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現代アートを買おう!普通の会社員が紹介するアート投資の10のポイント

ジャン=ミシェル・バスキア「Untitled」美術手帖から引用。
ZOZO前社長の前澤友作氏は2016年に約5700万ドルで購入し、2022年に約8500万ドルで売却した。

はじめに

 皆さんはアートを購入するということに対してどう思うだろうか。購入するのはごく一部の金持ちだけの世界だとは思うだろうか。

 例えば毎日朝にスタバなどで500円のコーヒーを購入するとしよう。さらに一服するために1箱600円するタバコを毎日1箱。最後に一日の終わりに220円のビールを350ml飲んで疲れを取る。よくある日常だと思う。しかし、実はこれらだけで月に39600円かかることになる。これは一般サラリーマンの私が買ったコレクションと変わらない金額である

 私は上記のどの習慣もない。読書はするが借りられないものかどうしても欲しい本以外は図書館で借りるし、ほとんど周りのものは中古で買いそろえている。メルカリもフルに活用している。他にも無駄な出費と思われるものは行わないため、かなり節約している。もちろん上記のことはリフレッシュに必要だというのであれば、無駄な出費ではないため、それらを否定するわけでない。ここで言いたいのは、アートはだれでも購入できる値段だということだ

 現在、日本のアート購入のメイン層は美術館や有名コレクター、裕福層などであり、若者はほぼ買わないと言われる。実際に若いというだけでギャラリーによっては明らかに無視されたこともある(もちろん変わらず接していただけるだけでなく、応援してくださる素晴らしいギャラリーもある)。しかし、海外では若者でも普通に資産として認識し、購入している日本はマーケットがまだ小さく、環境が整っていない。今後伸びていく可能性もあるだろうが、それまでに現在のアーティストたちが生き残れるだろうか。
 画家は食っていけないという話は聞いたことがあるだろう。世間からそういわれ何人の才能ある若者がアーティストを目指すことをやめただろう。さらに美大は理系大学よりさらに高額であることや、1~2浪なんてざらであり、3浪からが勝負なんて言われる学校もある。また、無事に美大に入りアーティストになれたとしても、受験時の予備校費や美大に通った際の奨学金で将来が不安になる一方で、なかなか売れず、本当に食っていけなくなる可能性もある。今まで何人の才能ある芽が摘まれただろうか。自ら死を選んだ人も何人か知っている。本当に残念である。

 今後日本でもアート作品が投資対象として見られることができれば、コレクターの資産になることと同時に、気に入ったアーティストものびのびと作品を制作できるようになるはずである。
 とはいえ、どんな作品も買えば上がるというわけでない。そのため、ここでは、今まで私が読んできた書籍やギャラリーを回って感じたことから、アート投資のコツや方法を記述する。気になる方はお付き合いいただければ幸いである。一人でも誰かの資産が増え、アーティストが自由に制作できることを願って。

参考文献

 今まで読んだアート投資に少しでも関係ありそうな参考文献一覧を載せる。これらの本からかなり影響を受けている。しかし、面倒なのでタイトルだけ記述する。

・現代アートを買おう!
・教養としてのアート 投資としてのアート
・現代アート 投資の教科書
・世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
・ラッセンとは何だったのか?
・その絵、いくら?
・現代アートとは何か

アート投資理念

 私がアート投資を行う際、基本理念としていることは以下である。すべての核は「アーティストを応援する」ということだ。

イ 儲けを出そうと思わない 
ロ なるべく若手アーティストの作品を購入する
ハ なるべくプライマリーギャラリーで購入する
ニ 破産するか物で溢れ返るまで売らない

 最初に「儲けを出そうと思わない」ということである。アート投資を紹介しておいて申し訳ないが、正直投資としてはベストな方法だと思えない。なぜならインカムゲインがないからだ。つまり好きでやっている。何ならアートを購入するときの言い訳でさえある。損をしないようにするがモットーだ。
 ではなぜ冒頭に載せた前澤友作がなぜここまで儲かったかということだが、「前澤友作のネームバリュー」「超裕福層だったから」の2点だろう。前澤友作は元々ZOZOの社長だったことやお金配りおじさんということで、ネームバリューがある。その前澤氏が購入したことで逆にバスキアの知名度や価値が上がった。つまり、前澤氏くらいの大物だと購入したという事実だけで値上がりする。また、2つ目の超裕福層ということだが、草間彌生や奈良美智、ロッカクアヤコなどの軽く1億円を超える金額でやり取りする場合、投機的な振る舞いでも十分に儲かる可能性がある。しかしほとんどの人には縁のない話である。
 確実に儲けたいのならインカムゲインが出る高配当株投資や不動産投資がおすすめである。着実に少額から投資したいというのならNISAなどで優秀な投資信託にでも積み立てておけば問題ない。超余談だが、私は不動産投資が一番安定してお金を得られると思う。しかし私は勉強しようとしたときにテニプリと出会ってしまったので、まだ不動産に手を付けられていない。残念無念!

