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ダイエット幻想ーやせること、愛されること

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「なぜふつうに食べられないのか」に続いて出された「ダイエット幻想ー愛されること、やせること」のブレインストーミングとして書き溜められた記事です。ヘッダーの写真は、挿画を担当くださ… もっと読む
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#文化人類学

大丈夫、みんなそんなにキラキラしていない

イギリスのバースで開かれた、外見に関する学術会議"Appearance Matters 8"。 ここで注目されていたトピックの1つが、インスタに代表されるSNSのボディイメージに及ぼす悪影響でした。 この場合のボディイメージとは、自分自身が自分の身体をどうとらえているかということを指します。 これまでの研究ではっきりしているのは、スタイルのよさを強調するようなキラキラした写真をSNSで見ると、ボディイメージが悪化してしまう。 つまり、自分の身体に対する肯定観が下がると

「からの自由」と「ための自由」―ほんとうに自由に生きるために

外見に関する学術会議"Appearance Matters 8"の登壇者の1人である、Laura Hart(LaTrobe University, Australia)が自由についての面白い議論をしていました。 これは外見の話のみならず、私たちのいろいろな生活に使えそうなので、少し広げてみようと思います。 Lauraによると、自由には2つの種類があります。 それは、"Freedom from"と"Freedom to"。 直訳すると「〜からの自由」、「〜のための自由」に

子どもが極端なダイエットを始めたら、親はどうするべきなのか?ー研究の最先端の現場から

イギリス・バースにて、外見に関する学術会議 (Appearance Matters 8) が6/12より開かれています。 心理学者が主体の学会ですが、公衆衛生から、哲学の専門家、さらにはアーティストから、DOVEといった企業まで幅広い人たちが参加しています。 DOVEは、自分の身体を否定しがちな女性や、多様な人種の人たちが、自分の身体を好きになるための運動をずっと続けている企業です 学会の先陣を切ったスピーカーは、1996年よりアメリカのミネソタ州にて、EATというプロ

「やりたいこと」の多くは、「やりたい」と思わされている

 私たちは「自分のやりたいこと」をはっきりさせ、それに向かって突き進むことをよしとする社会に生きています。それが大変に素晴らしいことと思うのですが、「やりたいこと奨励社会の難しさ」は、そんなに簡単にやりたいことが見つからないということに尽きるでしょう。  それには色んな理由があると思いますが、私がここであげたいのは、「選択肢がたくさんあるから」でも、「みんな失敗を恐れるから」でもありません。  そうではなく、私がここで強調したいことは「やりたい」ことと、「やりたいと思わさ

「やせ=ステキ」の価値観 ちょっとかわしたら楽になるかも

4月30日に開かれた、モデル&ボディメイクトレーナー佐々木ルミさんと文化人類学者の磯野真穂さんのワークショップのレポートです。 180cmで同じ人間とは思えないところから足がはえているルミさん。ご自身も過食の経験があって、今回のワークショップを開催したそうです。 20代からモデルとして活躍。その頃は、「30になったら、結婚してモデルの仕事は終わり」という雰囲気だったそう。 20代後半で、自分の仕事への不安や、彼氏と別れたこともあって、だんだんと食べることでストレスを発散す

ひとは見た目のために進んで健康を犠牲にする

突然ですが纏足を知っていますか? 纏足とは10世紀ころに中国の漢族を中心にはじまった風習です。大人になってからも子どもの様な足でいるために、3・4歳から足を布で縛って成長を止めてしまいます。 具体的には、親指を除く、足の指を足の裏側に向けて折り曲げて布で縛ります。 とはいえ、止めるといっても足はどんどん成長します。ですから月日が経つにつれきつく縛らないといけません。足の甲のいくつかの関節を脱臼させてまで、小ささを保とうとします。 こんな風にしたら足に激痛は走りますし、

自分を変えるための2つの方法ーいまやせたいあなたへ

自分を変える方法はたぶん2つに分けられます。 ひとつ目は、自分自身の欠点を修正する。 ふたつ目は、世界の見方を変えてしまう。 私は文化人類学という学問を専門とする大学の教員です。 そんな私がなぜ自己啓発チックなことを言っているのかというと、文化人類学の講義をする度に、「生きるのがすごく楽になりました」、「自分を受け入れることができました」といった感想が寄せらるから。 私の意図しないところで、学生が勝手に変わっていくという現象を毎年毎年目撃するからです。 文化人類学は