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vol.2 「いのち」への責任【1】 ーー高齢者への身体抑制を行った、 看護師の体験から考える

看護師になって10年目の平林(仮名)は、「胃ろう」と聞くと思い出すエピソードがあるという。それは、胃ろう造設後、自宅に戻ることになっていた認知症の患者が、つくったばかりの胃ろうに挿入されていたカテーテルを抜いてしまったできごとだ。

胃ろうがきちんと固定されるまでは感染も起こりやすく、また穴もふさがりやすい。


この時点でのカテーテル抜去はあってはならないことであった。


だからこそ看護師たちは、医師を呼び、応急処置を試みた。しかし、駆けつけた医師も戻すことはできず、つくったばかりの胃ろうは閉じてしまい、在宅復帰には大幅な遅れが生じたという。

あってはならない事態が起こり、主治医は平林ら看護師たちを、「どうしてこうなったんだ?!」と叱責した。

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