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1歳8ヶ月の娘とお茶会

最近、1歳8ヶ月の娘と、お茶会を始めた。

どうして始めたのかというと、「家にいながら少しでも外の世界を感じるため」である。



我が家は、2.5階建ての小さな一軒家(賃貸)で、庭はなく、一、二階の床面積も狭い。

とてもじゃないけど、娘が走り回ることはできないし、滑り台のような大きめの玩具を置けば、リビングとしての機能を果たせなくなるので置くこともできない。

だから、娘はその限られたスペースの中で、お絵描きをしたり、絵本を読んだり、人形ごっこをしたりしている。


けれど本当は、娘は外に行って走り回るのが大好きだ。

公園では、飽きることなくブランコに乗るし、幼児用の小さな滑り台も上手に登って滑る。

散歩も大好きで、「わんわん!」、「カーカー(カラスの鳴き真似)」、「ウーウー(パトカーのサイレン)」など、眼に映るもの、耳に届くものを、片っ端から真似している。

私には「外出しない理由」になる雨の日だって、娘にとっては特別な日。
小さな手のひらを上に向けて差し出して、「あーめ」と言い、それから、得意げに傘をさして歩こうとする。


手を繋ぎ一緒に歩いている間、娘は何度も私を見上げてくる。そして、目が合うと、にこっと笑う。
こんなとき、我が娘ながら、なんて可愛いのだろうと思う。


娘にとって、外の世界は刺激に満ち溢れ、輝いて見えるのだと思う。
それから、私にとってそうであるように、娘にとっても、母と過ごす楽しい時間だと思ってくれているのではないかと思う。



そんな、お出掛けが大好きな娘を、この3週間ほど、平日はほとんど外に連れだせていない。

生後1ヶ月の息子が家にいるからだが、「抱っこ紐やベビーカーを使う」、「早朝もしくは夫の帰宅後に二人で散歩する」など、方法を考えてみたのだけれど、種々の理由で、今だけはどれも断念。
娘を外に連れて行けるのは、夫がいる休日だけという状況なのだ。

そんな生活なので、娘はツライだろうし、正直言って、私自身も気が滅入ってくる。



そんな中で、どうにか少しでも外の空気を感じる方法はないかと考えたのが、娘とのお茶会だ。

おやつの時間になると、「お茶会しよっかー」と言い、ベランダに続く窓を開ける。
床に座って、足はベランダに投げ出して。そうして、外の景色や空を眺めている。

飲み物と、ささやかなお菓子や果物を用意して、並んで座りながら、「かんぱーい」とコップをあわせるその時間が、穏やかで、幸せで。

娘も楽しんでくれているのか、「お茶会」という言葉を聞くと、満面の笑みになる。


「今日はこのクッキーにする?」
「それともいちごがいい?」

そんな風に尋ねると、ウンウンと嬉しそうに何度も首を縦に振る。

二人だけのとびっきりの秘密かのようなその表情が、面白くて笑ってしまう。


こんな瞬間、私は未来に思いを馳せる。

娘の世界は、これからどんどん広がっていく。

交友関係も広がって、いろいろな経験をして、そうして娘について知らないことも増えていくと思う。

ずっと見守っていたいけど、娘は娘の世界を自分で切り開いて、楽しんでいく日がきっとくる。
親の存在を疎ましく思う日だってあるだろう。


それでも、いつの日か、またこうして娘と並んでお茶を飲みたい。
それはおしゃれなカフェかもしれないし、バーかもしれない。今とは違う、自宅のリビングかも。

どこであれ、何歳であっても、たまにでいいからこんな時間を共有できたら。


そしてその原点は、今、まだ一歳の娘と並んでしているこのお茶会なのだ。
狭いリビングとベランダに、特別に見晴らしがいいわけでもない景色。


それでも、私は、この時間を、とても尊く感じている。

同時に、娘にとってもささやかな幸せを感じられる時間になってくれることを祈っている。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。