マニュアル作成初心者向け・おすすめ書籍案内(第9弾・「自分史の書き方」立花隆・著)

「マニュアルを作成するための参考図書」も、ついに9冊目。今回は、いまや「自分史」で検索するとトップに登場する立花隆氏の著書「自分史の書き方」を紹介する。この本はあくまで「自分で自分史を書きたい人」に向けて書かれた本であり、自分史ライター向けのものではない。しかし、私が作成する「自分史ライター用マニュアル」「自分史ライター養成講座テキスト」の参考になる部分はあるだろうと考えて取り上げた。実際、内容を見てみると、読み物としてはかなり面白い。特に参考例として掲載された受講生の自分史にはユニークなものが多く、けっこう真剣に読みふけってしまった。つくづく人生とは面白いものだと思う。

だが、本稿ではあくまで本書の「自分史ライターに役立ちそうな内容」だけをピックアップしていく。

はじめに 自分史を書くということ

・人間の記憶は連想記憶方式になっており、手がかりがあると記憶はすぐに蘇ってくる。最良の手がかりは、「そのときどきに起きた大きな社会的事件」(例:東京オリンピック、田中角栄逮捕のニュース、地下鉄サリン事件など)

第1章 自分史とはなにか

・家族との人間関係は、濃いようで意外に薄い側面がある。配偶者や子どもも本人とは生きた時代が違うので、意識のズレが大きい。特に人格形成期(幼年時代、子ども時代、青年前期)のことは人生の記憶として重要な内容であるにもかかわらず、子どもや配偶者はそれらについて、ほとんど何も知らないのが常である。だからこそ、自分という人間を家族(子孫含む)にきちんと知ってもらうためには自分史を書く必要がある。

・自分史は歴史の記述ではないのだから、あまり格式張ったり事実だけを記載する無味乾燥な書きぶりは避けた方が良い。一種の物語を語っていくように、肩の力を抜いた文章が良い。

・自分史では自分の出自(親のこと、もしくは家系のことなど)について触れるのが良い。「個人の記憶の範囲だけ」より「一族の歴史」にまで話を広げると、自分史の厚みはグッと増す。

・自分史では「最初の強い記憶」も書くと良い。

・自分史とは、いろいろな「エピソードの連鎖」として人生を語っていくこと。

第2章 自分の年表を作る

・自分史を書く際には「自分史年表」を作ると良い。人生の全体像が見えてくる。

・「自分史年表」では自分史を大きな時代別(時間軸、職業軸、住所軸など)に区分けしてみると良い。

・自分史を作る上では、各時代における人間関係(自分を取り巻く重要人物)をまとめた「人間関係のクラスターマップ」を作るのがオススメ。(ただし自分史作成サービスでは複雑になりすぎるので必要な場合=人間関係が複雑かつ、その内容を残しておきたいと顧客が希望した場合のみ作成する)

・「自分史年表」には同時代に起きていた世の中の出来事も記入する。ただし、重大かつ自分の記憶に強く残っているもののみ。

・自分史作成で重要な資料は「写真アルバム」、「思い出の品」。当時の生資料、生写真があれば、それを使うことで自分史のリアリティを高めることができる。

第3章 何を書くべきか

・自分史を書く上での参考資料として、「育児日記」「小学校の通知表」などもある。

・自分史には、自分のファミリーがいかに形成されていったかを描く「ファミリー・メイキング」の視点も必要。

・自分史は知情意のバランスが大切。知に傾き過ぎても、情が濃過ぎても、意が出過ぎていてもカドが立つ。(=読みにくい。読者の印象も悪くなる)

・自分史には「人間関係の歴史」という側面もあるので、自分を取り巻く人間模様にも触れるべき。そうすると読者を巻き込む(=喜ばせる)ことができる。

・自分史のラストには遺言的な要素(墓地、葬式、遺産分配など)を付け加えるのも良い。←自分史作成サービスには不要。別途、エンディングノート作成支援サービスを実施する。

・自分史のラストには自分の生きてきた人生について、また自分の生きてきた時代についての感想(=感慨)を載せると良い。←自分史作成サービスでは必ず聞くこと。子孫に伝えておきたいことも大切。歌心がある人なら、自作の俳句を掲載させてもらうのも良い。

本書を読み終えて所感

本書を読むことで、自分で自分史を書く場合とインタビューをして自分史を作るサービスとでは、同じ自分史でもかなり異なることを実感した(自分で自分史を作るときにかかる「労力の大きさ」も)。まず、自分で自分史を作るならばとことん時間をかけられるだろうが、サービスの場合はかけられる時間も労力も限られる。そして自分で作るならばどんなプライベートな内容も書けるだろうが、他人にインタビューされるサービスの場合はそこまでプライベートな秘密は話せないだろう。

その反面、自分史を自分でまとめ上げるだけの気力・体力・時間がすでにない高齢の方や、文章を書くのが苦手もしくは支離滅裂になってしまう人は、やはりサービスを利用するのが良いだろう(本書を読めばわかるが、自分史を完成させるのはかなりの重労働だ)。また、サービスを利用してインタビュアーと会話することにより、思いがけない記憶が蘇ることもある。私としては60代〜70代前半の人は自分で自分史を書くことが向いており、75歳以上の人(特に80歳以上は確実)はサービスを利用するのが良いのではないだろうか。

(終わり)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?