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ERIC CLAPTON来日公演 武道館ライブレポート(2023/4/18)

エリッククラプトンの武道館公演(2023/4/18)に行ってきました。4年ぶり3度目です。結論、素晴らしかった。個人的にはこれまでの3回の中でも最も良かったかもしれません。

セットリストを振り返りながら、初めてライブレポートなるものを書いてみたいと思います。

(一部うろ覚えで書いてるところがありますがあしからず。)

開場

私が到着したのは開演15分ほど前。ぞろぞろと観客の皆様が武道館に入っていきます。ぱっと見50-60代くらいの人が多そう。上品そうなマダムの姿もちらほら見えます。若い頃はロックに熱狂するロック少女だったのかしら。それともChange the Worldあたりからのファンかな。

クラプトンのファン層もすっかりシニアになっている事実に諸行無常を感じながら会場に入ります。

開演前

私の席は2階席、舞台下手側の後方。上層階の方ですが、舞台全体を斜め上から見下ろせる形になっており、意外と舞台との距離は遠くありません。

東京ドームの公演に慣れていると、武道館の程よい広さと舞台への近さを有り難く感じます。

隣の席はアラフィフくらいの夫婦?(というよりカップル的な雰囲気)の男女。ウイスキー瓶を直のみしながら談笑しています。この方々もかつてはロックに明け暮れる青年時代を過ごしていたのかな、などと思っていると、開演予定時刻の19時に。

開演

海外アーティストの公演は開演時間から少し遅れるのが常ですが(先日のガンズ・アンド・ローゼズの公演は20分は遅れた)、予想より早く、19時ちょい過ぎくらいで武道館の客電がオフ。喝采の中、バンドメンバーが上手後方階段から入場してきます。

クラプトンの衣装は暗めのシャツとジーンズ、スニーカーという相変わらずカジュアルな出で立ち。それ故最初は誰がクラプトンかわかりづらかったですが、その人物が舞台中央のビンテージホワイトのストラトを手にしたときに、クラプトン御大のオーラを一気に感じます。

1. Blue Rainbow

美しいクリーントーンのシャラシャラしたギターの音が聴こえてきました。この時点で鳥肌。

これまで私が参加した公演ではPretendingで一気にゴキゲンに始まるのが常でしたが、今回は打って変わって静かなスタートだなという印象です。

イントロの後、ボリュームを上げたクラプトンのリードギターが聴こえてきます。

めちゃめちゃいい音!

そしてめっちゃよく聞こえる!

過去の公演のPretendingのオープニングも素晴らしかったのですが、武道館の構造上ワウワウギターが少しこもり気味に聴こえてしまうのが個人的には難点でした。

ただ今回は音響技術の向上や位置の関係もあるのかもしれませんが、クラプトンのギターがニュアンスまで含めて非常にクリアに聞こえます。

そしてまさかの最初からマイナー調のインスト。これが渋くてかっこいい。

クラプトンの泣きのリードプレイも最初から全開で、冴えわたっています。

全然衰えてない!

「クラプトンも78歳だし、昔みたいなプレイは期待できないかもな」とうっすら心の片隅で思っていた自分をぶっ飛ばしてくれるような、素晴らしいオープニングでした。

ちなみにこの曲はほぼ指弾きで弾いていたようで、ところどころJEFF BECKを思い起こさせるようなニュアンスも感じました。

2. Pretending

一曲目が終わると、いつものピアノイントロを挟まず、間髪入れずにこの曲が始まります。

ペンタトニックのカッコよさが光るイントロが終わると、クラプトンのボーカルがIN。会場も一気に盛り上がります。

歌も相変わらず上手い!歌唱力もまったく衰えておらず驚きました。

2回目のギターソロではワウペダルを踏んだプレイを魅せてくれましたが、これもクリーム時代を彷彿とさせるような攻撃的なソロ。痺れました。

3. Key to the Highway

会場が一気に盛り上がったところで、次はゴキゲンなシャッフルビートのブルースバッキングが聴こえてきます。クラプトンのギターはこういうシンプルなフレーズだけでめちゃ聞き心地が良いのですよね。

