品川 力 氏宛書簡 その三十二
力君―昨日お訪ねくださつたさうですが、折
悪しく留守で失礼致しました。小生眼疾とイン
フルエンザとが癒ると、横濱へ出張を命ぜられ、一日
寒風にさらされて、却って機嫌がよくなったやう
です。
お仕事はお忙しいことでせう。ときどき珈
琲を嗅ぎに行きたいと思ふのですが、僕、冬
眠動物で落葉樹で、いぢけて小さくなってゐ
るので、店の美しい女人たちの前にでるのが、
はずかしいのです。僕、婦人の前にでるのがはづかしい。
[消印]14.1.19 (大正14年)
[宛先]港区 神谷町 九
品川 力 君
1-19 菊池 与志夫
(日本近代文学館 蔵)
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