 次に「なるべく若手アーティストの作品を購入する」というところである。アーティストは中々専業が難しい職種である。そのため、才能があったとしても残念ながらやめてしまうこともある。私はアーティストを応援するという意味でもアートを購入している。それがアート好きの、しがないサラリーマンにできる数少ないことである。ただし、資産として安定させるためにベテランの作品を買うこともある。

 そして「なるべくプライマリーギャラリーで購入する」ということだ。セカンダリーやオークションでいい作品を購入したところで、作家に一銭も入らない。それではあまり意味がないと思われる。ただし、ツテがないがどうしても欲しい人気アーティストの作品があった場合は購入を検討したほうがいい。

 最後に「破産するか物で溢れ返るまで売らない」ということだ。正直現金以外の資産が欲しいところで行っているものでもあるため、売るという発想はない。タイミングを見て売るということもいいが、それをやるならやはり別の投資をした方がいいと思われる。

投資の判断材料

 専門家ではなく独自の考えに則っているものである。自己責任で投資してください

⓪審美眼を養う

 当たり前だが、多くの人や裕福層がいい作品だと思わなければ価値が上がることはない。また、「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」にも記述があったが、「美しいもの」というものはある方向性を持っているため、多く見るとそのベクトルが分かるようになると思われる。ただ、直観的なものであり理論的なものではないため、最後は自分の感覚を信じるしかない。眼を鍛えるために見てきたわけでは決してないが、フェルミ推定を行うと私は今まで500~800回ほど美術館に足を運んだようである。大規模な美術館での常設展と企画展を分けていないため、分けたらもっと多い。そのためなんとなくわかってきたような気がしなくもない。
 主題からそれるが、審美眼を養うメリットは他にもあると思われる。前述の本でも書いてある通りだが、ロジックだけでは会社のような大きいものを動かすことができない。さらにジョブズが禅を学んでいたように、直観的なデザインは普及しやすい。投資などしなくても審美眼を養うというだけでもやっていただきたい。

①知名度

 当たり前だが知名度が高くなると人目に触れるようになるため価値が上がる。美術館に置かれることはもちろん、グッズ化やSNSを頑張るなど方法はさまざまである。

②年齢

 若手アーティストはまだ作品が出回っていないため、知名度が低くなりがちである。今後活躍を広げるうちに高まってくるアーティストもいる。そのため、活動が後どれくらい続けられるかという点で大事であると考える。

③代表的作品かどうか

 奈良美智では少女や犬、草間彌生ならカボチャなど、代表的作品には価値が出やすい。奈良美智の作品でも初期の頃の暗い作品なども良い作品だと思うが、少女などに比べると価値が低くなる。因みに私は代表的作品を購入しない傾向がある。単純に他の作品のほうが好みだからである。本当は良くない…。

④誰でも理解できるか

 多くの人に興味を持たれるにはわかりやすいということが非常に大事である。荒川修作の作品は本当に素晴らしいと思うが、爆発的には売れなかった。かなり難解だからだろう(ただ、養老天命反転地などの体験施設は残っている)。それより奈良美智のような少女が描かれている方が分かりやすい。奈良氏やバスキアはその奥のメッセージ性も優れているが、表面でも楽しめるというメリットがある。因みに私はわかりにくい作品について考えることが大好きである。購入する際は気を付けないといけない。

⑤作家の精神は安定しているか

 全く人のことを言えないが、精神が安定していることは非常に大事である。アーティスト活動を辞める危険もないし、Twitterで暴言を吐くこともないからである。主張することはとても大事だし、アーティストとして持っておかないといけないものだが、軽率な行動は本当に価値を下げるため、購入前にSNSをチェックしたほうがいい。因みに巨匠レベルでも暴れている人はいるが、その人らはSNS普及前にもう巨匠だった。

⑥受賞歴・展示歴

 美術館に展示されたり、大きいコンテストで受賞歴があると価値が上がりやすくなる。恥ずかしながら私は賞についてはあまり理解していない。taro賞くらいならわかるが他を書かれてもどの程度すごいものなのかわからない。次に勉強しないといけないのはここでかもしれない。

⑦オークション・セカンダリー歴

 その作品の価値はリセールされて決まる。つまり、リセールされる前は価値が担保されにくい。若手ではほとんど出回らないが、ベテランの作品を購入時は見ておきたい。

⑧販売状況

 人気のアーティストの個展は初日ですでに売り切れてしまう場合がある。というかお得意様に先に紹介するギャラリーはもう予約だけで売れてしまう場合もある。売れれば知名度も上がるし、次に販売するときの値段も上がるため、どの程度売れているかなどは確認する方がいい。最近はネットで販売しているところもあるため、そこもチェックすることをお勧めする。

⑨購入価格

 今までの①〜⑧までを引っくり返すのが、購入価格である。高くて買えない。どっちにしてもおすすめしないが、今ではアートを購入するからと言って借金をすることもできない。生活に支障がない範囲で購入するべきだ。

私のコレクションについて

 前までここに自身のコレクションについて記述していたのだが、コレクションが増えてしまい、別のnoteに分けることにした。下記を参照して頂きたい。

おわりに

 生きていくために必要な最低年収は168万~192万円程度であるらしい。ギャラリーとアーティストの取り分が1:1である場合、専業アーティストがこの年収を手に入れるには、年に400万近く作品を売らないといけない。年に数回あるかないかの個展やグループ展でそれだけ売れる作家はどのくらいいるだろうか。その作品は製作するのにどのくらい時間がかかるだろうか。しかも作品の画材なども相当高い。遠征費も若手なら自身で出すしかないだろう。
 もちろん作品が数百万して、それが普通に売れるなら心配ないだろうが、そのようなアーティストがマジョリティであるはずもない。大体のアーティストは副業をして稼いでいる。
 副業自体いい影響はあると思うが、製作時間が減ることは間違いない。つまり素晴らしい感性を持ち、最高の作品を作る貴重な時間が失われているという捉え方もできる。

 アーティストが食っていけるようになるには顧客を増やすことが先決だ。つまり、アートを購入する環境を整備して、その人口を増やすことが必要であると考える。それには前回の落合氏の記事でも話したので理由は割愛するが、若者の人口が増える方がよいと考える。
 早期からアーティストを応援した購入者や素晴らしい才能を持つアーティストがこれからも活躍できるwin-winの環境が出来上がることを祈り、行動するばかりである。


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