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「王友」第十六號 編輯後記

       ◇
* 本號は一月末に原稿を締切つ

てゐ乍ら、發行迄に約四ヶ月の日

子を費して了つた。もとよりこれ

にはいろんな理由があるが、いづ

れにしても編輯者怠慢の責は免か

れない。寄稿家諸氏には特にお詫

びを申上げる次第である。

*  前號から年一回の發行に改め

たが、編輯者としては、何んとな

く氣抜がして、調子の取れぬ氣持

である。この點は本誌に關心を持

たれる詩友諸氏にとつても、恐ら

く御同感だらうと思ふ。職員移動

期に直面したので、寄稿家の所属

工場名を訂正しなければならぬも

のが多數にあるが、これはわざと

原稿の書かれた當時の儘にした。

その方が筆者にとつて、後日の思

ひ出にもなるだらうし、又いちい

ち直し切れない程移動が頻繁だか

らでもある。

*  前號發行直後、編輯陣の才幹

として、八面六臂の活躍をした、

毛内義胤君を滿洲敦化へ送つて、

編輯同人を茫然たらしめたが、こ

の大きな穴埋めには、駿足中西駿

一並びに内野功三の兩君を簡抜し

て、陣營の補强に務めたのである。

新同人の清新潑刺たる推進力によ

つて、動脈硬化症的同人の編輯手

法を打破し、一脈の生氣を漲らす

日の近きを期待して頂きたいので

ある。

*  毛内畫伯の退陣によつて、從

來の如きカットの統一化は不可能

となつたが、引續き同君の遥かな

る熱援と、中原、三上、堀内の新

作家並びに、元老三谷氏の御援助

を得て、夫ぞれ個性の顯出した作

品の交錯を試みたが、これも亦、

一種の味ひ深いものであることを

信ずる次第である。寄稿家諸氏、

工場雜誌委員諸氏の御後援と共

に、深く感謝するものである。

(菊池)

(「王友」第十六號 
  昭和十四年五月廿五日發行より)

#王友 #旧王子製紙 #編集後記




           紙の博物館 図書室 所蔵

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