そのままおなじみの「Key to the Highway」へ。Layla収録バージョンは気だるい重さを感じる曲ですが、近年のライブでのこの曲はかなりゴキゲンな印象で、シンプルに聴いてて楽しいですね。ピアノ・キーボードの2人もかなりいい味をだしていました。

4. Hoochie Coochie Man

一聴しただけでそれとわかるイントロからこの曲が始まります。

この曲は古典でもあるので一見古い印象があるのですが、実は生で大音量で聴くとめちゃくちゃカッコ良いのですよね。新しさすら感じます。

大迫力のユニゾンリフからの暫しのブレイクを繰り返す構成は、音楽が元来持つ、原始的な魅力を思い起こさせてくれます。

前曲とはまた異なる、クールで渋いブルースの魅力をまざまざと見せつけられるパフォーマンスでした。

5. I Shot the Sheriff

クラプトンがストラトのボリュームを絞り、小気味よいクリーンなカッティングを始めたらこの曲が始まる合図です。

個人的にはこのイントロのクラプトンのカッティングは大好きで、ここだけでもずっと聴いてられるくらい心地良い音です。

そこにネイザン・イーストのベースソロが入ってきます。大会場だとベースの音は良くも悪くも会場の空気感と一体化して聞き取りにくくなりますが、ここのソロは音抜けも良く、バッチリ存在感を示していました。

あまりにも有名なテーマフレーズが聞こえると、会場も一気に盛り上がり、歌が始まります。この歌は結構キーも高めなのですが、クラプトンは高音も力強くバッチリ歌いこなしていて、歌唱力の地力も感じさせるパフォーマンスでした。

そしてもちろん後半のギターソロも最高。ストラトのクリーンな音から歪んだ音まで、それぞれのニュアンスを使い分けながらのソロプレイは圧巻でした。ライブ全体のひとつのハイライトとも言えるでしょう。

6. Kindhearted Woman Blues

次はアコースティックギターに持ち替え、アコースティックセットへ。

ところでこのライブを通しての1つの特徴として、「余計な照明演出が一切無い」ことが挙げられます。

ピンスポットやカラー付きのライトが使用されることはなく、ずっと自然な光がステージ全体を照らしています。

この照明がまたとても良く、特にアコースティックセットにおいては非常に良い味を出しているのですね。まるで小さなバーやレストランでの演奏を聴いているような雰囲気にさせられるのです。

そんな心地良い雰囲気の中、クラプトンのアコースティックギター一本でのブルース弾き語りが始まります。

Kindhearted Woman Bluesは伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンが残した約90年前の曲。

これがクラプトンのギターと歌唱のみで、武道館に心地よく響き渡ります。

当たり前ですがクラプトンはブルースの弾き語りも達人級に上手いことを再確認させられます。

「90年前に、バーでロバート・ジョンソンの演奏を聴いた人たちも同じような気持ちだったのかな」とふと思いました。

7. Nobody Knows You When You’re Down and Out

大好きな曲です。

いや、今日生で聴くまではそこまで意識していなかったのですが、最初のC→Eコードのイントロを聴いた瞬間、「そういえばこれ大好きだったわ!!」と一気に思い起こされ、あやうく涙が出そうになりました。

他にも色々涙が出る瞬間はあっても良さそうですが、ここが涙出るポイントだったのは自分でも少し意外でした。

この曲はコード進行も歌詞もいいのですよね。

Cをキーにしながら、E7やA7といったコードが交じる進行は、陽気さの中にも切なさを感じさせ、落ちぶれた男を歌う歌詞の雰囲気にもピッタリです。

ピック×アコースティックのクラプトンの小気味よいソロが聴けるのもこのパフォーマンスの魅力ですね。

8. Call Me the Breeze

J. J. Caleのカバーナンバー。実はこの曲はあまりちゃんと聴いたことがなかったのですが、イントロを聴いて「好きなタイプの曲だ!」とすぐ感じました。

個人的にLay Down Sallyも大好きな曲なのですが、それと共通のグルーヴがありますよね。

たぶんJ. J. Caleのもつ独特の「レイドバック」感や「タルササウンド」と呼ばれる音楽スタイルがこのグルーヴに関係してるのでしょうが、そこは不勉強なのでうまく言語化できません。汗

