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品川 力 氏宛書簡 その四十五

啓久振りの御便りなつかしく、ありがたく拝見しました。
「タイムス」の拙稿御讀み下さった由で恐縮です。僕は
この數年來、二百册近くの、僕自身の好尚による本を
買ひ集めましたが、殆んど讀む暇もなく、それ位ですから、
文章を書きません。書きたいことはありますが、落ちついて書
く時間がないのです。先夜白十字の会の時、野瀨君に、品川君
は、ときいたら、力君を招待すると、商賣を休んで來なければ
ならぬから、氣の毒でワザと知らせなかったといってゐました。彼も
仲なか苦勞しただけあって、ひと通りの思ひやりはあります。
「海風」是非拝見したいものです。お金は近日一度お店を
訪ねたいと思ひますので、その時お払ひします。「書物展望」
十一月号の表紙に僕のエキスリブリスが、徳富蘇峰先生の印
と共に出てゐます。工さん、約百さんによろしくお伝へ下さい。


[消印]13.11.8 (昭和13年)
[宛先]本郷区本郷六丁目 ニ 三
    品川 力 君


 十一月八日
 亡父十七年忌前夜
 大森区馬込町東二丁目
 一ノ一五一
     菊池 与志夫                 


                       (日本近代文学館 蔵)

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