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これは激しい奇祭 ケベス祭(大分 国東市岩倉八幡)

ケベス祭は大分の国東半島に伝わる奇祭です。

毎年10月14日に、大分県国東市櫛来の岩倉八幡(櫛来社 くしくしゃ)で行われます。祭りの起源も由来も何一つとしてわかっていないそうです。木でできた奇怪な面を着けた「ケベス」と、「トウバ」いう白装束の男たちとの火を廻る戦いです。私は2017年の10月14日に現地を訪れました。最初にケベス祭の概要をWikiでごらんください。

ケベス祭(ケベスさい)は、大分県国東市国見町櫛来(くしく)の岩倉八幡社(櫛来社)で毎年10月14日に行われる火祭り。2000年12月25日に国の選択無形民俗文化財に選択されている。

概要
起源も由来も不明の奇祭[1]。かつては旧暦9月14日に行われていたので、九月祭とも呼ばれた[2]。

岩倉八幡社の境内に設けられた燃え盛るシダの山を守る白装束の「トウバ」と、そこに突入しようとする奇怪な面を着けた「ケベス」が争う[1]。「ケベス」は何度も突入を試み、ついに9度目で成功して棒でシダの山をかき回し火の粉を散らすと、その後は「トウバ」も火のついたシダを持って境内を走り回り、参拝者を追い回す。この際に火の粉を浴びると無病息災になるといわれる。

「トウバ」は神社の氏子である10の集落が年ごとに輪番で務め、「当場」の字が当てられる[2]。「ケベス」の由来は不明であるが「蹴火子」が転じたとの説がある[3]。

「ケベス」はヘブライ語で「子羊」(כֶבֶשׂ)の意味があり、日ユ同祖論で言われるイスラエルの失われた10支族や秦氏が関係する可能性があるとの説がある。

Wikipedia ケベス祭

岩倉八幡は国東半島の北端あたりに位置しています。

神官が祝詞をあげるとケベスに神が降りる
ケベスが火を奪うタイミングを伺う。動きは案外コミカル


祭りの当日までにはケベスが禊(みそぎ)をする準備期間があるようです。当日は社殿で神官が祝詞を上げると、神がケベスに降りてきます。神がかってトランス状態になるというようなことはありません。

小枝のような芝が集められて燃え盛る火にケベスが突進しようとするところを、火を守るトウバがそれを阻止しようとします。この攻防が何回か(数えていないが9回らしいです)繰り返されるのですが、やがてケベスは火を手に入れます。その火を参拝者に向かって火の粉を撒き散らします。

面白いのはここからはケベスもトウバも一緒になって火の粉を撒き散らすのです。巻き散らかされる火の粉の量と勢いは全く容赦ないものです。岩倉八幡社は木製であるところが大部分ですので火事にならないかと心配になるほどです。一応小さな消防車が1台だけ、本殿の裏手に待機していました。

ケベスとトウバが杖で戦う。戦うと言っても押し合うような力比べという感じ

フリースのような化学繊維の服を着ているとあっという間に着火したり、穴が空いてしまうのでそこは事前に厳しく注意があります。髪の毛なども結構危険です。この火の粉を浴びることで無病息災になるのだそうです。確かにケベス祭以降は私は全く病気はしていませんね。行かれる方は燃えないにせよ服にも全身にも、しっかりと火の粉の匂いが付きますよ。

それでは私が参拝した時の、ケベスとトウバが火の粉を撒き散らしているところを動画でごらんください。

「ケベス」と「トウバ」はどういう設定や役割なのかを想像してみました。最初は火を奪おうとするケベスが悪者で、それを守るトウバが善玉のようにも思えます。しかしケベスが防御を突破すると、トウバも一緒になって参拝者に火の粉、つまりいいモノを配布するわけです。単なる勧善懲悪な構図ではなく、ひょっとすると最初からケベスは善玉、正義の味方であって、トウバのほうが悪役なのかもしれません。ケベスはトウバの呪いを解くことに成功したと見ることもできそうです。トウバも最終的にはちゃんと配布に加わることになるので、善悪の対立構造ではないのです。


不思議なのは、この祭りやこの地には、俗に言うところにパワースポット的な感じはまったくないのです。神聖なものと言うよりはむしろ親しみやすいと感じるくらいです。ケベスの奇怪な面とか、由来がわからないと言った謎めいた部分はあるにせよ、神聖な秘儀というよりは楽しい火まつりと言った方が近いかもしれません。

テレビでしか見たことはありませんが、きっと秋田の「なまはげ」みたいな雰囲気といえばそんなに外してはいないと思います。

ちなみに私が感じた「気」が特別に強い場所を強い順に列挙しておきます。これらは3つ目のファティマを除いて、いわゆるパワースポット巡りが目的ではなく、行ってみたら気が強かったという場所です。

・須佐大宮(島根県出雲市)本殿右の稲荷社と奥の御神木
・天岩戸神社(宮崎県高千穂町)天安河原に向かう途中の小川に掛かる橋
・ファティマ大聖堂(ポルトガル ファティマ)キリスト教3大聖地。元々ある気というよりは、真偽はともかく聖母マリア出現後の人々の「祈りの蓄積」を強烈に感じる
・法隆寺(奈良県斑鳩町)五重塔の先端から四方八方に伸びる強力な結界
・吉野ヶ里遺跡(佐賀県吉野ケ里町)南のムラの南端の物見櫓の上
・伊勢神宮(三重県伊勢市)内宮全域
・大神島(沖縄県宮古島市)宮古島の隣の大神島の物見台周辺
・久高島(沖縄県南城市)イシキ浜の御嶽
・羅漢寺(大分県中津市)五百羅漢周辺
・志明院(京都市北区)空海作と伝わる本尊の不動明王
・善光寺(長野県長野市)阿弥陀如来と結縁しました
・三佛寺(鳥取県三朝町)投入堂

このうちのいくつかはnoteで記事化しようと思います。

ケベス祭の参加者はざっと見た感じで200人ほどで、決して混雑するような祭りではありません。これは人口が多くない場所柄だったり、祭り自体がそれほどメジャーにはなっていないからなのでしょう。私はすぐ隣町に実家のある先輩ご夫婦と一緒に行ったのですが、ふたりとも60代にも関わらず実際に来たのはこれがはじめてだったそうです。車で10分もかかからない距離なのにちょっと不思議に思いました。理由を聞いたら特に理由はなくて機会がなかったんだそうです。歴史的に集落が異なるからなんでしょうかね。

火祭りというのは世界はもちろん、日本国内にもたくさんあると思います。私は東大寺二月堂のお水取りに行ったことがありますが、参拝者への火の粉の被り具合はケベス祭の方があり得ないくらい激しいです。こういう神事が危険であるとかいう理由で規制されることなく、でいつまでも残ってもらいたいと思います。

境内では地元の人が作っているケベスのキーホルダーを売っていたので迷わず購入し、6年経った今でも現役です。実際の面は木製とのことですが。これは土を焼いた手作りの素焼きです。見た目の感じは非常にリアルで、これに気がついた人に「これは何か」とよく聞かれます。

現地で購入したかなりリアルなケベスのキーホルダーは地元の作家さんが制作したもの

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