このようなJ. J. Caleスタイルの曲がとても良いと気づけたのは個人的な新たな発見でした。

9. Sam Hall

曲の前にクラプトンの短いMCがありました。

あまり聞き取れなかったのですが、どうやらこの曲はトラディショナルで、かつ先日亡くなった友人であるJeff(Beck)に捧げるものだと言うことはなんとなく伝わりました。

曲自体は聴いたことがなかったのですが、クラプトンのボーカルがとても優しく、かつ切なく響くのが印象的でした。

この曲とJeff Beckの関係は私は現時点ではよくわからないのですが、長年友人であった2人の絆と、その友人を失った悲しみを歌の中に垣間見たような気がします。

10. Tears in Heaven

軽くAコードのフレーズを鳴らしたあと、有名なギターイントロが優しく始まると、歓声で一瞬ギターの音がかき消されるほどでした。

少しだけレゲエ調にアレンジされたこの演奏は、悲しみと前向きさを同時に感じさせる、非常に優しいもの。

今書いていて気づいたのですが、もしかしたらクラプトンはベックのことも考えながら歌っていたのかもしれません。

また、曲中でキーボードが「A Whiter Shade of Pale」のフレーズを弾いていたのも非常に美しく、印象的でした。(後で知ったのですが、この曲を書いたゲイリーブルッカーはクラプトンの友人で、昨年亡くなっています)

ちなみにTears in Heavenは僕がアコギで初めて練習したクラプトンの曲でもあります。本家の演奏を聴くと、スキルはもちろんのこと、繊細なニュアンスの表現力にひれ伏す思いになります。

11. Kerry

Tears in Heavenが終わると、自然な流れで美しいインスト曲が始まりました。

私は会場では曲名が分からず、Tears in Heavenをアレンジしたのかな?と一瞬思いましたが、この曲は「Kerry」という、長年ツアースタッフを勤めて近年亡くなった方に捧げた曲なのだそうです。

後で知った形になりましたが、このアコースティックセットの後半は、亡くなった大切な方への想いが詰まったパフォーマンスだったのでした。

ちなみにこの曲で見せたような、3フィンガーでのアコースティックプレイは個人的には大好物で、ずっと聴いてたくなるような心地良さでした。クラプトンの他の曲では「Circus」などで聴ける奏法ですね。

12. Badge

ふたたびストラトに持ち替えると、エレキセットの再開です。

(このとき、「今エレキに持ち替えるということは、今日のLaylaはアコースティックじゃなくてエレキだ!やった!」と内心ガッツポーズしたのは内緒です。)

照明が少し明るくなり雰囲気が変わると、クランチトーンで「Badge」のイントロが始まります。

ちなみに私がこの曲を初めて聞いたのは「One More Car, One More Rider」に収録されているライブ版なのですが、最初はなぜか90年代くらいの曲だと思いこんでいました。後でクリーム時代の曲と知って驚いたことを覚えています。そのくらい古さを感じさせない曲なのですよね。

この曲中には無音になるブレイクがあり、そこからギターアルペジオが聴こえてくるのがひとつの聞きどころ。

その演出がめちゃカッコいい!

ブレイクの瞬間にはクラプトンのギターが発する轟音のノイズが武道館中に響き渡り、数秒の間が生まれます。

あのアルペジオを弾くか、と思いきや中々弾かないクラプトン。こういう焦らしも上手いんですよね。

歓声を浴びながら数秒の間を作った後、満を持してアルペジオを弾き始めるのですが、このトーンも素晴らしい。

クラプトンがロックスターでもあることを再認識させられる演奏でした。

13. Wonderful Tonight

超有名なバラード。イントロのアルペジオからもうすでに美しい。有名なイントロのリフが聴こえてきた瞬間はふたたび涙が出そうになる瞬間でした。

クラプトンのボーカルも素晴らしく、彼がギタリストのみならず、ラブソングやバラードも歌いこなす優れたシンガーソングライターでもあることを思い出させます。

原曲にはない短めのギターソロもあり、クリーントーンで細かく歌い上げるような音使いが最高。

まさにWonderful Tonightとは今夜のことだなあと思わせる演奏でした。

14. Crossroads

美しいクリーントーンから一変、クラプトンのギターが一気に荒々しいディストーションサウンドに変わります。

少しファズっぽさを感じさせるそのトーンで、ウォームアップするように曲前の低音ソロを軽く弾くクラプトン。これがめちゃくちゃ良い音で鳥肌。

そこから有名なイントロフレーズが始まります。

Crossroadsは本当に大好きな曲で、クリームのライブ版のソロは何度もギターで練習しました。しかし何年弾いても本人のニュアンスにはまったく近づけないんですよね。

