほどクッションを推していた俺ですが、背面に関しては逆にメッシュ派です。これも理由は単純で、クッション背面はクッションが薄くベースの樹脂の硬さをダイレクトに感じてしまうものが多いからです。
素材にもよりますが、メッシュ背面は適度にたわんで背中の形にフィットしてくれます。
座面も背面も、最も重要なのは柔らかさとクッション性です。迷ったら座面はクッション、背面はメッシュ、これでOKです。

ランバーサポート

腰の部分を支えるパーツです。オフィスチェアの場合は追加オプションであることが多いです。

ランバーサポートは結構好みが分かれるパーツです。確かに腰当てがあると背中のS字カーブは保ちやすくなるのですが、逆に腰に耐圧が集中して違和感を覚える可能性もあります。
あった方が良いのでとりあえず付ける、というものではないです。試座して慎重に判断しましょう。

以前、近所の家具屋にオカムラのシルフィーのランバーサポート付きモデルが置いてあったので試座したことがあるのですが、これが最悪でした。プラスチック製のランバーサポートがとにかく硬すぎて、背骨を効果的に痛めつける拷問器具のようでした。

体格や好み、機種との相性もありますが、俺としては迷ったら付けなくてもいいと思っています。もし後で腰のサポートが物足りないと思ったら、クッションなどを自分で用意してある程度フォローすることもできますからね。

リクライニング機能

チェアの背面を後ろに倒す機能のことです。
姿勢が後傾になるほど背中に耐圧が分散されるので体への負担は減りますが、代償として体は動かしづらくなります。リラックスして動画を見たりゲームをしたりしたい場合は後傾姿勢が、反対に集中して作業したい場合は直立姿勢が向いています。

オフィスチェアのリクライニング機能は、「そもそも存在しないもの」「リクライニングは可能だが角度は固定できないもの」「何段階か決められた角度で固定できるもの」「無段階で自由に固定できるもの」の4種類があります。
基本は固定できないよりもできる方が良いです。椅子の上で寝そべってダラダラしたい!という人はロック機能の有無をしっかり確認しましょう。

加えて前傾チルト機能がある椅子もあります。
後傾とは逆に背もたれが前に傾くシステムで、机の上で書き物をしたり、液晶タブレットなどで絵を描いたりする際は前傾が向いていると言われています。
俺は書き物もお絵描きもしない前傾エアプなのでこの機能の有効性については語れませんが、毎日こうした作業をする人は条件リストに入れておいてもいいでしょう。

ヘッドレスト

頭を支えるパーツです。オフィスチェアの場合はたいてい追加オプションです。
リクライニングの角度を深くしていくとだんだんと頭を支えらづらくなってしまうので、深い後傾姿勢で座りたい人にとってはほぼ必須パーツとなります。
逆にあまりリクライニングしないなら、それほど必要はありません。むしろ邪魔になる可能性もあるので、自分の使い方を考えた上で検討しましょう。

しかし、ヘッドレストを重視してオフィスチェアを探すのはなかなか苦労するかも知れません。残念ながら、オフィスチェアのヘッドレストはショボいものが多いからです。
ハイエンドモデルであっても高さ調節すらできないものはザラで、ハーマンミラーのアーロンチェアやエンボディに至ってはそもそも純正のヘッドレスト自体が用意されていません。

そもそもオフィスチェアというのはオフィスで仕事するために作られた椅子なので、どうもヘッドレストに頭を載せてリラックスするという用途をあまり意図していないようです。
中古で探す場合も、ヘッドレスト付きのものは値段が跳ね上がり、数も少なくなります。俺も自分が社長だったら、社員の椅子にわざわざ追加料金を払ってまでヘッドレストを付けない気がするので、この辺は仕方ないかもしれません。

アームレスト

肘掛けです。「肘掛けがないもの」「動かない固定式のもの」「高さなどが調節できる可動式のもの」の3種類があります。
アームレストがあると、マウスを操作したりキーボードをタイピングする際に肘を乗せられるので、肩や腕の負担が軽減できます。

これについては簡単で、よほど深い理由がない限りは可動式のものを選んでください。動かないアームレストは単なる飾りで、ほぼ無意味です。
お金をケチって固定式アームレストのオフィスチェアを買い、激しく後悔したいことがある俺が言うんだから間違いないです。

昇降機能

椅子の高さを調節する機能です。
これはどんなに安いワークチェアでも付いてるので基本的には気にしなくていいですが、小柄な人の場合、座面を一番低くしても脚が床に付かないという問題が発生する可能性があるので、それだけは注意しましょう。

オススメ中古ワークチェア5選:迷ったらこれを買え!

