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道徳心は世界名作劇場から学んだ

先日、車内で夫とアニメの話になった。
夫も私も、アニメを観る習慣がないけれど、夫はあの大人気の「鬼滅の刃」だけは毎週楽しみに観ているらしい。
「少年漫画だから(男の自分には)面白いのかな?」と言う夫に、「でも鬼滅の刃は、男女問わず人気じゃない?」と私。

「ワンピースも女の人にも人気だよね。でも、ドラゴンボールは男ばっかり観てない? 何が違うんだろ?」
急に疑問を持ち始めた夫につられて考えてみたけれど、考察するにもそもそも私はアニメというものをほとんど観ないからわからない。子供の頃を含めても、観ていたアニメの種類は少ないし、詳しくない。ドラゴンボールを見たことはないし、ワンピースも知らない。

だから、「アニメのことはよくわからないなぁ。だって私が好きで観てたのは……」と番組名を告げた途端、「あぁ、そうだったね。」と、夫は少し笑った。「そこに関しては、自分とは違う」というニュアンスで。

けれど、言いたい。夫がドラゴンボールやガンダムを好きなように、私もそのアニメが大好きだった。素晴らしいアニメだと断言できる。道徳心は、このアニメから学んだ。
将来、子供ができたら観せたいと子供の頃から思ってきたし、実際に観せるだろう。


このアニメとの出会いまで遡って書きたい。


子供の頃、両親との間で「テレビは1日30分まで」という決め事があった。
このルールは厳格に適用されて、「今日だけ特別に1時間観たい」なんていうのはもちろん、「明日は観ないから今日は1時間観てもいい?」のような、”視聴時間の前借り”も許されなかった。

そうなると、その貴重な30分でどんな番組を観るか、真剣に、慎重に選ばなければならない。

まず、自分が観たいものじゃなければもったいない。できれば明日、学校で友達と話して盛り上がれるものがいい。
1時間枠のバラエティー番組は、面白いところで消されちゃうから、どうしたって続きが気になる。
当時の私は子供ながらにいろいろ考え、結局、アニメを選ぶことが多かった。

日本昔ばなしに、セーラームーン、ドラえもん、クレヨンしんちゃん。

当時、ドラえもんとクレヨンしんちゃんが同じ曜日に放送されていたので、ドラえもんは録画して翌日に観ていた気がする。観る番組を観るか熟考し厳選していたからこそ、親が録画し忘れた時には恨みに恨み抜いて、大泣きしたりもした。


そんなアニメの中で、特に大好きだったものがある。
同年代の方は覚えているだろうか。「世界名作劇場」を。

ラスカル、七つの海のティコ、ナンとジョー先生……

なんといっても海外が舞台だから、あの異国情緒が漂う絵のタッチや、街名や人名が横文字なところがお気に入りだった。外国に行ったことがなかったから、他国の知らない街やそこでの暮らしに思いを馳せた。
それでいて、アニメの中では、ごく普通の「日常」が描かれていた。大きな事件はほとんど起きない。魔法も変身もない。そこにあるのは、身近な悩みやトラブル、冒険心。それが、優しく綺麗なタッチで描かれていた。

幼少期の私は、世界名作劇場のそんなどこかゆったりとした空気感が好きだった。
見ず知らずの街に想像力を掻き立ててくれる一方で、景色や見た目が異なれど人間関係や悩みなどは似通っているのが面白くもあった。


世界名作劇場で放送されたアニメはどれも素晴らしく、子供だった私を夢中にさせたが、その中でもとびっきり大好きで、時には泣きながら観ていたものがある。


それは、「ロミオの青い空」


このアニメは、番組名のとおりまさに「名作」だけれど、大人になってから友人に番組名を伝えても、残念ながら「? どんなアニメ?」という反応をされることが多い。オープニング映像を見てやっと、「あぁ、そういえば観てたような……。」と、なんとなく思い出したような様子が見られることもあるが、それでも「あったあった! 私も観てた!」といった興奮した様子は見られない。
夫も同様、記憶にないらしい。あんなに素敵なアニメなのに、勿体ない。

ネタバレしないように一言で説明すると、ミラノで煙突掃除夫として働く少年が、理不尽でつらい目に遭いながらも、仲間と協力して強く乗り越えていく話だ。
(このアニメは、わりと事件が起きるし、ほのぼのした空気というよりは感情が揺さぶられるものだった。)


子供だった私は、心を痛めて、でもその中にある明るさや希望、仲間との絆に救われた。外国人の知り合いなんて一人もいなかったから、登場人物の名前が、ロミオやアルフレド、ジョバンニなんていうのもいかしててお気に入りだった。

主題歌の冒頭で、煙突の中を下から上に向かって駆け上がるように映す映像と、イントロの切ないメロディーを聴くたび、これから始まる30分間を1秒たりとも見逃しはしないと気を引き締めた。


あのロミオが煙突の上に登って見たミラノの町並みを、いつか実際に見てみたいと願い、4年前に行ったイタリア旅行で、ドゥオーモに登って見下ろしたときは心が震えた。

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(これは、ミラノではなくフィレンツェ。ロミオの青い空ファンとしてはミラノも訪れたかったけど、日数の関係で断念。もしまた行ける日が来たら、その時こそ!)




小学校を卒業する頃には、アニメは観なくなった。
成長に伴い子供番組から離れたのと、一日に観てもいいテレビの時間が30分間から1時間に増えて、バラエティーやドラマを選ぶようになったから。

子供の頃、毎日のように観ていたアニメだったけど、大人になった今、そして大人になるまでの過程も含めて、めっきり観なくなってしまった。今も観るのはちびまる子ちゃんとサザエさんくらい(今も日常を描くものが好きなのかな? 子供の頃の嗜好を今の自分の中に発見すると、嬉しくなりますね。)。

それでも、子供の頃ああしてアニメを楽しく観ていたことはいい思い出で、「世界名作劇場」の素晴らしさもしっかり心に刻まれている。名作ばかりの素敵な番組だった。

どんな会社が作っているのかと気になって調べてみたら、日本アニメーションらしい。あんなに素敵なアニメをたくさん作ってくださり、ありがとうございますと心から伝えたい。


アニメを観る習慣がなくてアンテナを張っていないから、気づかないだけかもしれないが、私が子供の頃に比べて、アニメの放送が少なくなっているような気がする。
昔は、19時台や土日の夜なんかもアニメを放送していたけれど、今はあまり見かけないので、自分の子が小学生になる頃にはアニメではなくバラエティーを観るのかなぁ。

それはそれで、少し寂しい。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。