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vol.10 人間とは何か?ーー『役に立たない学問』に秘められた力

先日信号待ちをしていると、介護現場で働く院生に「医療人類学を受けてから、これ授業でやったなと思うことが増えました」と話しかけられた。医療人類学を受講したことで、現場で起こるさまざまな出来事に対するとらえ方が変わったのだという。

そういえばこのようなこともあった。ある飲み会の席で、現場で看護師十数名をまとめる院生が「よくわからない患者さんに対して、やさしい目で接することができるようになったんですよ」と話す(念のため言っておくが、彼女はもともと心優しい看護師である)。


私はこれまで医療人類学の授業をいろいろな場所で担当してきたが、このようなコメントをもらうことは実は初めてではない。人や世界の見方が変わるのはどうやら医療人類学の効能のようなのである。いったい医療人類学にどんな力があるというのだろうか。

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