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幻のお菓子「ハルヴァ」を食べる

ロシア語通訳者でエッセイストの米原万里さん。
もう8年以上前に本屋でたまたま出会った「ロシアは今日も荒れ模様」というエッセイ集が本当に面白くてたちまちファンになった。

平成28年に没後10年で刊行された「米原万里ベストエッセイ1」で一番最初に掲載されているのが「トルコ蜜飴の版図」という作品なのだけど、この中に「ハルヴァ」というお菓子が出てくる。

美味しいなんてもんじゃない。こんなうまいお菓子生まれて初めてだ。たしかにトルコ蜜飴の百倍美味しいが、作り方は同じみたいな気がする。初めてなのに、たまらなく懐かしい。噛み砕くほどに色々なナッツや蜜や神秘的な香辛料の味が湧き出てきて混じり合う。(中略)たった一口だけ。それだけでわたしはハルヴァに魅了された。ああ、ハルヴァが食べたい。心ゆくまでハルヴァを食べたい。(米原万理ベストエッセイ1「トルコ蜜飴の版図」より)

食べることが大好きな米原さんのエッセイには、色々な食べ物が出てくるのだけど、そのなかでも「ハルヴァ」への執着っぷりは群を抜いていた。
というのも、米原さんが最初に食べた美味しいハルヴァがなかなか手に入らないのだ。そんな幻のお菓子「ハルヴァ」は米原万理ファンであれば一度でいいから食べてみたい、夢の食べ物なのである。

さて、先日たまたまtwitterで銀座に「赤の広場」というロシア食料品専門店ができたことを知った。何の気なしにそのお店のサイトをのぞいてみたら、なんと「ハルヴァ」が売られているというではないか。
偶然にも銀座近くに出かける用事があったので、「赤の広場」に行ってきた。
ちなみにうっかり10時半ごろに着いてしまったらまだ閉まっていた。11時開店らしい。


はたしてハルヴァはあった。レジ近くの少し奥まったところに置いてあった。プレーンとアプリコットの2種類が売られていた。
早速プレーンを購入。
せっかくなので、マトリョーシカとウインナー、子供へのお土産にアイシングクッキーなども買った。

ウキウキと家に帰った。

これが「ハルヴァ」として売られていたものだ。
開封する。

…泥レンガに見える。
米原さんがエッセイ中でハズレのハルヴァとして描かれていたものに似ている。
不安がよぎる。

気を取り直してお皿に出して、スプーンですくって食べてみた。

…味の方は…甘くて口の中でほろほろ溶ける…。
けれども、原材料のひまわりの種が主張しすぎで少しその油分の臭みが気になる。
一言で言ってしまうとあんまり美味しくない…ような?

残念ながら米原さんが「(思い出すだけで)生唾がドクドク溢れてくる」と書いた「ハルヴァ」とは別物のようだった。
とはいえ、エッセイ中でもなかなか出会えないと書かれていたので、「やはりその通りだったんだ」とファンとしてはむしろ嬉しくなったのだった。

さて、そんでもってこのハルヴァ、カロリーがすごい。
半分ほど食べただけなのだが、長らくキープしていた体重が…増えた。
こんなカロリーの爆弾を日常的お菓子として食べてしまうロシアはおそロシア〜と思うのだった。


追記:ちなみにNHKの「グレーテルのかまど」でもとりあげられたことがあってここではレシピが紹介されてます。https://www.nhk.or.jp/kamado/recipe/108.html

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