以上を踏まえて、実際にどのオフィスチェアを中古で買えば良いのか具体例を挙げながら解説します。

オカムラ コーラル(中古相場:2万~4万円)

オカムラ公式サイトより

オカムラは国産オフィス家具メーカーの代表的の一つです。オフィスチェアの中では、大塚家具など大きめの家具店に置いてあることも比較的多いので、試座のチャンスが多いのがメリットです。

このコーラルは2012年に発売されたモデルで、何を隠そう今俺が座っている椅子がこいつです。
クッション座面・メッシュ背面・ハイバック・可動肘・ランバーサポートなし・ヘッドレストなし・2016年製造のモデルで、新品なら15万円近く、中古なら相場は3万円というところですが、俺はオフィスバスターズで2万円で購入しました。いい買い物でした。ぶっちゃけこれを自慢をするためにこのnoteを書き始めたまであります。

コーラルを一言で言うと「普通の椅子」です。コーラルにしか付いてないような個性的な機能とかはなく、デザインも良くも悪くも普通のオフィスチェアです。
逆に言えば、普通のオフィスチェアに求められる機能はすべて備わっています。クッションは柔らかくて座りやすく、メッシュ背面はしっかり背中にフィットして支えてくれ、リクライニングは段階的に固定可能です。前傾チルトこそありませんが、おそらく誰が座っても80点という感じの極めてベーシックでスタンダードな椅子です。

中古市場に出回っている数も多いので、安くて状態がいい個体も見つけられやすいです。今中古でオフィスチェアを探しているなら、とりあえずコーラルを最初に試してみるのがオススメです。

オカムラ シルフィー(中古相場:2万~4万円)

オカムラ公式サイトより

シルフィーはオフィスチェアの中ではかなり有名で人気なモデルです。
基本的にオフィスチェアというのはマイナーな日陰の存在なんですが、それでもシルフィーはTwitterとかでもたびたび名前が挙がったり購入報告を見かけたりします。
オフィスバスターズの集計でも個人向け売上ランキングでは1位だそうで、名実ともに今のオフィスチェアの代表的存在と言えます。

シルフィーの目玉は、前傾チルト機能が付いていることです。実は前傾機能がついているオフィスチェアはかなり限られているので、液タブを使って絵を描いてる人なんかはこれだけでも有力候補になると思います。
座面のクッション性もかなり良いです。俺はシルフィーを何度も試座していますが、モチっとした座面の柔らかさと座り心地はコーラル以上だと思っています。

一方で、背面はややクセがあります。背中を両脇から包み込むような感覚で、これが「フィット感があって良い!」と思う人と「ちょっと圧迫感がある…」と思う人に分かれます。俺は正直後者です。
成人男性として平均身長で痩せ型の俺ですらそう感じるので、大柄な人はもっと気になるかもしれません。
あと、座りながら背中を反らせると体がフレームの上部に食い込んで痛いです。普通に座ってる分にはギリギリ当たらない場所なんで大きな問題はなさそうですが、これも体格や姿勢によってはマイナスかもしれません。

総じて、どちらかと言えば小柄な人や女性向きの椅子という印象です(俺は小柄でもなく女性でもないので、あくまで印象です)。
背面が体にフィットする人、前傾チルトに魅力を感じる人ならアリだと思います。俺はシルフィーは少し窮屈で前傾チルトも不要だったので、一回り大きくてしっくり来たコーラルを選びました。

(参考)オカムラ バロン(中古相場:2万円~4万円)

オカムラ公式サイトより

バロンは2002年に発売されたロングセラーの定番モデルです。登場したのは20年以上前ですが、今でも新品で買えるめちゃくちゃ息が長いモデルです。
ロングセラーなので中古市場の数がすごく多いのがメリットです。反面、クッソ古い年式のボロい個体も混じっている可能性があるので、他のチェア以上に状態のチェックは慎重にしましょう。

バロンのメリットは、座面をクッションとメッシュから選べることです。メッシュ座面のオフィスチェアは中古だとあまり選択肢が無いので、メッシュ派の人にとっては有力な選択肢になります。

