腓腹筋とヒラメ筋の筋量評価

 従来、筋肉の量の測定に、周囲計(メジャーによる計測)を測定することは、汎用されてきた。しかしその客観性(比較検討を含め)には、疑問があり、一般化されてこなかった。一部でCT、DXA、MRI エコーを利用した筋肉量の報告がある。しかしこれを臨床経過や、比較検討には、誤差が多く供しないと報告されてきた。
 今回、膝周囲計に対する腓腹筋周囲計及びヒラメ筋周囲計(鍼灸でいうところの承山)を比較することで、他との比較が可能となった。更には同一人の筋肉量の一過性の減少と回復も計測、評価できることがわかった。

対象と方法
対象年齢は、50〜91歳 98名(平均71.2歳)
方法は、各人の年齢、体重、身長、性、介護度の他に、
1)膝関節伸展位での膝関節周囲計計測。
2)腓腹筋弛緩時の腓腹筋最大周囲計計測。
3)ヒラメ筋周囲計は、(鍼灸での)承山の周囲計測定。
但し浮腫、血管腫などで測定不能なときは対象外とした。
他に、年齢、性別、体重を記録した。
計測した結果に基づき、各対象者に対し
年齢、性別、体重、腓腹筋周囲計(以下G計と略します)、ヒラメ筋周囲計(以下S計と略します)、膝周囲計(K計と略します)、腓腹筋周囲計/膝周囲計(G/K)、ヒラメ筋周囲計/膝周囲計(S/K)を集計し、比較検討(平均、標準偏差、相関係数)まとめた。計測はメジャーを使用した。
 1例アルコール性ニューロパシーの例43歳でニューロパシー発症後、断酒後、6ヶ月までフォローした。

結果
G計の平均は33.61cm、標準偏差は3.01、S計の平均は30.04cm、標準偏差は2.80、K計の平均は34.77cm、標準偏差は2.28でした。
G計、S計は、体重と相関係数0.8と強い正の相関を示し、年齢とは−0.6と高い逆相関を示した。
 一方、G/Kの平均は0.965、標準偏差は0.052、S/Kの平均は0.89、標準偏差は0.050、以上標準偏差で見るとG/K、S/Kの方が、2.28〜3.01→0.05〜0.052小さくなっています。相関係数では、体重に対し相関係数が0.3で、また年齢と強い負の相関が見られた。年齢との比較では、S/KよりG/Kが、年齢と逆相関していた。年齢に比べ身長、体重との相関は、年齢より低くかった。
 S/KとG/Kの標準偏差値を、介護度で評価すると、有意差(t検定 0.015)を持ってG/Kより先にS/Kが低下していた。また同一例でG/K、S/Kの標準偏差値が−2SD以下に変化した10例の結果では、G/KよりS/Kが早く低下していた。
 要介護度での結果は、重度化とG/K、S/Kの標準偏差の低下は優位差t検定0.0006以下で負の相関が見られた。さらにG/K、S/K間でもt検定0.048の有意差をもってS/Kの低値が見られた。
アルコール性ニューロパシーの例では、S/K優位の低下が徐々に改善し、発症後6ヶ月で正常範囲に戻った。

考察
 腓腹筋周囲計、ヒラメ筋周囲計、膝関節周囲計は、身長、体重と同じような相関で、とりわけ体重とは0.7以上の高い相関が見られました。しかし他者との比較には、誤差が多く比較検討には、推奨されない。標準偏差値の評価でも、G計標準偏差値は3.01、S計標準偏差値2.80、G/K標準偏差値0.052、S/K標準偏差値0.050と50倍以上の差が見られ精度が高いと評価される。またG/KやS/Kは、年齢とは逆相関し身長、体重とは、低く相関していた。つまり年齢共に筋肉量が減少していること、G/KやS/Kは、身長や体重の影響をほぼ受けずに筋肉量を評価できると示唆された。
 年齢、介護度と共に、加齢、重度化によりG/Kより先にS/Kの低下が見られ、さらにアルコール性ニューロパシーの例でも、経過中G/Kは2SD以内だったが、S/Kが低下し半年をかけて2SD以内に戻った。このことは、粗大な運動機能の能力低下にヒラメ筋が第一義的に関与していることを示唆していること、従って粗大な運動機能維持にヒラメ筋の筋量の維持が関与していることと考察される。
 以上より腓腹筋周囲計計測、ヒラメ筋周囲計計測は、リハビリテーション評価に、極めて簡便であり、有効な手段であると示唆される。

G/K=0.965±0.052
S/K=0.890±0.050

以上の一部は、第33回日本リハビリテーション医学会中部・東海地方会ならびに専門医・認定臨床医生涯教育研修会(平成25年8月31日、エーザイ名古屋コミュニケーションオフィス6Fホールにて)にて発表した。

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