そんなことを思いながら聴いていたのですが、今日のクラプトンのギターソロもクリーム時代に負けず劣らず冴え渡っていました。

たぶん今日の曲目の中でもっとも歪んだ音だったのですが、クラプトンの代名詞でもある(と勝手に思っている)、歪んだ音での高音ロングトーンチョーキングをたっぷり堪能できました。

各ミュージシャンのソロ回しもそれぞれの個性が光り、極上のセッションタイムとしても楽しいパフォーマンスでした。

15. Little Queen of Spades

クラプトンのギターの真骨頂はスローブルースに現れると個人的に思っています。

今日のこの曲の演奏もクラプトン節が炸裂しまくり、極上のブルースを体感できるものでした。

スローブルースでのクラプトンのソロは、音符に囚われない細かいフレーズを多用するのが昔からの特長で、それが大好きなんですよね。

今日の演奏もそのような細かいフレーズを安定して散りばめており、まだまだ速いフレーズも弾けるんだなあと驚き嬉しく思いました。

このようなスローブルースではピアノやキーボードの音色も相性抜群で、たっぷりと大人の色気に溢れた空間を体感できました。

16. Layla

ブルースが終わり、歓声が鳴りやまない中、間髪入れずに超有名なイントロが響き渡ります。

Laylaだ!エレキ版のLaylaだ!!

過去行った2度の公演ではいずれもアコースティック版の演奏で、それも良いのですがやはりエレキ版を一度はライブで聴きたかった。

今日その夢がが叶いました。

この曲はカラオケで歌うとめっちゃキーが高いことに気づくのですが、そんな高音ボーカルも依然として歌いこなすクラプトン。ボーカリストとしての安定感も感じさせます。

そして夢にまで見たギターソロ。Dマイナースケールを駆けめぐりながらギターを歌わせる音色に酔いしれます。

チョーキングを多用した超有名な高音リフも心に直接刺してくるようでした。

そして後半の美しいインストパート。これも本当にライブで聴きたかったんですよね。ブラムホールのスライドギター風の演奏も心地良く聴こえる中、クラプトンの優しい音色も響き、夢見心地の時間を過ごせました。

演奏が終わると、大歓声の中一旦メンバーは舞台を後にします。

17. High Time We Went

アンコールでふたたびメンバーが再登場。ラストはジョー・コッカーのカバー曲で、キーボード担当のポール・キャラックがリードボーカルを取ります。

この曲ではクラプトンはバンドメンバーの一員としてバッキングに徹するのですが、最後の曲でそれをやるのも粋でカッコいいですよね。

なおポール・キャラックのボーカルもめっちゃ上手くてカッコいい。

曲の終わり間際、大画面に映るクラプトンの顔が楽しそうに微笑んでいたのも印象的でした。

終演

最高に盛り上がったまま曲が終わり、メンバーが舞台に並んで深くお辞儀します。

いやー本当に日本に来てくれてありがとう!という感じです。

手を振りながら舞台を後にするメンバー。ネイザン・イーストはスマホで観客席を撮影しています。後でインスタに上がるのかな。

興奮冷めやらぬ中客電が点灯し、終演です。


いやーめちゃ良かったです。

4年前に観に行ったときももちろん良かったのですが、正直「クラプトンも歳とったなあ〜」っていう感想も大きかったのですよね。

ただ今回は、何故か若返っているかのようにすら感じるパフォーマンスでした。

また来てくれることを願いながら、今夜の思い出を大切に明日から生きていこうと思います。

長文読んでいただきありがとうございました!

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