全体的な座り心地はコーラルに近いです。というか、コーラルが実質的にバロンの後継機的な立ち位置みたいです。
ただ、クッション座面の座り心地はコーラルの方がずっと上です。このあたりのクオリティはどうしても20年前の製品という感じがします。
一昔前は「中古オフィスチェアならとりあえずバロン」みたいな定番の選択肢でしたが、今買うなら値段も大差なく機能的にほぼ上位互換のコーラルで良いと俺は思っています。

イトーキ エフチェア(中古相場:1万~3万円)

イトーキ公式サイトより

イトーキはオカムラに並ぶ国産オフィス家具の有名メーカーです。オカムラほどではないですが、大きめの家具屋ならたまに置いてあるので見つけたら試座してあげてください。

このエフチェアは2012年に発売されたスタンダードなオフィスチェアです。
利点は背もたれの角度を調節できる機能(リクライニングとは別)で、これのおかげで特に背面のフィット感が良く、試座したときの感覚はかなり良かったです。

コーラルと比べると、座面が少しだけ薄く感じたのと、背面が小さめでフレームが少しだけ体に当たる気がしたのだけがネックでしたが、もしコーラルがなければこっちを買ってたかもしれません。
中古流通数も多く値段も低めなので、無難な選択肢の一つです。

イトーキ アクト(中古相場:4万円前後)

イトーキ公式サイトより

アクトは2018年に発売された、比較的新しめのモデルです。
ゆえに中古市場の流通数も少なめですが、新品でも7~8万円で購入できる(オフィスチェアとしては)比較的安価な機種です。

最大の特徴は、非常に可動幅が広いアームレストです。
普通のオフィスチェアのアームレストは幅が広すぎて、タイピング時に肘を乗せようとすると、腕をかなり外側に開く不自然な姿勢を強いられることが多いです。俺が使っているコーラルもそうで、「ヘッドレストショボい問題」と並んでオフィスチェアに共通する構造的欠陥だと思っています。

しかしアクトチェアはこの「アームレスト広すぎ問題」に一石を投じた革命的なモデルです。
アクトのアームレストは、最大まで内側に寄せるとお腹の前あたりまで肘掛けを寄せることができるので、タイピングが非常に楽になります。初めてアクトに試座したときはマジで感動しました。この世のオフィスチェアはすべてアクトと同じアームレストを採用するべきです。しかし残念ながら、現在ここまで肘掛けの自由度が高い機種は、アクトの他にはスチールケースのジェスチャーぐらいです。

実は俺はこの肘掛けに惚れ込んで、アクトを新品で購入したことがあります。散々オフィスチェアは中古で買えと言っておいてアレですが…まあ話を聞いてください。

新品と言っても厳密にはAmazonアウトレットの新古品的なもので、定価7万近くのものが5万円ぐらいにディスカウントされていました。
基本中古厨の俺ですが、この価格ならギリギリ払える圏内でした。

いい買い物をしたと満足してたのですが、いざチェアが届いてみると驚きました。ロッキング固定機能が壊れていたのです。座って10秒も確かめれば分かる完全な不良品を堂々と送り付けてくるとは…。
俺は基本的にAmazonが好きですし、Amazonアウトレットもこれまで結構利用してたんですが、この一件で一気に信用度が下がってしまいました。これだからネットってやつぁ…。

一応補足しておくと、アクト自体は良い椅子です。しかし自宅で(不良品に)座ってみると、座面の薄さが気になりました。アクトに限らず、イトーキのチェアは全体的に座面のクッションが薄いのが欠点です。

またウリである肘掛けですが、左右で少しだけ高さが違うと感じました。実際にメジャーで測ってみると、たしかに右の方が1cmほど高かったです。たかが1cmですが、肘を載せているとはっきり違いを感じる程度には差がありました。
これは個体差だと思いますが、試しに近所の家具屋に展示してあったアクトを測ってみると、こっちは左の肘掛けが右より少しだけ高かったです。となると、どうもアクトというモデル自体が個体差の大きい作りになっているようです。
工業製品なので多少の個体差は致し方ないですが、一応何万円もする製品なのでこの辺の作りはもうちょい頑張ってもらいたいところです。

こうした経緯もあり、アクトを再購入することはありませんでした。しかし肘掛けを重視する人なら有力な候補に入るチェアだと思います。

コクヨ ミトラ(中古相場:1万円前後)

