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【投資】住宅ローン〜誰でもできる、金利上昇の影響度の試算

さてここ最近、米国ではインフレ対応のための継続的な利上げ、そして日本でも日銀による長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)の修正観測も出てきており、特に長期金利については上昇してきています。

僕は債券投資はしていないので、運用面では金利上昇のダイレクトなインパクトはないですが、全額変動金利で借りている住宅ローン残高はたっぷり残っていますので、金利の上昇による返済への影響は気になるところです。変動金利は短期金利に連動していますので、YCC修正による長期金利の上昇の影響はないのですが(ここを混同している議論も多い)、それでも今後日銀による政策金利(短期金利)の利上げの可能性もゼロではありません。というわけで、ただただ心配しているくらいなら「金利上昇の影響を実際に目にみえる形にしたい」と思い、その影響を試算、対策を検討してみることにしました。


使用するツール

金利上昇の試算に使用するツールは、ネット上で誰でも簡単に住宅ローンにシミュレーションができる、住宅保証機構株式会社が提供する以下の返済額の試算を使います。

例えば、仮に現時点で住宅ローン残高が3,000万円、返済期間は残り20年、元金均等返済(一般的には元利金等返済が多いと思いますが、僕は元金均等にしているので、それでいきます)で、ボーナス返済はゼロ、いま適用されている変動金利は0.5%とすると、返済額合計は31,506,140円、毎月の返済額は137,500円となります。

住宅ローンシミュレーション by 住宅保証機構株式会社

試算してみたいシナリオ

上記のツールを使って、以下のシナリオにおける返済額の変化(増額がどれくらいか)、それと、ではその増額分を相殺するにはどれくらいの元本を期限前返済しないといけないのか確認してみたいと思います。

  1. 変動金利が0.5%から1.0%へと、+0.5%の上昇

  2. 変動金利が0.5%から1.5%へと、+1.0%の上昇

  3. 変動金利が0.5%から2.5%へと、+2.0%の上昇

  4. (極端な例として)変動金利が0.5%から5.5%へと、+5.0%の上昇

  5. 上記4つのシナリオにおいて、それぞれいくら期限前返済したら、金利上昇の影響を打ち消し合うのか?

5番の項目については、特に高度なテクニックを使うわけではなく、借入額の数字を適当に減らしてみて、返済総額が金利上昇前と同水準くらいになるのはどこかを探る、ということでやってみようと思います。

試算結果

各シナリオの金利上昇のインパクト、それから、そこからいくら期限前返済すれば元と同程度の支払い総額になるか、試算した結果が以下の表のとおりです。

金利上昇の影響の試算結果

シナリオ1(金利が0.5%上昇)では、返済総額が約150万円増、それを打ち消す期限前返済額は同程度の150万円。シナリオ2(金利が1.0%上昇)では、返済総額が約300万円増で、それを打ち消す期限前返済額も同程度の300万円。シナリオ3(金利が2.0%上昇)では、返済総額は約580万円増で、それを打ち消す期限前返済額は約500万円。そして最後、シナリオ4(金利が一気に5.0%上昇)では、返済総額は1,500万円も増加、そしてそれを打ち消すための期限前返済額も約1,000万円必要になります。

結果の考察と、今後の対応策

これらの結果を受けて、どうでしょうか?思ったよりも影響はないと感じたでしょうか?それとも、意外と大きいなと思ったでしょうか?人それぞれ感じ方も違うでしょうし、また皆さんには皆さん固有の条件がありますので、受け止め方も違って当然です。なお、上記は仮の条件なので、当方も実際の数字で確認した場合の受け止め方も違うところです。

とはいえ、これを受けて今は以下のとおりに考えています。

  • まず金利政策の見通しについては、日本ではYCCのさらなる修正はあるかもしれませんが、住宅ローンの変動金利に影響を与えるような短期の政策金利については、まだまだ相当時間がかかると思っています。そうこうしている内に、米国が今の急速な利上げの影響を受けて景気が冷え込み、今度は利下げサイクルに。日本も結局、利上げまでには至らない…ってイメージです。

  • なので、自身は今の段階で住宅ローンについて変動金利を固定に変更するとか、期限前返済をするとか、そういう対応はしない方針です。むしろ期限前返済する原資があるなら、それを株にでも投資します。

  • 仮に0.5%上がっても、月々の返済額が1万円ちょっと増えるだけ、また1.0%上がっても2万〜3万。自分の中ではまだOKですかね。ただ、シナリオ3(金利が2.0%上昇)のような状況になったら、おそらくは月々の返済負担を減らすべく、期限前返済を検討すると思います。そこまで金利が上がってくると、景気が冷やされ、資金を株で置いておいてもその後の期待リターンはあまり大きくは見込めず、むしろ返済に使った方が効率がいいように感じてくるかもしれません。急にシナリオ4になるケースはないですが、その時には既に(シナリオ3の時点で)借入残高を減らしているのかなと思ってます。

  • もちろん、自分の負担感という感情面を抜きにして、例えばシナリオ3で、「500万円の期限前返済をして(20年で)580万円の負担額を減らすのと、その500万円をその時に株に投資をして20年後どうなっているかを比較すると、どっちがいいか?」という議論をすれば、株なんだろうなと思うんですけどね。

最後に

というように、「計算上どっちがお得か」ということと、「実際の負担感を考慮するとどっちがいいか」というのは、各人で違ってきます。今後もYCC修正や、利上げの報道のたびに、住宅ローンの金利はどうなるのか?といったニュースやコメントが出てくると思いますが、大事なことは:

  • 住宅ローンの固定金利に影響を与える長期金利の話と、変動金利に影響を与える短期金利の話をごっちゃにしない

  • 金利上昇に関して、ただただ心配しているのではなく、シミュレーターなどを使って、自身でその影響を可視化し、対応を検討しておく

ということですね。

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