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品川 力 氏宛書簡 その十一

 ツトム兄―先日はかへって、お気の毒でした。小川氏は燥狂的藝術家
ですね。気の毒なものです。わたくしのあなたにデジケートした散文は、かいてゐるときほど、今では気にいりません。かへってあなたに笑はれさうです。大杉栄全集はどうにかして買ひたいと思ひます。貧乏なる讀書家
はもことに可愛想です。廿九日の日曜日お差支へなければ袖ヶ崎の方へ
あがりたいと思ひます。そして郊外散歩でもしませう。そのとき、「ぐびじ
ん草」や春夫を持ってゆきます。
どうぞどしどしいゝ作品をおかき下さい。そして、タイムスへだして
下さい。
 わたくしは今なにもかけません。


[消印]14.3.25 (大正14年)
[宛先]京橋区銀座尾張町
    大勝堂
    品川 力 様


                       (日本近代文学館 蔵)


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