コクヨ公式サイトより

文房具で有名なコクヨですが、実はオフィス家具メーカーとしてもトップシェアを誇っています。俺が正月にブッ壊れるまで使っていたトレンザもコクヨのチェアです。いいやつでした。

俺の印象では、コクヨのオフィスチェアはどれも地味ながら安定した品質というイメージです。特にクッションがどれも分厚いのが良いです。
ベゼルデュオラといったハイエンド寄りのモデルも良いですが、ここではミドルエンドモデルであるミトラを紹介します。

ミトラの良いところは、何と言っても安いことです。中古なら1万5000円程度、肘無しなら1万円以下で入手できることもあります。
それでいてオフィスチェアとしての機能はしっかり備わっており、背面のフィット感も悪くなく、リクライニング固定も無段階で可能です。ちなみに現在は後継機のミトラ2という機種も出ています。

普通に座れるオフィスチェアをできるだけ安く確保したい、と思っている人はミトラのようなミドル~ローエンドモデルを狙うのがオススメです。こういうのでいいんだよこういうので、と感じると思います。

補遺:アーロンチェア(をオススメしない理由)について

ハーマンミラー公式サイトより

最後にアーロンチェアについて少しだけ話します。
アーロンチェアというのはハーマンミラーというアメリカの有名メーカーが出している超有名なオフィスチェアで、椅子に詳しくなくても名前を聞いたりどこかで見たことがある人は多いと思います。

基本マイナーで地味な世界であるオフィスチェア業界において、アーロンチェアのブランド力とカリスマ性は圧倒的です。なので「アーロンチェアが一番いい椅子」「迷ったらアーロンチェアを選べば良い」「最強のオフィスチェア」といったイメージを漠然と持ってる人も多いと思います。オフィスチェアを紹介する記事や動画なんかでも、こういう売り文句が平気で飛び出てきたりします。

しかしブランドに目を眩まされてはいけません。アーロンチェアは万人にとって一番いい椅子ではないです。悪い椅子とまでは言いませんが、少なくとも人を選ぶ、クセが強い椅子だと思っています。

俺もアーロンチェアは新品中古問わず何度も試座してきましたが、ぶっちゃけ座り心地が良いと感じたことは一度もないです。よくアーロンチェアのレビューで「雲の上のような座り心地」とか「誰が座っても最高だとすぐにわかる」みたいな惹句が出てきますが、ウソつけと思います。少なくとも俺は良いと思いません。

これは別にアーロンチェアをディスってるつもりはなくて、メッシュ座面チェア自体の構造的な問題です。
上でも説明した通り、メッシュ座面はクッション座面に比べて耐圧が集中しやすく、要するにお尻が痛くなりやすいというデカい欠点があります。コクヨもそう言ってます。アーロンチェアをディスってるのは俺じゃなくてコクヨです(責任転嫁)。

背面もぜんぜん体にフィットしないし、ランバーサポートも硬く感じます。リクライニング固定機能もヘッドレストもありません。前傾チルトも使いません。デカくてムニムニしたアームレストだけは結構好きです。
総じて俺の体にはまったく合わず、最強のオフィスチェアだとは一ミリも思いませんでした。こういう人は結構いると思います。しかしアーロンチェアの悪口を言うと逆張りマンだと思われてしまうので口をつぐんでいるんでしょう。俺は逆張りマンだと思われても良いタイプの逆張りマンなのではっきり言います。
(ちなみに同じハーマンミラーで人気のセイルチェアも、背面のエラストマー素材が硬すぎて俺はダメでした。エンボディは悪くなかったです。)

もちろん、何度も言う通り椅子がフィットするかどうかは個人差が大きいです。アーロンチェアが最高に体に合うという人もいるでしょうし、そういう人にとっては25万円払って新品で買う価値はあると思います。全否定は全くしません。
しかし、少なくとも人に勧める際はメッシュ座面の時点で人を選ぶという点を考慮するべきです。メッシュ座面のマイナス点に言及せずアーロンチェアを勧めている記事や動画は全部エセだと俺は思っています。

おわりに

なんか最終的にアーロンチェアの悪口を言う記事みたいになってしまいましたが、ともあれ言いたいことは以上です。
1万8000字とかいうアホみたいに長い記事になってしまいましたが、暇つぶしにでも読んでもらえたなら幸いです。俺はシンプルに椅子が好きで、椅子を眺めてたり椅子について書くと興奮する変態なので、また気が向いたらなにか書こうかと思います。

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